■観戦がより楽しくなる、オススメ注目ポイント
パワーリフティング観戦の楽しみは選手たちの鍛え上げた筋肉質のボディや体重を優に超える重量を挙げる力強さはもちろんのこと、見どころは多い。
オススメのひとつは、「選手ごとに異なる試技前のルーティン」だ。「3秒間の試技」に向けて自身の集中力を最大化できるよう選手が工夫し作り上げたルーティンは個性にあふれ、見ごたえがある。頬を叩く、声を出す、目を閉じる、何かをつぶやく・・・。じっくり見ていると、緊張感も一緒に体感できそうだ。
また、選手は安定した試技を行えるよう、下肢をストラップベルト(1~2本)で台に固定できるが、自身の障がいに応じて巻き方を工夫することも重要な戦術だという。コーチとの連携も垣間見られ、上記の「ルーティン」とともに楽しむのも面白い。
もうひとつ、「3本目の試技」には特に注目しよう。試技は軽い重量から行われるため、後半に進むにつれバーベルは重くなる。重さは選手が事前に申告するが、一般的に1本目は確実に成功できる重量、2本目以降は自身の調子やライバルの動向を見ながら決めていく。特に3本目は自己記録や一発逆転を狙った挑戦的な設定となることも多く、最も見ごたえのある試技となる。日本記録や、もしかしたら世界記録誕生の瞬間に立ち会えるかもしれない。
■今大会の見どころ。東京パラへのステップにも
まずは、階級ごとの日本一を狙ったヒリヒリするようなライバル対決に注目だ。例えば、男子59kg級。昨年10月のチャレンジカップでは伸び盛りの光瀬智洋が勝利したが、日本記録保持者の戸田雄也が巻き返すか? 女子45kg級でも成毛美和が1㎏差で優勝したが、ベテラン小林浩美の奮起も期待される。日本新記録の誕生なども楽しみだ。
また、東京パラリンピック出場を目指す選手にとってはラストチャンスともいえる重要な大会だ。東京パラ代表への道のりはまず、体重階級別に設定された最低出場資格基準記録(MQS)の突破と、IPC(国際パラリンピック委員会)が指定する大会(パスウエイ大会)への出場という条件をクリアしなければならない。
今大会では、馬島誠(男子97kg級)、成毛美和(女子45kg級)、小林浩美(同45kg級)、山本恵理(同55kg級)、森﨑可林(同67kg級)らが、MQS突破を目指して「自己の限界」に挑む。
また、代表に内定するには、パスウエイ大会の結果から算出される東京パラ・ランキングで男女各階級の8位以内に入らねばならない(*)。このランキングで決定する160名に、各国の推薦選手から選ばれる20名を加えた計180選手だけが東京パラへの切符をつかむことができる。
(*)1階級には1カ国から1選手しか出場できないため、8位以内に同じ国の選手が複数ランクインしていれば、上位選手のみが選考されて順位が繰り上がるので、他国の9位以下の選手が選考されることもある。
今大会はパスウエイ大会ではないが、今後のパスウエイ大会(ワールドカップ)に向け、試合勘などを養う大切な調整大会と位置付けている選手も多い。例えば、西崎哲男(男子49㎏級)、樋口健太郎(同72㎏級)、宇城元(同80㎏級)、大堂秀樹(同88㎏級)、中辻克仁(同107㎏級)の5選手は今大会をステップに、世界ランキングのアップを狙っている。
なお、今大会は感染予防対策が徹底されて実施される。会場内は試技中の選手も含め、マスクなどの着用必須や手指、用具の消毒などはもちろん、競技会場に入れるのはPCR検査の陰性者のみで、選手や審判、コーチなど最低人数に絞られる。その他の運営スタッフは別部屋から遠隔操作で試合を進行し、報道陣も競技会場とは異なるフロアに設置されたスクリーンを通しパブリックビューイング形式で試合を取材することになっている。
コロナ禍での新たな応援スタイル、WEB配信による観戦で、“腕自慢”たちの緊迫感あるパフォーマンスを堪能しよう!
■大会スケジュール(予定)
<1/30(土)>
・11:00~13:00 女子(41kg、45kg、50kg、55kg、61kg、67kg、73kg)
・14:30~16:40 男子軽量級(49kg、54kg、59kg)
<1/31(日)>
・11:00~12:45 男子中量級(65kg、72kg、80kg、88kg)
・15:00~15:30 同重量級(97kg、107kg)
■WEB配信
https://jppf.jp/news/detail/id/531
(1/30、1/31とも放送開始10:45、競技スタート11:00)
【第21回全日本パラ・パワーリフティング 国際招待選手権大会 】
https://jppf.jp/news/detail/id/531
星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko 写真提供/日本パラ・パワーリフティング連盟