パラバレーボール(座位)は、床に臀部(でんぶ、同競技では肩からお尻まで)の一部をつけ、座った姿勢でプレーするバレーボール。上肢や下肢に障害のある肢体不自由の選手が対象となる。
1956年に兵士たちのリハビリを目的にオランダで考案され、1967年には初の国際大会が開催された。パラリンピックは1980年のアーネム大会で正式競技として採用され、当初は男子のみが実施された。女子は2004年のアテネ大会から行われるようになった。
日本国内では、1992年に初めてチームが東京で結成され、近年まで「シッティングバレーボール」と表記していた。パラリンピックには男子日本代表がシドニー2000大会で初出場を果たし、これまでアテネ、北京、東京2020大会に出場した。女子日本代表は2008年の北京大会に初出場し、2012年のロンドン大会と東京2020大会に出場した。女子代表の愛称は「煌めき(きらめき)JAPAN」。円陣での掛け声もオリジナリティにあふれている。
パラバレーボール(座位)のルールは、基本的に一般のバレーボールと同じ。試合は5セットのうち3セット先取したチームの勝利、1セットは25点先取(第5セットは15点)のラリーポイント制で行われる。大会では1チーム最大12人で構成され、そのうち6人がコートに入ってプレーする。
コートのサイズは、一般のバレーボールが18m×9mなのに対し、パラバレーボール(座位)は10m×6m(センターラインからエンドラインまで5m、両側のサイドラインを結ぶエンドラインは6m)となっている。また座位でプレーするためネットも低く設定されており、ネットの高さは、男子が 1.15m、女子は1.05mで、一般のバレーボール(男子2.43m、女子2.24m)よりも1m以上低い。ボールはオリンピック競技と同じ大きさである5号球を使用する。
選手は障害の程度により、「VSⅠ」(四肢切断など、中程度~重い障害)と「VSⅡ」(人工関節や、軽度の機能障害)の、2つのクラスに分けられる。メンバー12人のうち障害の軽い選手(VSⅡクラス)は最大2人までと定められており、コート内でプレーできるのは1人のみとなっている。
プレーにおいて一番大きな特徴は、競技名のとおり、臀部をフロアにつけて座った状態でプレーすること。選手はお尻を床から離せないため、脚や腕の力、体幹などを使ってお尻を滑らせるようにして、上下・左右・斜めに移動する。
コートが狭いので選手同士の距離が近く、またネットも低いため至近距離から鋭角のスパイクやサーブが打ち込まれる。すばやい反応とポジション移動が求められ、守備を専門とするリベロも導入されている。
パラバレーボール(座位)では、アタックやブロック、サーブなどのプレー中に、立ち上がったり飛び跳ねたりして臀部が床から浮くと「リフティング」の反則となる。ただし、ファーストレシーブのみ、一瞬、臀部が床を離れることが認められる。また、相手のサーブを直接ブロックしたりアタックなどで返球することもできるので、サーブでは精度の高さやコースを読まれない技術も重要となる。
海外には身長が2メートルを超える選手もいて、ネットの上に頭がはみ出るほど。両手を伸ばせば壁となって立ちはだかり、迫力あるラリーが展開される。スピード感に加え、フェイント等を駆使した頭脳プレーも見どころのひとつとなる。
パリ2024パラリンピックには男子8チーム、女子8チームが出場。パリ大会への日本の出場はないが、パリ北アリーナを会場に熱い戦いが繰り広げられることだろう。
文/張 理恵