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2018.11.19 Sportiva 陸上競技
インタビュー フェリックス・シュトレング(パラ陸上)

東京パラリンピックの金メダル候補が語る「東京の街への期待」

日本で世界の走りを披露したフェリックス・シュトレング

 

“世界最速”を目指して

 

「日本でレースを走るのはこれで5回目かな。川崎、それから大阪と渋谷が2回ずつ」

 

11月6日、東京・豊洲のランニングスタジアムの一室。パラ陸上・短距離のフェリックス・シュトレング(23歳/ドイツ)は、記憶を辿るように話した。

 

その2日前、フェリックスは渋谷の公道に陸上トラックを敷設して行なわれた『渋谷シティゲーム』に出場。同レースはパラ陸上のT64クラス(下腿義足使用など)における国内外のトップ選手が、60mの世界記録(6秒34)に挑むというものだ。同記録を保持するのは、クリスチャン・コールマン(米国)。100mで9秒79(世界歴代7位)を持つ世界トップスプリンターである。公認記録にはならないものの、パラアスリートたちの飽くなき“速さ”への意志は、健常者の世界記録を見据えている。

 

同レースの主催者の一人である義足エンジニアの遠藤謙氏(Xiborg)はこう語る。

 

「選手が最もかっこよく見えるのは速く走っている時。“障がい者スポーツ”という枠組みではなく、アスリートの本気のパフォーマンスを見て欲しい」

 

今レースにおけるフェリックスの結果は、リチャード・ブラウン(米国/T64・100m、200m世界記録保持者)、ジャリッド・ウォレス(同/ロンドン世界パラ陸上200m金メダル)に次ぐ3着。記録は7秒30と“世界記録”には1秒弱及ばなかったが、フェリックスは満足気だ。

 

「オフシーズンにも関わらずこれだけのタイムを出せた。来シーズンがとても楽しみだよ」

 

同僚というライバル

 

100m10秒67、200m21秒42、走り幅跳び7m71。

 

フェリックスの持つ自己記録である。単純比較はできないものの、インターハイ(全国高校総体)やインターカレッジ(全日本学生選手権)におけるトップ選手の競技力に比肩する水準だ。先天性の右足首欠損で、下腿部から鋭角に曲がる義足を装着して走る。自身の強みは「初速」だという。高硬度のカーボンを使用した義足で接地面をしっかりと踏みしめ、スタート直後からトップスピードに乗る。

 

「僕の強みは前半。力強い加速で一気にスピードに乗って、それを維持してゴールするスタイルだ」

 

2012年に陸上競技に触れると、たちまち頭角を現した。14年の『パラ陸上欧州選手権』でドイツ代表の座を掴むと、16年のリオ・パラリンピックでは100m、走り幅跳びで銅メダルを獲得、400mリレーではドイツの金メダル獲得に貢献した。17年の世界選手権は、リオ後の故障も影響して欠場したが、今シーズンより復帰。自己記録は、すべて今季マークしたものだ。100m、200mともに、前述のリチャードの世界記録(100m10秒61、200m21秒27)に肉薄しており、東京パラリンピックにおける金メダル候補の一人といえる。

 

「故障をきっかけにハードなトレーニングを見直したんだ。リラックスを心掛けて、走る動作を一つずつ学び直した。結果として、加速力がアップして、周囲の選手から抜きん出ることができた。(自己記録をマークできたのは)トレーニングのポイントが明確になって、いい準備ができたからだろうね」

 

特筆すべきは、その万能ぶりである。走り幅跳びの7m71はT64の今季世界2位。上に立つのは、オリンピックの優勝記録を凌ぐ8m48を持つマルクス・レーム(ドイツ)のみだ。フェリックスも、トレーニングでは8m超えの跳躍を見せており、パラアスリート2人目の8mジャンパーになる日も遠くはない。助走と踏切という異なる動作からなる走り幅跳びでは、スピードとタイミングで記録が大きく左右される。加えて、義足の反発性をコントロールするスキルも要求されるため、フェリックスは極めて高い身体能力と競技センスを有していると言えるだろう。

 

フェリックスの潜在能力の高さは、彼の言葉からも伺える。

 

「助走速度は速くても、そのスピードを、まだ上手く跳躍に生かせていないんだ。その点マルクス(・レーム)は、助走で作り出したパワーを殺さずに、跳躍に転換できている。僕は彼に比べて、スプリントにおけるポテンシャルは持っているけれど、彼はまた異なる潜在能力を秘めている。互いの可能性についてはよく観察しあっているから、記録を伸ばす余地は大いにあると思う」

 

実は、両者は“チームメイト”でもある。ドイツのナショナルチームとしてだけではなく、在籍するチームが同じなのだ。ドイツ西部・レヴァークーゼンの総合スポーツクラブ『TSV Bayer 04 Leverkusen』の保有するチームに所属。同チームには、2人の他にも世界的なパラアスリートが在籍し、健常の選手と共に、障がいの有無で違いを設けることなくトレーニングを行なっているという。

 

「双方(健常の選手とパラアスリート)で互いに学ぶことは多い。パラアスリートだからと、特別なことをやっているわけではなくて、競技者として現状の改善をただ、していくだけさ。どんなトレーニングがベターか、聞いたり、教えたり、共に考えたり…。トレーニングは大好きだ。トラックに入るとモチベーションがあがる。練習場所までチームメイトを引き連れていくのはいつも僕なんだよ」

 

「授業」が元で寄宿舎へ

 

フェリックスがパラスポーツを始めたきっかけも、レヴァークーゼンにあった。2012年、通っていた学校のスポーツ科の教員から、選択授業のテーマにパラスポーツを勧められたのだ。

 

「当初は体操競技を選択していたけど、ちょうどロンドンオリンピック・パラリンピックの年だったから、先生から『オリンピックについて調べてみたら?』と勧められた。それもいいかな、と思ったね。その後、今度は『もし興味があればパラリンピックについてもどうか』と言われたんだけど、パラスポーツのことをまったく知らなかったから、始めは興味が湧かなかったんだ」

 

当初乗らなかった気持ちは、教員のアプローチもあって徐々に変化していった。当時パラ陸上で活躍していたアスリートは、マルクス・レーム、オスカー・ピストリウス(南アフリカ/義足の陸上選手として初めて五輪に出場)ら。インターネットの情報や、彼らの競技映像を見ながら、次第にパラスポーツへの関心が高まっていったという。

 

「次の授業の時には、パラリンピックについて調べることに決めていたよ。どうやったらあの舞台(パラリンピック)まで行けるのかを考えるようになっていった。パラスポーツを学ぶためにレヴァークーゼンの陸上クラブにコンタクトをとったら、競技用義足を提供してもらえて、そこから物事が急速に進んでいったんだ」

 

『TSV Bayer 04 Leverkusen』からチーム加入のオファーを受けると、住んでいたコーブルクから、500キロ離れたレヴァークーゼンへ拠点を移した。フットボールを始めとしたアスリートを養成するボーディングスクール(全寮制の寄宿学校)に通いながら、トレーニングに励む日々が始まった。

 

今シーズンも成長し続けている姿を見せた

 

それからの躍進は、上述の通りである。

 

「家族に会えるのは年に2回ほど。1番になることだけを考えて多くを犠牲にして競技に打ち込んできた。でも、ここまで早く結果が出るとは思っていなかったから、素直にうれしい。僕の足の状態は生まれつきだけど、家族は周囲と区別なんかしなかった。そのおかげか、他の人も自分と同じように義足を履いていると思っていたくらいだ(笑)。幼いころからスポーツは何でもやってきた。僕には障がいがあるという感覚はなくて、それは家族や友達の影響が大きいと思う」

 

「東京の街」への期待

 

取り組む種目すべてで世界最高水準の記録をマークし、飛躍の年となった2018年。しかし、息巻いた様子は見せず、低い声で淡々と話す。

 

「まずは100mの平均値を高水準で維持することが目標だ。200mは今より速く走りたいし、幅跳びでは8mを超えたいけど、“挑戦すること”を増やしすぎたくはない。リチャードやジョニー(ジョニー・ピーコック/英国・ロンドン、リオの100m優勝者)が当然ライバルになってくる。ジョニーには今シーズン一度勝っているので、来シーズンに向けて自信を持っているよ。東京では、その時にできる最速の走りを見せるつもりだ」

 

フェリックスは、2019年にドバイで行なわれるパラ陸上世界選手権を経由し、東京パラリンピックへ向かう。東京の街に期待することは「人々が作り出す雰囲気が素晴らしくあること」だという。

 

「さまざまなことをつなぎ合わせるスポーツ」

 

フェリックスはパラスポーツをこのように捉えている。

 

「どうやって競技をしているんだ? パラスポーツを観た人はそんな感想を持つことだろう。“不可能”が“可能”になり、“可能”が期待を上回っていく驚きを感じるかもしれない。パラスポーツはそんなメッセージ性を持つ競技だと思う。日本はパラスポーツの浸透に向けてとてもいい方向に向かっている。僕たち現役のパラアスリートにできることは、最高の試合をすること。観客の皆さんには、純粋に“スポーツ”を楽しんで欲しいと思っているよ」

 

*本記事はweb Sportivaの掲載記事バックナンバーを配信したものです。


【Sportiva webサイト】

https://sportiva.shueisha.co.jp/

吉田直人●取材・文・写真(人物)text&photo by Yoshida Naoto   越智貴雄●写真(競技) photo by Ochi Takao

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