日本テニス協会(JTA)は6月4日、都内で会見を開き、「ユニクロ全日本ジュニアテニス選手権2024」において車いすテニス部門を新設すること、同大会アンバサダーに元プロ車いすテニスプレーヤーの国枝慎吾氏が就任することを発表した。
同選手権は1929年に創設された歴史ある大会で、すべての年代で日本一を決める国内最高峰のジュニア大会。車いす部門が併設されるのは国内のジュニア大会としては初めてで、障がいの有無の垣根を超えた、よりインクルーシブな大会になるというわけだ。
国枝氏は大会アンバサダーとして、「こうした垣根を越えた活動はおそらくテニスがどのスポーツよりも先を行っていると認識している。グランドスラムでの同時開催が車いすテニスの今日の発展につながっていると思うし、全日本ジュニアの中に(車いす部門が)組み込まれることで、車いすテニスにとっても歴史ある大会になることを願っている」と取り組みの意義を強調。さらに、「ジュニアの選手にとって、この大会が最大目標になるよう、僕自身もサポートしていきたい」と意気込みを語った。
昨年1月に現役を引退した国枝氏は、今年1月から米国フロリダ州のオーランドに拠点を移し、英語のスキルアップを図りながら、全米テニス協会(USTA)に所属してアメリカのジュニア車いす選手の指導にもあたっている。アメリカではUSTAが車いす選手も管轄しており、国枝氏は「日本とは異なる点であり、ワンチームとして活動するなど得られることは多い」と話す。日本では日本車いすテニス協会(JWTA)が車いす選手を管轄している。
しかし、JTAも「多様性と調和のある社会の実現」を理念とし、近年は車いすテニスの部を新設する主催大会を増やしている。例えば、ジャパンオープン男子大会では2019年から、同女子大会では2023年から車いすの部が導入された。今回のジュニア選手権への導入もその一環だ。
「テニスは他の競技に比べ、垣根のなさを体現しているスポーツだと思う」と国枝氏。「今後、それをより促進させる方向にしていきたい。他のパラスポーツでも、健常者の競技会と同時にやれるものはできるだけやるべきだと思うし、そういう方向に進んでいくといいという気持ちは持っている」
国枝氏は大会監修のほか、ジュニア選手の育成にも取り組む。同選手権は2022年からユニクロがタイトルスポンサーとなり、同年からシングルス優勝者とフェアプレー賞の選手2名には副賞として海外派遣プログラムを実施している。新設される車いす部門でも同様のプログラムがアメリカで実施される予定で、国枝氏自らが指導にあたるという。
会見の中で国枝氏は、海外派遣プログラムの副賞パネルに、「アメリカで待ってるぜ!」と書き入れ、ジュニア選手たちに熱いエールも送った。
「すごく楽しみ。僕自身も高校1年の時に初めて海外に遠征したが、その時に見た世界ナンバー1の選手にすごく刺激をもらった。海外に飛び出ていくことで見識も広がっていくと思う。この大会を機に世界につながる選手が出てくると嬉しい」
なお、同選手権の車いすの部には国際テニス連盟(ITF)の世界ランキングをもとに選抜された男女混合の8選手が出場し、シングルス戦で競う。2組に分かれてラウンドロビン(予選)を行い、上位各2名が決勝トーナメントに進み、順位を決定する。今年は8月26日から9月6日まで全12日間の日程で行われ、車いすの部は終盤の9月4日から3日間で実施予定となっている。
写真・ 文/星野恭子