車いすカーリングのクラブチーム日本一を決める「第21回ナブテスコ日本車いすカーリング選手権大会」が5月23日から3日間にわたり、長野県の軽井沢アイスパークで開かれた。北海道ブロックからKiT CURLING CLUB 、チーム札幌、本州ブロックからチーム山梨、ease埼玉、チーム長野の計5チームが出場し、決勝でease埼玉がチーム札幌を10-3で下して初優勝を飾った。
今大会は、まずは総当たりの予選リーグを実施。上位3チームが決勝トーナメントに進み、予選2位と3位のチームが準決勝を行い、勝者が決勝で予選1位のチームと対戦する試合方式で行われた。
予選は毎試合、手に汗握る接戦が繰り広げられた。各チームの実力が拮抗するなか、チーム札幌が昨年準優勝のチーム長野から初勝利を挙げ、また昨年は予選敗退だったease埼玉が昨年度チャンピオンのKiT CURLING CLUBに競り勝つなど、初日から混戦模様に。2日目はease埼玉がチーム長野とのエキストラエンドの大接戦を制すると、本州ブロック優勝のチーム山梨は3敗で迎えた最後の試合でKiT CURLING CLUBに土をつける意地を見せた。最終戦では上位争いをするチーム札幌とease埼玉が対戦し、6-2でチーム札幌が勝利。ともに3勝1敗となり、直接対決を制したチーム札幌の予選1位通過が確定。2位はease埼玉、3位にKiT CURLING CLUBがつけた。
試合中も刻々と氷の状態が変化していくカーリング。とくに、スイープがない車いすカーリングはいかに氷の状態を読み、正確なドローショットを決めるかが勝敗の鍵となる。1勝3敗で無念の予選敗退となった昨年2位のチーム長野は、エキストラエンドに突入した試合が2試合。チーム山梨には勝利したが、ease埼玉戦では試合が長引くにつれガードが中に入りすぎるなどショットの精度がわずかに落ち、そこを相手に突かれて敗れた。スキップの和智浩は、「練習時とはまた違う曲がり方をした。ウエイトが合わせ切れなかった」と話し、唇をかんだ。
会場の軽井沢アイスパークをホームリンクとするease埼玉のスキップ・中島洋治も、「スタートは氷が重く、普段はそこからさらに重くなるが、今回は逆に速くなったりして、ウエイトも感覚が掴みづらかった。カールもいつも以上にあった」と、攻略の難しさを語る。それでも「初日に試合をして、今回はよく曲がるという特徴も分かったので、ストーンの回転数を多くするなどして調整した」と、ベテランならではの工夫で乗り切ったことを明かした。
決勝に先立ち行われた準決勝は、予選2位のease埼玉と3位のKiT CURLING CLUBが対戦し、12-11でease埼玉が勝利。決勝に駒を進めた。序盤はKiT CURLING CLUBのショット精度が上がり切らず、第3エンドで3点を入れたease埼玉が5-1とリード。しかし、第4エンドはKiT CURLING CLUBが優位に進め、フォースの高橋宏美がハウス手前のストーンに当てて動かし、4点奪取のビッグエンドとなった。5-5の同点で迎えた第5エンド、勢いに乗るKiT CURLING CLUBがスチールに成功して3点を追加。このまま流れにのるかと思われたが、ease埼玉が冷静に展開して第6エンドで4点奪取して逆転に成功すると、続く第7エンドも3点をスチール。KiT CURLING CLUBは最終エンドに3点を取り返すが、わずかに届かなかった。
KiT CURLING CLUBはメンバーの休部や入れ替えがあり、コーチのいない状態で新チームとしてスタートしたばかり。スキップの柏原一大は、「トレーニングの成果を出せなかった。イージーなショットミスでピンチを迎え、相手のミスにもつけこめなかった」と反省を口にした。その一方で、指導者がいない分、自分たちでゲームプランを考え、4人でチームのセルフプロデュースに取り組めたことは収穫だと話し、「ぎゅっと詰まった3日間だった。疲れながらも自分たちでやってこられたのは良かった」と、胸を張った。
決勝は、ease埼玉がチーム札幌を圧倒。序盤は互いに1点を入れる展開となり、第3エンドにease埼玉が4点のスチールに成功。続く第4エンドも2点を追加し、6点差をつけて突き放した。第5エンドはチーム札幌が早々にナンバーワンストーンを取り、2点を返すが、第6エンドはease埼玉が再び3点を加点したところでチーム札幌が負けを認める「コンシード」を宣言。試合終了となった。
敗れたチーム札幌のスキップ・本間篤史は、「難しいながらも氷の状況は読めていたが、ショット率が低く、欲しいところにストーンを出せなかったのが敗因」と悔しさをにじませつつも、「4人で意思疎通を図り、やりたいプレーの共通認識が取れていたし、チーム力を見せられたと思う」と話し、前を向いた。
一方、ease埼玉は予選で一度敗れた相手にリベンジを果たし、悲願の頂点に立った。小川亜希は「今大会の目標は“最後に笑う”だったので、目標達成できてよかった」と笑顔を見せた。中島と小川は3月、ミラノ・コルティナ2026パラリンピックの新種目であるミックスダブルスの世界選手権で史上初の優勝を果たし、日本がパラリンピックの出場権を獲得。ふたりは日本代表に内定している。
リードの早川雅喜は「中島さんと小川さんが金メダルを獲得したから、4人制でも金を獲りたいよねという話をしていたので、本当によかった」と語り、セカンドの櫻井雄太は「報道陣も多く、下手なことはできないとプレッシャーだった」と話してチームメートを笑わせ、「それを乗り越えて一番いい色のメダルをもらえた」と最高の結果を喜んだ。
チーム内の刺激が結果につながった今大会。飯野明子コーチは「支えてくださる皆さんに本当に感謝の気持ちでいっぱい。ただ、優勝はしたけれど課題もまだまだあると分かった。チームみんなで上昇し、来年の大会にまた向かっていきたい」と締めくくった。
写真・植原義晴/文・荒木美晴