テコンドーは韓国で生まれた競技で、多彩な足技が魅力のスポーツ。テコンドー(跆拳道)という競技名は、「テ(跆)」“踏む・蹴る・跳ぶ”、「コン(拳)」“拳(こぶし)で突く”、「ド(道)」“正しき道を歩む精神”を意味している。
パラテコンドーは比較的新しい競技で、2006年、世界テコンドー連盟(WTF)にパラテコンドー委員会が設置され、上肢に障害のある選手を対象としたパラテコンドー(キョルギ)が誕生。2009年にアゼルバイジャンで、初の「世界パラテコンドー選手権」が開催された。
パラテコンドーには、「キョルギ」(組手)と「プムセ」 (型) の2種目があり、キョルギは肢体不自由(上肢障害)、プムセは知的障害の選手が対象となる。パラリンピックでは、キョルギのみが行われる。
パラテコンドーは、東京2020大会で初めてパラリンピック正式競技として実施された。2013年に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定し、2015年1月に国際パラリンピック委員会(IPC)によって、東京2020大会でのテコンドー(キョルギ)の採用が正式決定した。しかし当時、日本にはパラテコンドーの選手がいなかったため、自国開催のパラリンピックに向けて、急ピッチで選手の発掘と育成が進められた。
競技は体重別の階級で行われ、障害の程度によってクラスが分けられているが、パラリンピックでは一番障害の軽いK44クラスに統合して実施する。東京パラリンピック後に階級の見直し・変更があり、パリ・パラリンピックでは男子と女子で各5階級が行われる。
※男子60人、女子60人(全階級の合計)の120人の選手が出場予定。
試合は、直径8mの八角形のマット(12㎡)の上で、1対1で行われる。電子判定となるため、選手はセンサーが付いたヘッドギア、胴プロテクター、ソックスを着用して対戦する。
5分×1ラウンドを戦い、ポイントが高い方が勝ちとなる。ラウンド中に各選手1回のみ1分間のタイムアウトを要求できる。
蹴りが相手の胴(胴プロテクター)に当たると1ポイント、180度以上の回転を加えた蹴りや、相手に背を向けて蹴る「後ろ蹴り」など、回転をともなう足技には3ポイントが与えられる。360度以上の回転を加えた蹴りには4ポイントが与えられる。
パラテコンドーでは頭部への攻撃は禁止されており、「カムチョン」(警告)を宣告された場合には相手選手に1点が入る。「突き」によるポイントはない。また、うずくまって立てなくなったり、レフェリーが10カウントを数えるまでに戦意がなければKOとなる。
リーチの長さやスピードが武器になるほか、相手との駆け引きや、華麗な回転技が大きな見どころになる。
東京2020大会からパラリンピック正式競技として行われている。東京パラリンピックには、男子2名、女子1名の3選手が出場。パリ・パラリンピック代表には、東京2020大会に続き2大会連続で田中光哉選手と工藤俊介選手の2名が出場する。パリ2024大会の競技会場は、オリンピックのフェンシング競技でその美しさが話題となった「グラン・パレ」で行われる。
文/張 理恵