下肢障害や上・下肢切断、脳原性まひ、視覚障害や知的障害など多様な障害の選手を対象とする。近年のパラリンピックでは参加選手が実施競技中、最多となっている。
多様な選手が公平に競技を行えるよう、障害の種類や程度によって「クラス分け」し、クラスごと(*)に競う点が大きな特徴だ。(* 2~3のクラスを混合して行う種目もある)
クラスはT (走・跳躍種目)、またはF(投てき種目)に、2ケタの数字の組み合わせから成り、数字の10の位は障害の内容、1の位は障害の程度を示す。1の位の数字が小さいほど、障害の程度は重い。
競技ルールは一般の陸上競技とほぼ同じだが、障害に応じて一部のルールがアレンジされている。例えば、障害に応じて競技用車いす(レーサー)や義足、装具などを使って競技する。視覚障害のある一部の選手は走種目ではガイドランナー(伴走者)と、跳躍・投てき種目ではガイド(コーラー)という競技パートナーと一緒に競技する。
他にも、視覚障害の一部クラスの走り幅跳びでは踏切板(幅20cm)でなく、踏切エリア(幅1m)が使われ、跳躍距離も踏み切った地点からの実測など特有のルールがある。下肢障害の選手の投てき種目は「投てき台」に座って投げる。握力の弱い選手を対象にした「こん棒投げ」というパラ陸上特有の種目もある。こうした競技用具を使いこなすテクニックや競技パートナーとのチームワークなども見どころだ。
陸上競技は1960年の第1回パラリンピックで行われた8競技のうちの1つで、以来、パラリンピックでは毎回、継続して実施されている。実施種目とクラスは大会ごとに入れ替えがあり、設定される。例えば、ロード種目のマラソンは1984年のストーク・マンデビル&ニューヨーク大会から追加された。
パリ大会では走種目(100m~5000m)と跳躍種目(走り高跳び、走り幅跳び)、投てき種目(円盤投げ、やり投げ、砲丸投げ、こん棒投げ)、マラソンまで全164種目が実施される。例えば、100mは男子が計16クラス、女子が計13クラス実施されるが、マラソンは男女それぞれT12(T11も出場可)とT54(T52、T53も出場可)の2クラスのみ実施される。
唯一のチーム種目として、東京2020大会から新種目として加わった4x100mユニバーサルリレーも実施される。1走は視覚障害、2走は切断・運動機能障害、3走は脳原性まひ・立位、4走は車いすと走順と障害クラスが決められており、男女2選手ずつの4名がバトンでなく、タッチでつなぐリレーだ。多様性を象徴するような種目であり、国の威信をかけたレースは、チームオーダーによって大逆転も、タッチワークのミスによる失格もある。最後まで勝敗の行方が分からない見応えある種目だ。
パリ大会の会場はフランス国内最大のスタジアム、スタッド・ド・フランス。珍しい紫色を基調とした美しいトラックで、新記録ラッシュも期待される。
日本代表は東京大会では46選手で計12個(金3、銀3、銅6)のメダルを獲得したが、パリ大会では40名(男子22、女子18)で躍進を狙う。初出場は14名(男子9、女子5)。一方、パリ大会日本選手団最年長でパラリンピック出場4大会目の伊藤智也選手(T52/100m、400m/バイエル薬品)や夏・冬合わせ9大会連続出場の土田和歌子選手(T54/マラソン/ウィルレイズ)など経験も実績も豊富なベテラン勢の活躍にも期待したい。
文/星野恭子