1960年にローマで開催された第1回大会からパラリンピックで実施されている歴史ある競技の一つ。日本は1964年東京パラリンピック以降、毎大会代表選手を派遣している。
使用する弓は2種類。オリンピックのアーチェリーでも使用されている弓「リカーブボウ」と、比較的小さな力でも狙いやすいように弓の両先端に「カム」と呼ばれる滑車が付いた「コンパウンド」がある。「コンパウンド」はオリンピックでは使用されないが、海外で主流であり、世界選手権も開催されている。
試合はまず72射(1射10点満点で最大720点)の予選「ランキングラウンド」を行い、合計得点を競う。そのランキングでトーナメント方式の「決勝ラウンド」の組み合わせが決定する。決勝ラウンドでは制限時間30秒以内に1本の矢を放たなければならない。
男女別の個人戦と、男女混合ペアのミックス戦があり、いずれも3つのカテゴリーに分かれて勝敗を競う。
「W1オープン」は、下肢と手や体幹にも障害がある車いす使用の選手が対象で、リカーブかコンパウンドか使用する弓を選択することができる。直径80cmの的に向かって、50m手前から矢を放つ。「リカーブオープン」と「コンパウンドオープン」ではパラスポーツのなかでも珍しく座位(車いす)と立位の選手が共に競う。「リカーブオープン」は直径122cmの的に向かって、70cm手前から放つ。「コンパウンドオープン」は直径48cmの的に、50m手前から射る。
いずれの的にも中心部分から10~1点の円が描かれており、中心の10点の大きさは「W1」「コンパウンドオープン」は直径8cm、「リカーブオープン」は直径12cm。個人戦の決勝ラウンドはいずれも3射5セット方式で、団体戦(ミックス戦)は2人で2射ずつの4セットポイント制。「W1」「コンパウンドオープン」は個人、チーム戦ともに合計点で競い、「リカーブオープン」はセットごとにポイントを付け、個人戦は計6ポイント、チーム戦は計5ポイント以上を先取した方の勝利となる。
点数さえ出せばパラアスリートも一般の大会に参加することができるアーチェリーでは、パラリンピックに出場した選手がオリンピックに出場するケースもある。また、さまざまな障害の選手が入り混じって競い合うパラアーチェリーでは、弓の射る方法もさまざま。両手に障害があり、手で弓を引くことが困難な選手は、足や口、肩やあごなどほかの部位を使う。金メダリストの中には、口で射る選手もいた。
最大の注目はリオ、東京に続いて3大会連続で出場となるリカーブ男子の上山友裕。東京2020パラリンピックでは1回戦敗退を喫したが、翌2022年の世界選手権では金メダルを獲得し、世界ランキング1位に。今年5月に左ひじを疲労骨折し、1カ月間練習ができなかったが、その後の大会では日本新記録を更新するなど調子を上げている。結果を意識しすぎないように“OMIYAGE”に言い換えている金メダルを3度目の正直で狙う。
文/斎藤寿子