連日熱戦が続く「2018車いすバスケットボール世界選手権大会」。日本代表の活躍ぶりをドイツ・ハンブルクからいち早くレポートします!
僕らも前夜にスペイン料理を食べて「スペインを食う」と気合を入れて臨んだ決勝トーナメントの対スペイン戦だったが、結果的には50対52と負けてしまった。勝って欲しかったし、勝ちが必要なゲームだった。その相手が例えリオパラリンピックで銀メダルのチームだとしても、今の日本代表は勝つ力がある。予選リーグで3連敗していたスペインはモチベーションも高くないように見えた。予選リーグをグループ1位で抜けた日本とは勢いも違うはず。しかし目覚めさせたら厄介だなとは思っていたが、その予想が当たってしまう。悪夢のようだった第2、第3Qは、あの長い時間スペインの攻めに、一方的にやられ得点を重ねられた。この時間帯の対処は遅かった。火が燃え広がったあと消火するのは何倍ものエネルギーが要る。何年か前の日本代表であれば、このままズルズルと終わってしまっただろう。それが驚異的とも言える追い上げで最大19点差が最終Qには同点に追いついた。これは地力がついた証拠だし、勝つ力があったというのがはっきりわかった。「自分たちのバスケ」は所々うまくいかなかったが、勝ちだけは拾ったぞ、というようなしたたかさがあれば…というのは望み過ぎか。世界の強豪相手にこれだけの試合ができるようになったからこそ期待したい。東京2020へ向かっているチーム作りのプロセスであったとしても、勝利というものは、「自分たちは正しい道を進んでる」という強い確認になるし、また他ライバル国に対しても日本は強くなったと意識付ける意味でも大事なことだったのではないだろうか。
それともう一つ、選手たちから「僕らは後半のチーム」という声を聞いた。練習や合宿等でハードワークをこなし、またMWCCでもそうだったように、確かに終盤にスタミナが切れて逆転されるケースがなくなってきていた。むしろ後半に逆転して勝つというのがパターンとして定着しつつある。しかし考えてみれば、早い時間に勝負の大勢を決めることができれば、その方が楽なわけだし、選手の疲労度も変わってくる。ということは後半のチームと思い過ぎる必要はないと思う。スペイン戦は追いつくのが精一杯だった。もし前半の失点を少しでも食い止めていたなら、ゲームの勝ち負けは逆になっていた可能性もある。
とはいえ、世界選手権という大舞台。若い選手がそういう経験ができたということは前向きに捉えたい。ここで負けたことが後になって「良かった」となるように糧として、前を向いて進んで欲しい。振り返ってみれば日本代表の成長を感じた世界選手権だった。だからこそスペインに負けたことが悔しい。東京2020まであと2年、その時の彼らの姿を想像してワクワクする。引き続き見守っていこうと思う。(井上雄彦・談)
text&photo by チームリアル