オリンピックの熱気の冷めやらぬパリ。東京2020大会から早3年、アスリートやチームの競技活動を支える企業の在り方は時代とともに変化している。なかでもパラスポーツへのサポートは過渡期、あるいは発展途上にあるだけに多様性に富み、資金面にとどまらず、競技団体や自治体との連携で地域・社会の課題解決に繋がる包括的なサポートへと幅を広げている。
▶ALL BASKETBALL ACTION。日本生命がバスケットボールをサポートする理由【前編】を読む
日本生命保険相互会社(以下、日本生命)の提案で2022年に始まったバスケットボール界との共同事業「ALL BASKETBALL ACTION」は、子どもたちに夢や目標を持つことの大切さをバスケットボール選手が伝える「DREAM HOOP PROJECT」をはじめ3つの柱で構成される。それらの取り組みによって実現したい社会の未来像を聞いた。
日本生命が日本バスケットボール協会(JBA)、日本車いすバスケットボール連盟(JWBF)、B.LEAGUE(Bリーグ=ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ)と共同で取り組む「ALL BASKETBALL ACTION」(オール・バスケットボール・アクション)。
その2つ目の柱である「CONNECT LOCAL PROJECT」(コネクト・ローカル・プロジェクト)では、全国のB.LEAGUEクラブや地方自治体と連携し、ホームゲームに子どもたちを無料招待したり、バスケットボール教室を開いたり、車いすバスケットボール体験会を行ったりしている。
「なかでも車いすバスケットボール体験会は日本生命が力を入れている取り組みのひとつ」と同社執行役員でチーフサステナビリティオフィサー兼主計部長の鹿島紳一郎さん。
その理由を、「バスケットボールが好きなお子さんや、会場でプロ選手のハイレベルな試合を見てバスケットボールに関心を持ったお子さんたちに競技用車いすに乗ってもらい、車いすを操作しながらボールを扱う面白さや難しさを体験してもらいます。そうすると車いすバスケットボール=障がい者スポーツという印象から、車いすという道具を使うバスケットボールという風に変わります。車いすバスケットボールの楽しさを感じてもらうことが、パラスポーツへの興味につながると考えているからです」と語る。
また、保護者にも車いすバスケットボールを初めて見る人は多く「パラスポーツや障がい者に対する大人の認識が変わることもプラスの効果」と話す。
ALL BASKETBALL ACTIONの3つめの柱にはJBA、JWBF、B.LEAGUEが国内で開催する大会などの場にそれぞれのカテゴリーの選手たちに登場してもらい、バスケットボールファンが競技・種目の垣根を超えて応援する取り組みがある。
東京パラリンピックで銀メダルを獲得した車いすバスケットボール男子日本代表の鳥海連志、古澤拓也らがB.LEAGUEオールスターの会場でのデモンストレーションに参加し、 健常のバスケットボールファンに自分たちの存在と車いすバスケットボールの魅力をアピールした。
オリンピック競技とパラリンピック競技の選手がともに活動する機会は、ALL BASKETBALL ACTIONが実施される前はほとんど無く、参加した選手たちの間にもバスケットボールの強みやパラスポーツのインパクトを改めて感じたといった声が広がっているという。
日本生命の取り組みだけでなく、今年5月、都内で開かれたB.LEAGUE2023-24シーズン年間表彰式「B.LEAGUE AWARD SHOW 2023-24」で、東京パラリンピック車いすバスケットボール女子日本代表でパリ2024パラリンピックにも出場する北田千尋がプレゼンターを務めたように、徐々にこのような動きが広まりつつある。
この好循環こそ日本生命が打ち出したALL BASKETBALL ACTIONの狙いである。ALL BASKETBALL ACTION は2022年8月の開始から2024年7月までの約3年間で、北は北海道から南は沖縄まで計38回開催されている。
競技の垣根を越えたインクルーシブなスポーツの応援は企業の成長にとってもメリットがある。その一つがサステナビリティ経営の高度化だ。
「日本生命は、今年度からサステナビリティ経営を通じて、 『誰もが、ずっと、安心して暮らせる社会』を目指しています。そして、この実現に向けた取り組みの1つとして、スポーツを活かしています 。人々 に楽しさや感動を与え、心に豊かさをもたらすスポーツは、子どもたちの体験格差の解消や心身の健康増進、そして多様性・公平性を認め合い受け入れるダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の理解促進にポジティブに作用します」(鹿島さん)
スポーツをサポートすることで、全国47都道府県に広がる108支社と約1,500の営業部、そこで働く約5万人の営業職員が、同じ志を持つ地域の企業や自治体などの仲間を増やし、互いの強みを掛け合わせたサービスの提供や社会貢献に繋がる効果もあるという。
「営業職員にはもともと地元で暮らす方も多いので、人の輪を広げていくパワーが非常に強力です。生命保険は数十年単位でお客さまとお付き合いする商品なので、まさに地域に根ざした息の長い活動が地元ネットワークを強固にしています」と鹿島さん。
そして、「日本生命の職員が車いすバスケットボールの試合に足を運んだり、イベントボランティアに参加したりして、スポーツをサポートすることを通じて“自分事化”することで、職員のエンゲージメントも高まっています」とも。
職員全体に浸透するにはまだ少し時間がかかりそうだというが、日本生命には車いすバスケットボール女子日本代表で東京2020パラリンピックに出場した北間優衣さんが職員として在籍し、同じ職場で働く仲間を自然と応援する空気が社内にあるそうだ。
パラスポーツ単体では知名度や発信力の弱さは否めない。だが、志を共にする仲間と汗をかく日本生命のような真のパートナー企業が増えればパラスポーツの力はもっと発揮され、障がいやジェンダーといった社会の壁を払拭するムーブメントが大きくなるはずだ。
その先駆者として日本生命はこれからも人や組織を巻き込みながら走り続ける。
▶ALL BASKETBALL ACTION。日本生命がバスケットボールをサポートする理由【前編】を読む
写真/越智貴雄[カンパラプレス]・ 文/高樹ミナ