東京パラリンピックに向けて様々な競技やアスリートの魅力に迫る本連載。今月は、パラスポーツで最も激しいといわれるウィルチェアーラグビーの世界で、数少ない女子選手として奮闘する"元気印"に注目!
ウィルチェアーラグビーといえばパラスポーツの中でも特に激しいコンタクトプレーが求められる競技だが、実は唯一の男女混合種目でもある。そして初めて日本代表に選ばれた女子選手が倉橋香衣だ。
「この競技に惹かれたいちばんの理由が"ぶつかっていい"ところ。リハビリ施設入所中に初めて見学させてもらって、選手たちがガッシャンと音を立ててぶつかり合う姿を見て、私もやりたい! と思ったんです」
その言葉からもわかるように、とにかくポジティブである。頸髄損傷という人生を左右するような大ケガによって車いす生活になってからも、決して後ろ向きになることはなかったという。
「落ち込むよりも、むしろ寝たきりのところから少しずつ体が起こせるようになったり、初めてひとりでご飯を食べられるようになったり、一つ一つ何かができるようになっていく過程を楽しもうと。もちろんそれができたのは家族や友人たちの支えがあったからこそ、ですけれど。私は、漢字の"楽"という字がとても好きなんです。"楽しい"とか"楽しむ"という意味はもちろん、"気楽に"みたいな感じもあるじゃないですか」
と、底抜けに明るい笑顔で語る。先の世界選手権でも優勝したウィルチェアーラグビー日本代表は、2年後の東京パラリンピックでメダル獲得が大いに期待される存在。しかしながらそんな世界の大舞台でもきっと、"倉橋香衣らしさ"はそのままなのだろう。
「シンプルに、自分らしい元気なプレーで、同じような境遇の人たちに元気を与えられたらなぁと常に思っています。あと、女子選手がもっと増えると私自身も本当にうれしいので(笑)、もし東京パラリンピックに出られたら、ウィルチェアーラグビーってなんだか楽しそうだなって思ってもらえるようなプレーをより積極的に見せたいですね」
【プロフィール】
倉橋香衣さん
くらはし・かえ●1990年9 月15日生まれ、兵庫県出身。高校時代まで体操、大学ではトランポリン部に所属していたが、大学在学中の試合でのケガによって頸髄を損傷。そのリハビリの過程でウィルチェアーラグビーと出会う。2015年に強豪クラブのBLITZに加入し、大学卒業後に商船三井に入社。2017年度から日本代表に女性選手として唯一選出され、今年8月にオーストラリアで開催された世界選手権で初優勝。
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Composition & Text:Kai Tokuhara