1月12~14日、車いすラグビー国内最高峰の大会「第25回車いすラグビー日本選手権大会」が、千葉ポートアリーナ(千葉市)で開催された。予選大会(東京、福岡、沖縄)とプレーオフを勝ち抜いた全8チームが3日間にわたり白熱した試合を繰り広げ、ブリッツ(東京)が圧巻のパフォーマンスで8年ぶり9度目の優勝に輝いた。
決勝は「ブリッツ 対 東北ストーマーズ(東北)」。2大会連続の決勝進出となった東北ストーマーズ(以下、ストーマーズ)が古豪・ブリッツを迎え撃つ。日本代表候補の中町俊耶と橋本勝也を擁するストーマーズは、前回大会の決勝で敗れたフリーダム(高知)と準決勝で対戦し、息の合った連係プレーで勝利を収めリベンジを果たした。
対するブリッツは、本大会の予選ラウンド2試合で相手を20点以上引き離し圧勝。“常勝軍団”の風格を漂わせる。予選ラウンド最大の山場となった両者の直接対決では、ブリッツの鉄壁のディフェンスがストーマーズの攻撃を封じ込め、57-47でブリッツが勝利した。
決勝戦では、東京パラリンピック・銅メダルメンバー(長谷川勇基―小川仁士―池崎大輔―島川慎一)がブリッツのスターティング・ラインナップとして起用され、予選時よりもさらにパワーアップした連係で、ストーマーズから次々とターンオーバーを奪った。
前半を終え27-20とブリッツが大きくリードするが、ストーマーズは決して冷静さを失うことなく、ブザーが鳴る瞬間までトライを狙い、チームスローガンの「執着」を体現するプレーでくらいつく。しかし、主導権を握り続けたブリッツが、一度もリードを許すことなく55-46で試合終了。重くのしかかったプレッシャーを見事に跳ねのけ、8年ぶりに王座へと返り咲いた。
19年前にチームを立ち上げ、誰よりも優勝への強いこだわりを抱いていた島川は「ミーティングを重ね、直前の練習でしっかり確認して、みんなでひとつのことに向かってやったことが勝因。この優勝にあぐらをかくことなく、しっかり進化していきたい」と、引き締まった表情で語った。
決勝に先立ち行われた「福岡ダンデライオン(福岡)対 フリーダム」の3位決定戦。日本代表キャプテンの池透暢がヘッドコーチを兼任するフリーダムが、持ち前のスペースを広く使うラグビーで試合を優位に運び、54-47で勝利を収め、3位で大会を終えた。
そして、チーム史上初となる表彰台は次回大会以降に持ち越されたものの、奮闘が光った福岡ダンデライオン。ハイポインターがいないラインナップが、ディフェンスと走力を武器に、ハードワークしてトライする場面は大いに会場を沸かせた。若手選手が多く所属し大会ごとに成長していく福岡ダンデライオンに、今後も注目だ。
さらに今大会では、ルーキーたちの眩いばかりの活躍も目立った。今季、公式戦デビューを飾ったのは5名。そのうち2名が女性選手で、昨年4名だった女性プレーヤーは6名となった。
ルーキーの中でひときわ大きな存在感を放ったのが、アックス(埼玉)の島崎瑛漣(しまざき・あれん)だ。中学2年生の島崎は、小学4年生のときに車いすラグビーを始め、昨年の夏、正式にチームに加入した。競技用の車いすは、東北ストーマーズの今野匡人から譲り受けたものだという。
試合では、チーム一の声量でベンチを盛り上げ、ブリッツ戦では池崎大輔とのマッチアップも経験した。「橋本勝也選手のようなプレーヤーを目指して、日々、筋トレに励んでいます」と島崎。今後の目標について問われると、「行けるかわからないけど…」と控えめに前置きをしながらも「2028年のロス・パラリンピックを目指してがんばります」と堂々と答えた。
今大会に出場した全選手のうち、10代のプレーヤーは6人にのぼった。順位決定トーナメント(5-8位)の「アックス 対 シルバーバックス(北海道)」戦では、シルバーバックスの若手ホープ・横内太陽(中学3年)と島崎の中学生対決も実現した。ライバル心をむき出しにしてボールを奪い合い、全力で車いすをこぐ姿は、未来のエース対決を予感させた。
チームカラーにあふれ、未来のスターが躍動する車いすラグビー日本選手権。次回大会は横浜に舞台を移し、今年12月に開催される。パリ・パラリンピック後に行われる次回の日本選手権が、もうすでに待ち遠しい。
【第25回 車いすラグビー日本選手権大会 最終結果】
優勝 ブリッツ(東京)
準優勝 東北ストーマーズ(東北)
3位 フリーダム(高知)
4位 福岡ダンデライオン(福岡)
5位 アックス(埼玉)
6位 ライズ千葉(千葉)
7位 沖縄ハリケーンズ(沖縄)
8位 シルバーバックス(北海道)
【大会MVP】 橋本勝也(東北ストーマーズ)
文/張 理恵