パラ射撃は、ライフルやピストルで決められた弾数を制限時間内に撃ち、合計点を競う競技。パラリンピックでは肢体不自由の選手が対象となる。
銃の種類、標的までの距離、撃つ姿勢等によって、パリ2024大会では13種目が実施される。
競技では装薬銃(火薬銃)であるライフルとピストル、空気銃であるエアライフルとエアピストルが使用される。どの銃を使用するかは種目ごとに決められている。
標的の大きさは、銃の種類や的までの距離によって異なる。
10mエアライフル種目の場合、的の大きさは直径4.5cmで、中心の10点圏の直径はわずか0.5mm。弾がど真ん中に当たると満点の10.9点、中心から0.25mmずれるごとに0.1点ずつ得点が下がっていく。
また、10mピストル種目の10点圏は直径11.5mm、50mライフル種目の中心円は直径10.4mm。的の中心を打ち抜く技術は、まさに超人技といえる。
※最高得点(満点)は、ピストル種目が10点。ライフル種目(「三姿勢(男子・女子)」種目を除く)は10点をさらに10分割(10.0~10.9)し、満点は10.9となる。
◎伏射(ふくしゃ):身体を床に伏せた姿勢。車いすの選手は、車いすに取り付けたテーブルを床とみなし両肘をのせて撃つ。
◎膝射(しっしゃ):しゃがんだ姿勢。車いすの選手は、銃を支える方の肘のみを台の上に置いて撃つ。
◎立射(りっしゃ):立った状態で撃つ。車いすの選手は肘が脚や背もたれに触れない状態で撃つ。
パラ射撃のクラスは、使用する銃によって分け方が異なる。
◎ピストル種目:SH1(下肢または上肢に障害)の1クラスのみ。
◎ライフル種目:SH1(下肢障害)、SH2(上肢障がい)の2クラス。
障害の程度に応じた細かいクラス分けはないが、公平に競い合えるように、車いすの選手は体幹機能の程度によって使用できる背もたれの高さが3段階で定められている。
射撃ではまず「本選」が行われる。その種目に出場する選手が横一列に並び、決められた弾数を制限時間内に撃つ。
例えば、10mエアピストルSH1(男子/女子)では60発を75分間に撃つ。また、50mライフル三姿勢SH1(男子/女子)では、膝射・伏射・立射の姿勢で各40発、計120発を2時間45分以内に撃つ。
この1発ごとの得点をすべて足した合計点で順位が決まり、(多くの種目では)本選の上位8選手のみ「ファイナル」へと進む。ファイナルでは、弾数が進むにつれて点数の低い選手から脱落していき、最後まで高得点をあげ続け勝ち残った選手が優勝となる。
選手はミスの許されない極限状態で1発ずつ打ち込み、展開を見守る観客は、時に感嘆の声をあげ、時にため息をもらす。そして試合が終わると、優勝した選手をはじめ、出場した全選手を称える拍手が鳴り響く。
ファイナルは、実況のMCが会場を盛り上げる等、エンターテインメント性あるエキサイティングな空間となる。
パラリンピックでは1976年のトロント大会から正式競技として行われている。パリ2024大会では、東京2020大会と同じ男子3種目、女子3種目、混合7種目の計13種目が行われ、日本からは男子1名、女子2名の3選手が出場する。
文/張 理恵