パラアイスホッケーの世界選手権Bプールが10月6日、カザフスタンのアスタナで開幕。この大会に挑む日本代表は1日、KOSE新横浜スケートセンターで壮行会を開いた。横浜市を本拠地とするアジアリーグアイスホッケーに所属する横浜GRITSと8月に長野県岡谷市で合同合宿を行うなど交流があり、コラボイベントとして実施が実現した。
壮行会は、横浜GRITSとH.C.栃木日光アイスバックスとの試合終了後、双方の選手がリンクに、また観客やファンが観客席に残るなかで行われた。会場MCに紹介されると、パラアイスホッケー日本代表のメンバーがリンクに飛び出し、軽やかなスケーティングでリンクを一周し、中央に集結。チームを代表して中北浩仁監督が壮行会開催の感謝の意と世界選手権に向けた意気込みを語った。
続いて、パラアイスホッケー日本代表が2チームに分かれ、そこに横浜GRITSとH.C.栃木日光アイスバックスのゴールキーパー(GK)がそれぞれ加わり、5分間のミニゲームを実施。両チームとも得点こそ奪えなかったものの、スレッジならではのスケーティングとスピード、2本のスティックで自在にパックを操るハンドリング技術をアピールした。
ミニゲーム中はパラアイスホッケー日本代表のアシスタントコーチで、現役時代に横浜GRITSでプレーした宮埼遼氏がマイクを握り解説を務めるサプライズもあり、観客を楽しませた。ミニゲーム後は、日本人で初めてNHLでプレーしたH.C.栃木日光アイスバックスGKの福藤豊選手からパラアイスホッケー日本代表に応援コメントが送られ、会場は一体感に包まれた。
世界選手権Bプールは、世界ランキング11位の日本のほか、スロバキア、スウェーデン、フィンランド、イギリス、開催国のカザフスタンの6カ国が参加。総当たり戦を行い、上位2チームが来季のAプールに昇格できる。2大会ぶりとなるミラノ・コルティナダンペッツォ2026パラリンピック出場を目指す日本チームにとっては、今大会が第一関門となる。
キャプテンとしてチームをけん引する熊谷昌治(長野サンダーバーズ)は「全勝、それしか考えていない」と言い切り、また得点源としての活躍が期待される石川雄大(東京アイスバーンズ)も「自分たちのホッケーができれば勝てる仕上がりになっている。自信を持って戦いに行く」と、言葉に力を込める。
2019年の世界選手権を最後に辞任した中北監督が今季から再び日本代表の指揮を執っている。ここ数年、新型コロナウイルスの影響で海外勢との試合機会が減少するなか、9月には北海道合宿にパラリンピック4連覇中の王者・アメリカから現役の代表選手3人を含む7選手を招き、模擬試合で“世界のパラアイスホッケー”を体感するなどして強化を図ってきた。「前任の信田憲司氏をはじめ、たくさんの方々が頑張ってチームづくりをしてくれた。結果を出して必ずAプールに昇格する。成長が楽しみな若い選手もそろった」と中北監督。
今大会の日本代表メンバーには、安定感が増すベテラン勢や中堅に加え、鵜飼祥生(東海アイスアークス)、森崎天夢(北海道ベアーズ)、伊藤樹(ロスパーダ関西)の「高3トリオ」が選出された。伊藤は幼稚園からアイスホッケーを始め、小学3年で交通事故のため車いすとなり、パラアイスホッケーに転向。中学生のころから日本パラアイスホッケー協会の強化指定選手に選ばれているが年齢制限で出場できない大会もあっただけに、「待ちに待った世界選手権。少ないチャンスで決め切り、結果を残したい」と、活躍を誓っていた。
日本代表は2年前の世界選手権Bプールで4位。その後、繰り上がりで出場した北京2022パラリンピックの最終予選でも勝利は遠く、出場切符を獲得できなかった。今大会はその悔しさを晴らし、飛躍の足がかりとできるか。新生ジャパンのプレーに期待したい。
写真・ 文/荒木美晴