ブラインドサッカーの女子カテゴリーとしては初開催となる「ブラインドサッカー女子世界選手権2023」が8月12日からイギリス・バーミンガムで開催され、世界ランキング1位で初代王者を狙った日本は最終日の21日に行われた決勝戦で同3位のアルゼンチンに1-2で惜しくも敗れ、準優勝となった。
全8チームが参加した今大会。決勝戦で日本は、前半12分にエース、菊島宙が先制ゴール決めたが、後半に入り、体格で勝りスピードもあるアルゼンチンが猛攻をしかける。ファウルもかさんだ日本は2失点を喫し、涙をのんだ。
日本ブラインドサッカー協会(JBFA)を通じコメントを寄せた日本代表の山本夏幹監督は、「私たちはこれまで第一回世界選手権の優勝だけを目指して活動してきました。準優勝という結果については、まだ消化しきれていないのが正直なところです。これまでの過程を振り返り、私たち女子日本代表は再び世界一への挑戦を続け、次こそは優勝という形でブラサカ女子の未来に繋げたいと思います」と前を向いた。
同じく竹内真子キャプテンもコメントを発表。「この世界選手権という場で、チーム全体でしっかりと戦えた大会でした。ピッチ内外での声かけや、物事をポジティブにとらえられる場面が多かったと思います。プレーにおいて、声かけでパスがうまくつながったり、守備から攻撃の切り替えが速くできたりと、ワクワク出来るシーンも沢山あったので良かったです。何より、菊島選手だけでなく、島谷選手、若杉選手、竹内がチームの得点に絡めたのも良かったです」と大会での手応えを振り返った。
さらに、「決勝戦のアルゼンチン戦は、前半に菊島選手が先制してくれた得点を守りきれず非常に悔しい思いをしました。過去にアルゼンチンと対戦した時よりも、見違えるほどアルゼンチンが上手く強くなっていたので、次は女子日本代表がどのチームよりも強くなりたいという目標が明確にできました。しっかり反省と振り返りをして、私たちは前に進んでいきたいです」と、新たな目標と一層の進化を誓った。
日本女子はこの第1回世界選手権を目標に世界に先駆けて2017年から正式に編成された。コロナ禍で開催延期や中止となって待たされたものの、その分、じっくりと強化を進めてきた。世界の頂点にはあと1歩届かなかったが、その実力はしっかりと示した。日本はグループリーグで初戦のイングランドを5-0、第2戦のスウェーデン戦を1-0、第3戦のモロッコを4-0と退け、3試合で10得点無失点という圧倒的強さで決勝トーナメントに進出。準決勝ではアジアのライバル、インドに苦戦を強いられたが、0-0からのPK戦を1-0で勝ち切る粘りを見せた。
さらに大きな収穫は層の厚さと組織力を示したことだ。ストライカーとしてすでに世界に名をとどろかせる菊島が大会を通して6得点を挙げたが、彼女だけでなく、今大会グループリーグで竹内真子キャプテン、島谷花菜、若杉遥が世界選手権初得点を挙げた。島谷については国際大会も初めての14歳ながら計3得点と、今後の大きな可能性を感じさせる活躍ぶりだった。
目標未達に終わった悔しさを、さらなる成長への糧にする。
<「IBSA ブラインドサッカー女子世界選手権 2023」最終順位>
1位:アルゼンチン/2位:日本/3位:スウェーデン/4位:インド/5位:モロッコ/6位:オーストリア/7位:ドイツ/8位:イングランド
ブラインドサッカー男女世界選手権に加え、今年は史上初めてロービジョンフットサルの世界選手権も併催された。ロービジョンフットサルは弱視の選手がアイマスクは着けず自身の「見えにくさ」のなかでプレーするフットサルで、全7チームが出場し、13日から22日の期間で行われた。世界ランキング7位の日本代表は22日の3位決定戦で同6位のスペインに0-9と敗れ、4位で大会を終えたが、チーム史上大きな足跡を残せた大会となった。
世界選手権は4回目の出場となった日本。グループリーグ初戦は世界王者のウクライナに0-3で敗れるも、2戦目のトルコには赤崎蛍が前後半で1ゴールずつを上げ、2-1で勝利。チーム史上で世界選手権初勝利の快挙を記録した。さらに、グループ2位となり、国際大会では初となる決勝トーナメント進出も果たした。
準決勝では世界ランク2位で地元イングランドと堂々と渡り合った。前半8分、岡晃貴キャプテンが先制点を上げるも2連続失点でリードされたが、後半17分、赤崎が同点弾をたたき込み、2-2で前後半を終える。PK戦ではキーパーの好セーブもあり粘ったが、惜しくも4-5で敗れ、3位決定戦に回っていた。
攻守の切り替えのすばやさを強みに「切り替えゼロ秒」をチームテーマに、「まずは世界大会1勝、そしてメダル獲得」を目標にしていた日本代表だが、結果は道半ば。快挙のさらに先を見据え、今後もチーム一丸で高みを目指す。
金川武司監督は、「世界大会は4位という結果となりました。格上相手に内容も大事ですが、勝ちにこだわる戦術の中で選手はハードワークなディフェンスを常に続けてくれました。その結果、選手が世界相手に戦えるメンタリティを持つことが出来たと感じています。この結果を通して今後のロービジョンフットサルに対する意識や考え方、チャレンジを全員で少しずつでも進めていくことがロービジョンフットサル日本代表に必要だと感じています」とJBFAを通じてコメントを寄せた。
岡晃貴キャプテンも同様に、「チームが成長し、一丸となったことで、”勝ち”を掴みとることができました。その結果、世界ベスト4に入り、ロービジョンフットサル日本代表の歴史を変えることができ、過去最高の成績を残せたことをとても嬉しく思います。ですが、まだまだ現時点での立ち位置は、メダルまでの道のりは遠いのが事実です。今後とも、みなさまに助けていただきつつ、応援したくなるチームになれるよう努力し、また感謝の気持ちが当たり前にならないように突き進んでいきます」と、さらなる進化を誓った。
<IBSA ロービジョンフットサル世界選手権 2023最終順位>
1位:ウクライナ/2位:イングランド/3位:スペイン/4位:日本/5位:イタリア/6位:トルコ/7位:フランス
写真提供:鰐部春雄/ 日本ブラインドサッカー協会・文/星野恭子