8月28日に開幕するパリ2024パラリンピック競技大会のパラバドミントン日本代表内定記者会見が8日、東京都のナショナルトレーニングセンターイーストで開かれ、12人の選手と監督らスタッフが意気込みを語った(うち、4選手はオンラインで参加)。
パリ大会の出場条件は、2023年1月から2024年3月までに行われる対象大会において最低3大会に出場してポイントを獲得し、最大6大会のポイント合計数が上位に入ること。そのうえで、まずはダブルスのポイント上位6ペア、次にダブルス出場者を除くシングルスの出場枠内のポイント上位者、最後にバイパルタイト枠で選考が行われた。その結果、日本から12人の選手が出場権をつかみとった。
パラリンピックで初採用となった東京2020パラリンピックでは、9個のメダルを獲得した日本代表。それから3年が経ち、世界の競技レベルが目覚ましく向上するなか、パリ大会では金3、銀2、銅3の計8個のメダル獲得を目標に掲げる。草井監督は「世界の競争力が高まっていることを肌で感じているが、日本チーム一丸となって頑張りたい」と、力強くコメントした。
東京大会の男子シングルス(車いすWH2)で金メダルを獲得した梶原大暉(ダイハツ工業)は、東京大会以降の公式戦の連勝記録を「121」に積み上げ、パリでは“世界王者”としてライバルを迎え撃つ。梶原本人は、連勝記録については以前から気にしていないと語っていた。記者会見でも「記録の重圧は感じていない。目の前の一戦に集中して、最高のパフォーマンスをすることだけを考えてきた」と言い切る。
このクラスには、金正俊(韓国)や陳浩源(香港)といった強力なライバルたちが存在する。気を抜けばすぐに敗れてしまう、そんな世界だからこそ、梶原は“世界一”の称号に甘んじることなく、地道に努力を重ねきた。会見では、「3年前とは見違えるほど強くなっていると自分では思っている。フィジカル面やチェアワーク、ショットの引き出しも東京より増えた。この日(パリ)のために練習してきたという自負はある」と力を込めた。
また、車いすWH1の村山浩(SMBCグリーンサービス)と組む男子ダブルスでも優勝を狙いに行く。村山は「役割分担と動きの強化を進めている。本番までにさらに研ぎ澄まし、金メダルを獲りに行きたい」と語った。
東京2020大会の女子シングルス(車いすWH1)で初代女王に輝いた里見紗李奈(NTT都市開発)は、覚悟を持って連覇に意欲を燃やす。
2月の世界選手権の女子シングルス準決勝では尹夢璐(中国)に、4月のスペイン国際Ⅰでは決勝でスジラット・ポッカム(タイ)に敗れた。「すごく研究されていたし、相手の私に勝ちたいという意地をすごく感じた」と、振り返る里見。だが、梶原同様に、ライバルの存在が里見の負けず嫌いの気持ちに火をつけた。「私の連勝は59で止まったけれど、その記録が途絶えたことが自分を見直すきっかけになった」。その言葉のとおり、その後は持ち味のショットの正確性をさらに磨き、パリ大会前最後の国際大会ではポッカムにリベンジを果たした。会見では、「勝ちたいという気持ちしかない。粘り強くラリーをして、相手を追い込みたい」と意気込みを語った。
また、車いすWH2の山崎悠麻(NTT都市開発)と組むダブルスでも連覇が期待される。「ユマ・サリ」ペアならではの攻撃的なローテーションを武器に、立ちはだかる中国ペアを下して頂点を獲れるか、こちらも注目だ。
ほかに、男子は車いすWH1の長島理(LIXIL)が2大会連続出場。東京大会を含め、ここ数年はシングルスのみのエントリーだったが、パリでは初出場の車いすWH2の松本卓巳(創政建設)とペアを組み、ダブルスにも出場する。長島は「正直、未知数のペアだと思うが、相手もプレースタイルを知らないので本番までに高めていきたい」と力を込め、松本も「自分がスペースを狙っていきたい」と話し、前を向いた。
下肢障害SL3の藤原大輔(ダイハツ工業)も2度目のパラリンピックで、男子シングルスに出場する。会見では「相手の強い攻撃をどれだけしのげるかがカギになる」と話した藤原。体格とパワーに勝る海外勢に、拾いまくるディフェンス力で対抗し、初の表彰台を狙う。
混合ダブルスは立位SL3-SU5の伊藤則子(中日新聞社)・今井大湧(ダイハツ工業)組のみがエントリー。女子の伊藤が前衛の1点を守り、男子の今井が残りのスペースを守る唯一無二の戦い方でパラレースを勝ち抜いた。伊藤は「男子選手のスマッシュを前で止めるところを観てほしい」と自信をのぞかせた。今井は男子SU5シングルス、伊藤は女子SL3シングルスにも出場する。
ほかに、女子シングルスには下肢障害SL4の藤野遼(GA technologies)が出場。上肢障害SU5は2人が選出され、東京大会4位の亀山楓(高速)、初出場の豊田まみ子(ヨネックス)が表彰台を目指す。
パリ大会のバドミントン競技の会場は、オリンピックと同じポルト・ド・ラ・シャペル・アリーナ。開会式翌日の8月29日に競技初日を迎え、5日間にわたり熱戦が繰り広げられる。
日本パラバドミントン連盟の平野一美理事長によれば、開幕が迫る本番に向けて日本代表選手は国内外での合宿を行ったのち、フランス西部の都市・ナントで事前キャンプを実施する計画だという。パラリンピックの選手村にはそのまま移動して27日に入村となる見込みで、チームジャパンの気合は十分。会見では「ぜひ応援してください」と呼びかけていた
写真・ 文/荒木美晴