————今回は集英社の元旦広告にご出演いただきありがとございます。谷選手ご自身は2018年をどのような年にしたいとお考えですか?
アスリートとしては腰を据えてチャレンジできる年かなと思っています。2019年はパラリンピック出場に向け世界の大会でポイントを取っていく年になりますが、2018年はまだまだベースアップできる時期。トライアスロン選手としてのキャリアもまだ浅いので、目先の結果ばかりを追わずにしっかりと自分の基礎を作っていきたいですね。
————2020年を視野に入れながら色々とトライアルできる年、という位置づけでしょうか。
はい、そのように思います。自転車のポジショニングや義足の柔らかさを変えてみたり、試してみたいこともたくさんあります。やるべきことを明確にしつつ、1つ1つ落ち着いて課題をクリアしていきたいですね。アスリートとしてのクオリティを高めるためにも、これからの1年は「結果が伴わなくてもあせらずやる」というある種の割り切りも必要かなと思っています。
————まだまだご自身の伸び代に期待されている、ということですね。
それはあります。これまで走幅跳で何度もパラリンピックに出場させていただいて、その都度、自分の限界を超えるチャレンジがいかにすばらしいことかを教えてもらいましたし、今回もトライアスロン選手としてもっと上に行けるはずだという気持ちがあります。この年齢になってもそう思えるところがスポーツの醍醐味ですよね。日々成長していく子供を見ながら、そのスピードが羨ましいくらいですけれど(笑)。
————2020年の東京パラリンピックまで約2年半。この先はメディアからの注目度もさらに高まると思いますが、そんな中で谷選手が果たすべき役割とは。
東京オリンピック・パラリンピックの招致活動のときに、1つパラリンピアンとして自分がすべきことを形にできたのではないかと思いました。だからここからは、自分自身のための時間をいただけたと思って、今度はアスリートとしてしっかり結果を出すことに集中したいですね。競技者としてやるべきことを突き詰めつつ、家族との時間も大切に。それを落ち着いて楽しめている自分がいますし、やっとこの境地にこられたなと実感しています。
————今回、撮影に参加いただいた元旦広告は、「あなたの個性は、みんなの可能性だ。」というキャッチフレーズのもと、著名人から一般の方々まで、ジャンルを超えてさまざまな個性をお持ちの皆さんにずらりと並んでいただきました。最後に撮影にご参加いただいた感想をお聞かせください。
とても面白い取り組みだと思いましたし、いちパラリンピアンとして、このような機会に呼んでいたただけたこと、同時に他競技のアスリートたちがフィーチャーされることをうれしく思います。これまで義足であることを個性と思い、そんな自分らしさを最大限に引き出そうと努力をしてきましたけれど、こうやっていろいろな業種で活躍されている皆さんと笑顔で一緒に並ぶことで、また1つ、違った視点でパラスポーツの存在や魅力を知ってもらう機会になるのではないかと感じています。
PROFILE
1982年生まれ、宮城県気仙沼市出身。早稲田大学在学中に骨肉腫により右脚膝下を切断。卒業後サントリーへ入社し、走幅跳でアテネ、北京、ロンドンパラリンピックに出場。2013年のIOC総会でプレゼンテーションスピーチを行い、東京オリンピック・パラリンピック招致に貢献。2016年にトライアスロンに転向。