「ヒューリック・ダイハツJapanパラバドミントン国際大会2024」が10月22日から6日間にわたり、国立代々木競技場第一体育館で開かれた。パリ2024パラリンピック後に国内で初めて開かれる公式戦で、33カ国から約140人が出場した。今回は日本代表の女子の活躍をレポートする。
車いす女子WH1シングルス準決勝は日本人対決に沸いた。パラリンピック金メダリストの里見紗李奈(NTT都市開発)が高校3年の友寄星名(小岩高)をストレートで破り、成長株の挑戦を退けた。試合中、ロングラリーから友寄に前後に動かされ、「うまい」と唸る場面もあった里見。「星名の別の試合を観ていても、ゲームの入り方や表情が変わってきたと感じた。試合経験こそ少ないが、すごく伸びていると思う。私も負けられないという気持ちだった」と、後輩との一戦を振り返った。また、里見は決勝でシンティア・マテーズ(スイス)を21-10,21-9で破り、2大会連続3度目の優勝を果たした。
里見はパリ大会から帰国後、10日ほど休んで合宿に参加。「私、またパラリンピックに出るのかな、というくらい練習してきた」と振り返った里見。その背景には、ライバルの存在がある。パリ大会では、決勝で戦った尹夢璐(中国)に予選リーグで一度黒星を喫した。「男子の梶原選手のように、私も女子WH1のなかで頭ひとつ、ふたつ抜けたい。それがパリが終わってから自分のなかでできた明確な目標」と言い切る。その目標達成の第一歩目が今回のジャパン国際だった。「応援してくれる人たちの前で、ちゃんと勝てるんだぞというところを見せられてよかった」と、コメントした。
WH2のシングルスは5人がエントリーし、総当たり戦で行われた。日本からは山崎悠麻(NTT都市開発)が唯一出場し、4戦全勝で優勝を果たした。里見と組む女子ダブルスWH1-WH2も制し、2冠を達成した。山崎は今季をもって代表引退を表明。パラリンピック東京大会で金メダル、パリ大会で銀メダルを獲得した里見とのダブルス「ゆま・さり」ペアも、今大会で解散となった。山崎は競技人生を振り返り、「本当に楽しいパラバドミントン生活を送ることができた。サリちゃんがいなかったら続けられなかったし、パラリンピックでメダルを獲ることもできなかった。寂しさはあるけれど、これからもサリちゃんを見守って、応援していきたい」と話し、唯一無二のパートナーにエールを送った。
混合ダブルスSL3-SU5決勝では、パリ大会代表の伊藤則子(中日新聞社)・今井大湧(ダイハツ工業)組が、準決勝で藤原大輔(ダイハツ工業)・杉野明子(LINEヤフー)組を下したインドのペアと対戦し、21-4、21-10で勝利した。コート上では、右脚義足の伊藤が前衛の1点を守り、残りの3点を上肢障害の今井が守るという独自のスタイルがこのペアの特徴だ。決勝では、今井がシングルスさながらのフットワークで攻撃し、甘く返ってきた球を伊藤がネット際で確実に仕留めるシーンが幾度とみられた。伊藤は試合を振り返り、「最後まで集中し、相手の空いている場所も冷静に見極めることができた。今井選手も確実に決めてくれて、心強いパートナーだと改めて感じた」と、笑顔を見せた。
下肢障害女子SL3シングルスは5人がエントリーし、総当たりで頂点を争った。武田佳乃(日本社会事業大)は2勝を挙げて3位に。武田は国内の大会を含めて表彰台に上がるのは初めてで、「すごく嬉しい。今大会を足がかりに実績をどんどん積んでいって、最終的にはパラリンピックに出場できるようになりたい」と、力強く話した。
下肢障害女子SL4シングルスには、パリ大会代表の藤野遼(GA technologies)、急成長中で右脚義足の澤田詩歩(ダイハツ工業)、中村鈴(精華女子高)の3選手がエントリー。全員が決勝トーナメント進出を決めるなど日本勢が存在感を示すなか、藤野と澤田が決勝に駒を進めた。その決勝は、フルゲームの接戦に。藤野が第1ゲームを21-16で奪うが、第2ゲームで16-14と2点リードの場面からアウトとジャッジミスが続き、3連続失点。流れが澤田に傾き、逆転でゲームを失った。ファイナルゲームは両者とも気迫あふれるプレーを発揮するが、最後は藤野が澤田の粘りに押され、17-21で落とした。
ふたりは国際大会では初対戦。澤田は国内の大会で藤野に全敗中で、常々「遼さんに勝ちたい」と話してきた。今回、自らの手で結果をつかみ取り、「本当にうれしい。コートを広く使って遼さんの体力を奪うことができた。次はストレートで勝利をおさめることを目標に頑張りたい」と語った。また、中村は準決勝で藤野に敗れたが、初出場で銅メダルに輝いた。
上肢障害女子SU5シングルスは、予選リーグで杉野を破ったパリ大会代表の亀山楓(高速)と同じくパリ大会代表の豊田まみ子が決勝トーナメントに進出。準決勝で接戦の末に亀山を下した豊田が決勝に進んだ。決勝ではパリ大会銅メダリストのマニシャ・ラマダス(インド)と対戦。ストレートで敗れたものの、シャトルに食らいつき相手を追い詰めた。豊田は「パリ(の準々決勝)で対戦した時よりも、少しラリーができるようになった。第2ゲームは自分から動くことを意識して、スピードを変えて戦えた。お客さんの声援にも支えられて試合ができた」と振り返った。パリ大会からの気持ちの切り替えは「すごく難しかった」と語る豊田。それでも、「パリで悔しいと思う気持ちがあった。この先はまだはっきりとは決めていないけれど、まずは12月の日本選手権にエントリーして頑張ってみようと思っている」と話し、顔を上げた。
低身長女子SH6には杉本沙弥佳がエントリー。シングルスは5人による総当たり戦を行い、1勝3敗で4位だった。女子のSH6はパリ大会からシングルスが採用された。4年後のロス大会出場を目指す杉本はパリ大会を観て刺激を受けたといい、「強い選手に思いっきりぶつかっていきたい」と、言葉に力を込めた。
写真/植原義晴・ 文/荒木美晴