視覚に障がいのある選手を対象とする球技、ゴールボールの男女日本代表の競技力強化を目的にした、「2021ジャパンパラゴールボール競技大会」が2月6日から2日間にわたり、千葉ポートアリーナ(千葉市)で開催された。新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言下の今年は感染防止策が徹底され、無観客や海外チーム招へい断念など例年とは異なる形だったが、女子は11カ月ぶり、男子は14カ月ぶりの「実戦」経験を積む貴重な機会となった。
男子の田口侑治主将(リーフラス)は「海外選手と試合ができないなか、このような舞台で緊張感を味わうことができ、よかった」と感謝し、女子の天摩由貴主将(マイテック)は「(全試合)YouTube配信となり、多くの人に見てもらえるチャンスになった」と前向きに語った。
半年後に迫る東京パラリンピックには男女とも開催国枠での出場が決まっており、女子は2大会ぶりの金メダルを、男子も初出場ながら世界の頂点を目指している。今大会では昨年3月に発表された内定選手らを中心にチーム編成され、東京パラに向けた強化の成果も注目された。
■急成長の若手が躍動した男子。「伸び率が半端ない」
男子は日本代表AとBに分かれ、紅白戦2試合を行った。初日は、前半序盤にBチームのレフト、辻村真貴(コカ・コーラボトラーズジャパン)による先制後、一進一退を繰り返したが、Aチームがレフトの宮食行次(サイバーエージェントウィル)とライトの佐野優人(順天堂大学)の多彩な攻撃で逆転に成功。後半も連続得点で突き放し、10-3で快勝した。
2日目も同カードが行われた。またもBチームが前半序盤、伊藤雅敏(茨城県立盲学校)のライトからのクロスで先制するも、前半終了間際に宮食の移動攻撃で同点に追いつくと、後半は山口凌河(関彰商事)と交代で入った佐野も加点し、5-1で2連勝を飾った。
連日、安定した守備を見せAチームを率いたセンターの田口主将は、「得点はなかったが、山口もしっかりコースを突くスローで攻撃に貢献した。宮食もだが、佐野の攻守にわたる存在感も光った」とチームワークを強調。延期となった東京パラに向けては、「金メダル獲得に向けて全力を出し尽くす目標は変わっていない。開催を信じてモチベーション高くやっていくことが一番。コロナ禍でもオンラインでミーティングを重ね、チームにプラス思考の声掛けができた。昨年から始めたウエイトトレーニングで瞬発力や体幹が増した実感もある」と延期をバネに力を伸ばしている現状を語った。
2015年1月からヘッドコーチとして女子代表を率い、昨年10月からは「日本代表総監督」として男子代表も指揮している市川喬一氏も、「若手がガンガン動いていたので、非常によかった」と評価。強化体制の再編により男子代表もNTC(ナショナルトレーニングセンター)イーストでの合宿機会が増えるなど、「1年前に比べて、チーム内で力の差が変化している。急成長した選手の伸び率は半端なかった」とその進化を語る。
競技歴約3年で、攻撃陣のエースとして期待される宮食もその一人だ。「金メダル獲得という意味では、日本はダークホースという立場になるだろう。でも、(国際試合がなく)会えない期間に、たぶん僕らが世界でいちばん成長しているチームだと思う。そのギャップで、一気に頂点まで駆け上がりたい」
また、総監督自らがマンツーマンで指導し、「この短期間でよく成長したと感じる」という佐野は、「僕自身も去年と比べて、どんどん成長している部分があると感じるし、もっと努力したい。今年の夏、(東京パラが)開催されたときに結果を出すための準備をしたい」
日本男子の世界ランクは現在10位だが、総監督は「スピーディーな移動攻撃や切り返しなど、ここまで動けるチームは世界にはない。十分に戦えるレベルにある」と分析。初陣で世界を驚かせる準備は、着々と進んでいる。
星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto