メンズノンノ2月号に登場してくれたウィルチェアーラグビー日本代表の羽賀理之選手。ここでは、誌面でお伝えしきれなかったインタビューをあらためてご紹介。ウィルチェアーラグビーとの出会いからパラリンピックへの思い、趣味の話まで、ラグビー経験者でもあるメンズノンノモデル中田圭祐がさまざまな角度から聞いた。
中田 羽賀選手は、ウィルチェアーラグビーとどのように出会ったのですか?
羽賀 まさにこの場所(国立障害者リハビリテーションセンター)で出会いました。交通事故で1年間入院した後、リハビリで訪れた際にウィルチェアーラグビーの部活があると聞いて見学したのが始まりです。車いすで転んでも平然と起き上がってプレーを続ける選手たちを見て、大きな影響を受けました。
中田 以前は他のスポーツをされていたのでしょうか。
羽賀 はい。小学校2年生から怪我をするまでは野球をやっていました。プロ野球をめざすというレベルではなかったですが(笑)
中田 元々スポーツをされていたこともあって、やはり車いすの生活になったご自身を受け入れるまでにはいろんな葛藤があったかと思いますが、どのようにして前を向くことができたのでしょうか。
羽賀 入院当初はベッドを起こすだけでも貧血みたいになってしまい、テレビもまともに見られない状態でしたし、医師からもう歩くことはできないと言われた瞬間は「この先どうしようかな」という不安な思いがありました。まずはベッドを起こして耐えられる時間を延ばしていき、そこから車いすに乗せてもらう、車いすにただ座っていることに耐える、それができたら自分で車いすに乗る練習をする、というようにできることを少しずつ増やしていく作業に楽しみを見いだすことができたんです。
中田 ウィルチェアーラグビーによってそのスピードが上がったのですね。
羽賀 はい、ウィルチェアーラグビーとの出会いは大きかったです。通常のリハビリで教わること以外に、部活の先輩たちからは歩けなくても外でいろんなことができることを教えてもらいましたし、何よりコート上では存分に無茶ができるというのが自分としてはすごく良かったですね。
中田 実際、今日ウィルチェアーラグビーを体験させていただいて、激しさは普通のラグビーとなんら変わらないと思いました。たしかに、日常的にプレーしていると、ものすごくストレス発散になりますよね。
羽賀 そうですね。ただ、今は車いすの生活にほとんどストレスを感じなくなりました。これが普通ですし、週に5〜6日は練習していますからラグビーをやっているのも普通という感じです。
中田 ウィルチェアーラグビー用の車いすにも驚きました。こんなに頑丈に作られているんですね!
羽賀 チタンで作られています。頑丈さに加えて軽さも必要なのですが、ただ軽いだけだと吹っ飛んじゃうので、そのあたりのバランスと自分のプレースタイルを考慮しながら材質を選んでいます。
中田 本気でパラリンピックをめざすようになったきっかけは?
羽賀 2012年のロンドン大会ですね。強化指定選手として合宿に参加していたのですが、最終的に代表から落選したんです。それが本当に悔しくて、仕事を変えて練習量を大幅に増やしました。
中田 そして4年後のリオにみごと出場されました。実際に参加してみて、どのようにパラリンピックの魅力を感じましたか?
羽賀 本当に特別な場所でした。ブラジルというお国柄もあるとは思いますけれど、観客の盛り上がりがすごくて、これがパラリンピックかと。純粋に、その感覚を2020年に東京でもう一度味わいたいと思っています。
中田 東京ではもちろんメダルが期待されると思いますが、日本代表の現在地もふまえて抱負をお願いします!
羽賀 今、日本は世界ランキング4位。1位がオーストラリアで、2位はアメリカです。3位カナダ、5位イギリスまでを含めた5チームは常に実力が拮抗しているので十分に戦えると思っていますし、自国開催なので必ず金メダルを取るという気持ちで臨みたいですね。
中田 2019年にはラグビーW杯と一緒に東京でウィルチェアーラグビー・ワールドチャレンジ2019もありますし、2020年に向けて注目度がぐんぐん上がりそうですね。羽賀選手のプレーヤーとしての「魅せ」どころは?
羽賀 僕はとにかく立ち止まらずに走り回る選手なので、そのハードワークを見てもらえたらうれしいですね。
中田 ぜひ会場で見させてください! ちなみに東京パラリンピック以降に向けての目標もお持ちなのでしょうか?
羽賀 まだ具体的に考えてはいませんが、僕自身は東京パラリンピックが終わってもまだまだ続けていきたいと思っています。2020年から先も、僕と同じような境遇の方々にチャレンジしてもらえるようにウィルチェアーラグビーを盛り上げていきたいですね。
中田 最後になってしまいましたけれど、羽賀選手の趣味はなんですか?
羽賀 ラグビーですかね(笑)。それ以外ですとクルマの運転が好きです。練習場が遠くても全然苦になりません。今は車いすを運ぶために大きなクルマに乗っていますが、元々好きなスポーツカーにいつかまた乗ってみたいです。
中田 カッコイイです。ぜひ実現させてください! 今日はありがとうございました。
【プロフィール】
羽賀理之さん
はが・まさゆき●1984年11月12日、千葉県出身。高校卒業後、専門学校在学中に交通事故により頚椎を損傷し、車いす生活に。06年に国立障害者リハビリテーションセンターの部活動でウィルチェアーラグビーと出会う。現在はクラブチームAXEに所属しながら日本代表としても活躍。16年のリオパラリンピックに出場し、銅メダルに貢献。
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Photos:Takemi Yabuki[W] Composition & Text:Kai Tokuhara