パラリンピックにおける柔道は、視覚障害者が行う柔道。1988年のソウル大会で男子種目が正式競技として実施され、大会を重ねるごとに規模を拡大し、2004年のアテネ大会で女子種目が追加された。
これまでは体重別による男子7階級、女子6階級で試合が行われてきたが、2022年にルールが改正され、全盲(J1)と弱視(J2)の2クラスに分かれたうえで、男女とも体重別の4階級に変更された(男子/60㎏級・73㎏級・90㎏級・90㎏超級、女子/48㎏級・57㎏級・70㎏級・70㎏超級)。この新ルールで行われるパラリンピックはパリ大会が初となる。
試合時間は4分で、ルールは一般の柔道と同じだが、常に両者が組み合った状態から「はじめ」が宣告されるなど、選手の視覚障害を考慮したルールが加わっている。組み手争いがなく最初から最後まで接近戦となるため技の応酬が繰り広げられ、開始直後に大技が決まるシーンも少なくない。
試合の展開のなかで場外が近づいている場合は、審判が「場外! 場外!」と声で伝える。試合中に両手が離れたり、場外に出てしまった場合などは、審判が両選手を試合場の中央に連れ戻し、再度組み合ってから再開する。
組み合った状態とはいえ、見えない選手にとって技をかけることは簡単ではない。選手は視覚以外の感覚を研ぎ澄まし、相手の足音や息づかいから情報を得て、また道着をつかんだ手の感覚から相手の肩の高さや動きを察知して、攻撃や防御につなげていく。視覚障害者柔道ならではの激しい攻防と駆け引きによってダイナミックな試合が展開され、観る側も最後の一瞬まで目が離せない。
今大会は日本から女子4人、男子2人の計6人の選手が選出された。東京大会の男子66㎏級で銅メダルを獲得した瀬戸勇次郎(九星飲料工業)は、ルール改正に伴い、肉体改造を重ねて同73㎏級(J2)に出場する。リオ大会3位の女子57㎏級(J2)の廣瀬順子(SMBC日興証券)は、東京大会で5位に終わった悔しさをパリで晴らす。女子48㎏級(J1)の半谷静香(トヨタループス)は4大会連続出場で、これまでは5位が最高。パリ大会で悲願のメダル獲得を狙う。
◆肉体改造を経て世界ランキング1位でパリへ! 瀬戸勇次郎選手
◆元代表で夫の悠コーチと二人三脚で2大会ぶりのメダルを目指す! 廣瀬順子選手
文/荒木美晴