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2018.12.14 Sportiva テコンドー
インタビュー 伊藤力(パラテコンドー)

退路を断って成長。パラテコンドー・伊藤力が東京パラ初代王者を狙う

東京パラリンピックに向けて現在地を語ってくれた伊藤力選手

 

パラリンピック“初代王者”を狙う男がいる。パラテコンドーの伊藤力(セールスフォース・ドットコム/クラスは-61㎏、K44)だ。

 

パラテコンドーは東京2020パラリンピックで正式競技となる。ルールは頭部への攻撃が禁止されているが、それ以外は一般のテコンドーとほぼ同じだ。右上腕切断の伊藤は、2016年に競技を始めたばかりながら、2017年にはUSオープンで金メダルを獲得、同年の世界選手権でベスト8と結果を残し、早くも将来を期待される存在へと駆け上がった。

 

パラテコンドーの場合、突きはポイントにならず、有効ポイントは蹴りによる胴への打撃のみ。つまり、基本は足技の応酬となるため、フィジカル的にはブレない体幹と高い柔軟性が求められる。「でも僕、競技を始めたころは本当に体が硬くて……」と伊藤。中学で剣道、高校で硬式テニス、社会人でフットサル、仕事中の事故で右腕を切断したあとはアンプティサッカー(切断者によるサッカー)と、さまざまなスポーツに取り組んできたが、「足は上まで上がらないし、身体も曲がらない。一番しっくりくる言い方をすると、柔軟性は“ヤバイ”状態」だったと、苦笑いを浮かべる。

 

そんな彼も、いまや世界の猛者と戦うトップ選手に成長。「普段から健常者とともに稽古し、鍛えられるのが、パラテコンドーの魅力のひとつ」と語るように、伊藤も週の半分は都内や千葉県の道場などで、有望な大学生らと汗を流す。歩きながら足を上げてストレッチを行なう柔軟から始まり、空蹴り、ミット蹴りと続き、「この時点で、相当息が上がる」と言うが、稽古をこなしていくうちに柔軟性が増し、しなやかな上段蹴りも自然にマスターしたそうだ。

 

伊藤の場合、相手の攻撃を防御する際、残された右腕の一部と左手一本で防ぎ切る必要がある。義手を使ってトレーニングする選手もいるが、試合では義手は着用できないルールになっているため、伊藤は普段から着けていない。両腕のある健常者と稽古することで、反射神経や動体視力、相手の動きを先読みする力が養われ、実際の試合では楽に動けるメリットがあるという。

 

「ヨガやジム、上半身を鍛えるためのボルダリングなどのトレーニングに加えて身体を作っていますが、やはり大事なのは日々の稽古。やればやるほど強くなれる世界だし、障がいの有無に関係なく一緒に戦っていけるという感覚も、やる気につながっています」

 

パラテコンドーと出会ったのは、30歳の時。アンプティサッカーの関係者から、パラテコンドー界が選手を探していることを聞いた。

 

「当時はとくに競技者としてパラを目指すということも考えていませんでした。ただ、せっかく声をかけてもらったので、自分でもやれるならやってみようという感じでした」と伊藤は当時を振り返る。

 

ところが、そこから自身を取り巻く環境は、本人も驚くスピードで変化していく。

 

シドニーオリンピック銅メダリストで全日本テコンドー協会の岡本依子さんにツイッターで連絡を取ったところ、すぐに返信があり、誘われるまま強化合宿に参加することに。

 

「何がなんだかわからなかったけど、ミットに足蹴りした時の、パンッて決まる音とかは気持ちよかったです。岡本さんには、競技を始めるために環境のよい東京においで、と声をかけてもらいました。当時は北海道に住んでいて、小さな子どももいたので、すぐ心が決まるところまではいかなかったんです」

 

未来に迷いを抱いていた伊藤。だがある出来事が、その心に火をつけた。

 

強化合宿に参加した3カ月後の2016年4月のアジアパラテコンドーオープン選手権大会に、日本代表としていきなり出場することになった伊藤。初戦の相手は、当時世界ランク1位の選手。結果は自身も覚悟していた通り完敗だったが、大会後、彼の頭のなかには、こんな思いがよぎっていたという。

 

「始めたばかりの自分と、一番上の選手の実力差はどれくらいなのか確認しようと思って臨んでいました。もちろんボロボロにやられましたけど、4年間しっかり取り組めば、追いつけない距離ではないぞって感じたんです。ただ、稽古しなければ成長できない。だから、家族で東京に移住することに決めました」

 

退路を断つ大きな決断を下し、前途の通り、国際大会でも結果を残すようになった。その活躍に後押しされるように、新たにパラテコンドーを始める選手も少しずつ増えてきた。他の選手と同じ道場で稽古をするわけではないが、互いに刺激しあい、切磋琢磨できる環境は、アスリートにとって不可欠だ。

 

伊藤は「競技自体の面白さはもちろんのこと、“パイオニア”と呼ばれるようになって、日本に競技環境を作っていくことも前向きに捉えてやっていました。白紙に絵を描いていくような日々でしたから、競技者が増えるたびに喜びを感じていますね」と率直な想いを明かす。

 

パラテコンドーは2005年にWTF世界テコンドー連盟にパラテコンドー委員会が設置され、2009年に初めて世界パラテコンドー選手権が実施された新しいパラスポーツだ。東京パラリンピックでの正式採用決定を契機に、徐々に世界でも普及している。ヨーロッパでは、国が支援するなか、パラテコンドー選手として生活している選手も少なくない。伊藤のクラスでは、モンゴルやロシア、トルコなどの選手がランキング上位につけているが、近年は10代の選手が台頭しつつあり、世界の勢力図も刻々と変化しているという。

 

彼らの視線の先にあるのが、東京パラリンピックだ。競技レベルが向上するなか結果を残すのは容易なことではないが、「目標は金メダル。それで日本での競技の認知度を底上げしたい」と、伊藤の信念は揺らがない。

 

その東京パラリンピックでは、「K44」と「K43」クラスが統合された1クラスのみ実施され、体重別に男女とも3階級ずつ、計6個の金メダルをかけて争われる。出場するには各大陸予選や開催国枠といったチャンスがあるが、世界ランクでストレートインし、確実に出場権を手にしたいというのが本音だ。

 

現在は世界ランキング10位(2018年11月現在)で、「これを常に4位以内にいるようにしたい」と話す。

 

まずはポイント配分が高い、来年2月の世界選手権(トルコ)で勝利し、上位へのランクアップを目指す。

 

「最近、すごくいい感じで稽古ができている」と、自信を覗かせる伊藤。心身にさらなる磨きをかけ、東京パラリンピックまで突っ走るつもりだ。

 

*本記事はweb Sportivaの掲載記事バックナンバーを配信したものです。


【Sportiva webサイト】

https://sportiva.shueisha.co.jp/

荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu   村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

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