9月11日、神奈川県三浦市立初声小学校で、車いすバスケットボールの体験講座(社会応援ネットワーク主催。神奈川新聞社後援)が行われた。5、6年生約170名の児童が参加し、講師は湘南SCなどのチームに所属する選手たち4人。パラリンピック日本代表指定強化選手に選ばれている鈴木百萌子さん(湘南SC所属)も参加した。
子どもたちは体育館に入ってくると早速、ドリブルやシュートでウォーミングアップしている選手たちに釘付け。「おー」「すげー」と言った声が飛び交う。
授業が始まると、まずは司会役の松井昭二さん(湘南SC所属)が、子どもたちに質問をした。
「車いすバスケ、テレビとかで見たことある人は?」
半数ほどが手をあげる。
「じゃあ、やったことある人?」
さすがに体験したことがある子は誰もいないようだ。続いて選手の4人が障がいについて説明しながら、自己紹介する。
「僕は17歳の時にオートバイで転んで、背中の骨が折れて、車いすになりました。それ以来20年以上車いす生活。でも車いすバスケっていうすごい楽しいスポーツに出会えた。今日はみんなと楽しく勉強できたらなと思います」(湘南SC・長田龍司さん)
自己紹介に続いて、普段の車いすと競技用の車いすの違いや、車いすバスケのルールについて学習する。競技用の車いすにはブレーキがないこと、衝突した時に足がぶつからないようにバンパーがあること、タイヤがハの字型で抵抗が少なく回転しやすいことなどを、実際に選手たちが動きを見せながら説明する。
選手たちは障がいの程度によって持ち点があり、1チーム14点未満で構成されることなども説明。胸から下に麻痺がある一番重い障がいの場合は持ち点1点、という具合だ。
「僕は2.5点」「私は4点」と選手が口々に説明し、最後に松井さんが
「障がいが重いから出なくていいよ、じゃなくて、みんなが公平に出られる。素敵なルールでしょ」
と補足した。
ひと通り説明が終わると、いよいよ乗車体験だ。競技用車いす12台を使い、クラスごとに体験する。
車いすに乗ってまっすぐ前に進むためには、左右の腕に均等に力を入れて回さないといけない。はじめはぎこちなく操縦していた子どもたちだったが、2度目となるとだいぶ慣れたようで、くるっときれいにUターンする子も。
「緊張するー」「回るのすごい楽しい!」「めっちゃ難しくない?」
と口々に感想を言い合いながら、体験していた。
乗車体験の次は、クラス対抗でのミニゲームだ。各チームに選手が1人サポートに入り、7対7で対戦をする。
普段のバスケットボールと違い、腕の力だけではなかなかシュートが決まらず、子どもたちは「めっちゃムズい」と言いながらも、楽しそう。選手たちは1人だけ異次元の速さでコートを駆け回ってボールを操り、パスをみんなに回しながら、どの子もみんなシュートまで体験できるように、目を配る。シュートが決まると会場一体となって盛り上がった。
体験後の質疑応答では、「車いすバスケに出会ったきっかけは?」「練習以外の時は何をしているんですか?」「車いすで不便なことは?」など、子どもたちが積極的に質問を投げかけた。
選手たちは、
「かっこいいから、モテるだろうなと思って車いすバスケを始めた」などと冗談も交えながら、
「普段はみんなのお父さんお母さんと同じように仕事をしています。今は一人暮らしだけど不便なことはほとんどなくて、コンビニのサンドイッチに手が届かないことぐらいかな。でも周りの人が『取りましょうか』って声をかけてくれるから大丈夫」(長田さん)
と、身近なエピソードを交えて答えていた。プレーの迫力と、親しみやすさあふれる人柄とのギャップに、子どもたちも憧れと親近感を覚えたようで、授業後には選手にサインをお願いする子どもたちが大勢いた。
ある5年生の男子は
「全然前に進まなかったけど、選手たちはみんなより速く走っていてかっこよかった。パラリンピックで車いすバスケを見たくなりました」
と感想を話した。
「障がい者っていうとかわいそうなイメージがあるかもしれないけど、コートの上ではみんなと変わらない。そういうことを感じてもらえれば」
と中村恵美子さん(WING所属)が締めくくり、授業は終了。
この事業は、競輪の振興団体公益財団法人JKAの補助と、地域支援スポンサーである神奈川県教職員組合、かながわ教職員組合連合の支援を受け、社会応援ネットワーク主催で実施されており、今後も複数の学校で実施される予定だ。