大会2日目、この日は午前中にトルコ戦、夜にはリオ銅メダルのイギリス戦と2試合を戦う。トルコは完全ベストメンバーではないが2軍というわけでもない、いわば1.8軍くらいのメンバー構成だという。日本はやりたいことをしっかりやって勝利することが求められる。出場時間をできるだけシェアしたい。
試合の入りは幾分重かった日本、トルコにリードを許すが焦りや気負いは見られない。シュートが落ちても慌てず、なかなかノリきれなくてもゲームプランを遂行することに焦点を合わせ、第2Qには流れを手繰り寄せた。
[55]香西を中心にいいディフェンスからの速攻が出る。トランジションバスケットはまず、いいディフェンスありきだ。
ディフェンスはオフェンスの始まりであり、いい形でボールを奪えてこそいい攻めにつながる。後半は危なげのない展開でトルコを退けた。
1日3700人もの人々が東京体育館に観戦に訪れたとのこと。車いすバスケは見れば見るほど面白くなる。分からなかったことが分かるようになり、ゲームがより立体的に見えてくるからだ。
障害の程度の違いによるクラス分けも含め、選手一人一人の特徴を知ればさらに面白くなる。例えば、永田は障害の程度によるクラス分けは2.0で、必殺技は「poke」。相手の保持するボールに目にも留まらぬ素早さで手を出すスティールを得意とする。
2020年までの間、毎年このWCCはここ日本で開催されることが決まっている。これから3年間の代表の歩みを確認する絶好の機会にもなり、毎回観戦していれば、東京パラリンピックでの車いすバスケ観戦が何倍も楽しくなるに違いない。
午後7時半、赤のユニフォームに着替えて日本がイギリスと相対する。
昨日はコーチ陣の高い期待に応えられなかった[4]土子の働きが、この試合の一つの鍵となるだろう。その土子が日本の初得点となるフリースローを2本決めて幸先の良いスタートを切る。
「昨日は昨日。切り替えて、今日はシュートから入ろうと思っていた」土子は9得点に加え、ディフェンスの競り合いと随所に光るリバウンドでチームに貢献した。
第1Qはイギリスが高確率のミドルシュートで常に先行するものの、日本のディフェンスはしっかりしている。第2Qに入っても大きく点差が離れることがない締まった試合展開。
日本はいいディフェンスからの速い攻めで勢いづくが、要所でのシュートミスで流れをつかみ損ねてしまう。逆にイギリスのシュートの上手さに何度も唸らされる。イギリス【4】チョードリーの連続得点で最大9点差をつけられてしまう。
最終4Q。[55]香西、[4]土子を中心に怒涛の追い上げが始まる。流れをつかむにはやはりディフェンスからだ。
日本の激しいディフェンス。イギリスは攻めあぐね、24秒バイオレーション寸前でのタフショットが続く。日本10−0のランでついにリオ3位、U23世界選手権優勝のイギリスをつかまえた。
しかし【7】バイウォーターが連続得点で強豪の底力を見せる。日本は土子がオフェンスファウルを取られて交代。勢いが止まった。
最終スコアは日本65−72イギリス。強豪国と対等に戦えるところまできているが、体力も技術もメンタルも、上回るには今のところまだ十分ではない。日本の現在地を確認することができた。
大会3日目、順位決定戦の再びのトルコ戦を前日以上に危なげない試合で勝ち、日本の3位が決定した。
及川晋平HCの描く絵は、今はまだ下書きの段階だ。頭で描いた構想を、選手たちとともに描き出しているところだ。それでも今日の試合で及川HCがどんな絵を描きたいのかがよく伝わってきた。
オーストラリアやイギリスを始めとする強豪国に対し、日本相手の時だけ違うバスケットを強いるような、日本スタイルのバスケット。
[7]古澤を始めU23世界選手権で4位と大暴れしてきた若手の台頭も著しく、代表内の競争も激化している。
及川HCの絵はこれまでのところ思い通りに描き進められている。
『パラリンピックジャンプvol.1 』(集英社)より転載
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取材・文◎井上雄彦 撮影◎細野晋司 構成◎市川光治(光スタジオ) 協力◎名古桂士(X-1)