様々な障害のある人が取り組める、パラ水泳。パラリンピックでは肢体不自由、視覚障害、知的障害の選手が対象で、競泳のみが実施される。
クラスは、泳法・種目を表すアルファベットと障害の程度を表す数字で表記され、障害クラスごとに速さを競う。
※障害の種類に関わらず数字が小さいほど障害が重いことを意味する。
パラ水泳のクラス分けは、障害が水中で泳ぐことにどれだけ影響を与えるか(程度)で評価されるため、例えば肢体不自由のクラスでは、上肢に障害のある選手と下肢に障害のある選手が同じクラスでレースを行う。なお、全盲選手の義眼を除き、義足や義手等の補装具の着用は認められない。
パラ水泳では、それぞれの障害を考慮した用具が使用される。視覚障害のクラスでは、選手がタッチ板の壁にぶつからないように、タッパー(タッピングを行う人)が合図用の棒(タッピングバー)を使って壁が近づいていることを伝える。タッピングバーはほとんどが手作りで、日本では釣り竿に水泳用具のウレタンを加工したものを先端に取り付けているものが多く見かけられる。
0.01秒を競う水泳においては、タッパーとのコンビネーションも重要なポイントとなる。
また、視覚障害で最も重いクラス(全盲から光覚まで)の選手は、競技の公平性を保つため、光を遮断する真っ黒の「ブラックゴーグル」を使用する。
肢体不自由のクラスでは、スタートの方法にも様々な工夫がなされている。飛び込みが困難な選手は水中からのスタートが認められるほか、背泳ぎでは、上肢障害等でスターティンググリップを握れない場合は、口(歯)でタオルやひもをくわえて身体を支え、スタートの合図を待つ選手もいる。
競技は一般の競泳と同様に、自由形、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライの4泳法で行われる。自由形=クロールというイメージがあるが、「自由形」に泳ぎ方の制限はないため、必ずしも全員がクロールで泳ぐわけではない。
そして、パラ水泳特有の種目に150メートル個人メドレーがあり、こちらは背泳ぎ、平泳ぎ、自由形の順で3泳法により実施される。
パラリンピックで水泳は、陸上に次いで2番目に種目数が多い競技で、パリ2024大会では男子71、女子64、混合(リレー)6の141種目が行われる。実にパリ・パラリンピックでは、のべ150人以上の金メダリストが水泳で誕生する!
水泳は1960年の第1回ローマ大会から実施されており、日本は1964年の東京大会に初出場した。前回の東京2020パラリンピックで日本は、金メダル3個、銀メダル7個、銅メダル3個を獲得。パリ・パラリンピックには、初出場5名を含む、男子12名、女子10名の22名が出場する。「トビウオパラジャパン」の愛称を持つ水泳日本代表。今大会のチームスローガンである「熱狂」の渦の中、自己ベストを目指す!
文/張 理恵