世界最高峰のパラアスリートたちが集う、「神戸2024世界パラ陸上競技選手権大会」が5月17日から25日まで神戸市の神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で開かれる。3カ月後に開幕が迫るパリパラリンピック(以下、パリ大会)の前哨戦として、さらには残されたパリ大会出場枠争いも行われる重要な大会で、世界104カ国・地域から1,073選手がエントリーしている。世界記録保持者やパラリンピックメダリストも多数参加予定で、全168種目にわたってハイレベルなパフォーマンスを目の当たりにできるチャンスだ。
今大会では原則として、パリ大会実施種目で上位 2 位に入ると、その選手が所属する国・地域の出場枠が与えられる(*)。さらに、パリ大会出場には6月24日までのパリ大会選考世界ランキングによる割当枠も残されているため、ライバルより好記録を出してランキングを引き上げることも、神戸大会での重要な目標でもある。
(*ただし、1選手が複数のメダル種目で上位2位に入っても1つの出場枠しか得られない。また、2023年のパリ世界選手権(以下、前回大会)で出場枠を獲得した選手も今大会で出場枠を獲得することはできない)
パラ陸上の世界選手権は1994年から始まり、今年で11回目となるが、パラリンピックと同一年の開催は初となる。また、日本での開催は史上初、東アジアでも初となる。地元開催となる日本代表にはパリパラ代表内定者から世界選手権デビューの新星まで、世界選手権としては過去最多の65名(男子39名、女子26名)が選出されている。昨夏に開かれた前回大会では代表37名で、金4個を含む11個のメダルを獲得、パリ大会出場枠も14枠(ユニバーサルリレー含む)をつかんだ。今大会では地元開催の追い風も力に、出場枠の上積みとともに、さらなる躍進を目指す。
ここでは日本代表の主な注目選手とエントリー種目を紹介する。まず、前回大会で4位以内に入りパリ大会出場枠を獲得した13選手は全員、神戸大会にもエントリーしており、それぞれパリ大会前哨戦の位置づけで挑む。
短距離陣ではT13(視覚障がい)の福永凌太が男子400mで連覇を狙うほか、T36(脳原性まひ)の松本武尊は100m、400mで初表彰台を目指す。T52(車いす)では佐藤友祈と伊藤竜也が100mと400mでさらなる高みをうかがう。佐藤にはパリ大会実施種目ではないが、1500mで4連覇の偉業の期待もかかる。中長距離では、T11(同)の唐澤剣也が前回金の5000mと同じく銀の1500mにエントリー。ベテラン和田伸也など世界のライバルたちと競り合いながら、パリ大会への試金石にする。
跳躍では各クラスの走り幅跳びに注目だ。女子T12(視覚障がい)の澤田優蘭、同T64(義足)の中西麻耶が前回銅からの躍進を目指す。前回4位だった男子T12の石山大輝、女子T20(知的障がい)の酒井園実、同T63(義足)の兎澤朋美はメダル獲得に挑む。投てきでは、女子F46(上肢障がい)の齋藤由希子が砲丸投げで、男子F38(脳原性まひ)の新保大和が円盤投げで、パリ大会への弾みとなるビッグスローを目指す。
パリ大会出場枠を狙った果敢なチャレンジにも期待したい。男子100mで10秒85の日本記録保持者、T47(上肢障がい)の石田駆は前回大会6位からの飛躍を狙う。T13(視覚障がい)のアジア記録(10秒80)をもつ川上秀太は前回大会を直前のケガで欠場し、世界選手権は今回が初出場となるが、パリ大会も見据えた快走に期待したい。T64(義足)の井谷俊介は昨秋のアジアパラ競技大会を制した200m、同じく銀メダルの100mでパラ初出場に挑む。
女子は、前回ユニバーサルリレーの金メダル獲得に貢献したT47(上肢障がい)、辻沙絵の走りに注目だ。神戸では専門の400mでなく、100mと200mで新境地を開く。T13の佐々木真菜は前回400mで、T34(車いす)の小野寺萌恵も100mで、ともに前回大会は惜しくも5位となった悔しさを糧に励んだ冬季練習の成果を発揮する。
1500mでは東京パラ代表のT54(車いす)の鈴木朋樹やT20(知的障がい)の赤井大樹、十川裕次、岩田悠希がパラ連続出場を目指し、世界の猛者たちとの競り合いに再び挑む。
走り幅跳びでも多くの選手がチャレンジする。なかでも、パラ5大会連続出場の偉業に挑む男子T63のベテラン、山本篤に注目だ。前回はケガの影響もあり8位に終わったが、持ち味である大舞台での勝負強さに期待したい。女子では同じT63の前川楓が冬季練習でスピードに磨きをかけた助走で、前回6位からパラ切符獲得に挑む。
また、世界選手権初出場となる選手は18名。女子砲丸投げF20の堀玲那や同円盤投げF53(車いす)の鬼谷慶子にも会心の一投に期待したい。昨秋のアジアパラ競技大会で堀は金メダル、鬼谷は銅メダルを獲得している。
唯一のチーム種目、「4x100mユニバーサルリレー」も見逃せない。1走から順に、視覚障がいの選手、切断・機能障がいの選手、立位脳原性まひの選手がバトンでなくタッチでつなぎ、アンカーは車いすの選手が務める、パラ陸上ならではリレーだ。日本は前回大会で金メダルに輝き、パリ大会出場も決めており、持ち味のタッチワークに磨きをかけ、今大会では連覇を目指す。注目のユニバーサルリレーは大会8日目の5月24日、午前に予選、午後の最終種目として決勝が行われる。
なお、会場観戦のほか、国際パラリンピック委員会の公式Youtubeチャンネルでライブ配信も予定されている。日本開催のため時差もなく、パラアスリートたちのハイレベルな挑戦をゆっくり観戦できる。前回大会では世界新記録が35個も誕生しており、神戸大会にも世界記録保持者が多数、エントリーしている。パラ陸上の歴史が神戸でまた上書きされる瞬間にいくつ立ち会えるだろうか。
<KOBE2024世界パラ陸上競技選手権大会>
公式サイト:https://kobe2022wpac.org/
観戦ガイド:https://kobe2022wpac.org/wp/wp-content/uploads/kobe2024wpac_spectator_guide.pdf
チケット販売 (チケットぴあ):https://w.pia.jp/t/kobe2024wpac/
Youtubeライブ配信:https://www.youtube.com/@paralympics/streams
写真/吉村もと・ 文/星野恭子