パラリンピックは東京大会で5回目となる藤本怜央選手(中央)。「ベテランとして、大黒柱として、精神的支柱として、苦しい時もリーダーシップを発揮しながら、若手が迷いなく伸び伸びとできる雰囲気をつくる、存在でありたい」
■男子はブラック対ホワイトで対戦。ベテランと若手の切磋琢磨で進化中
第2試合は、男子強化指定選手が「ブラック」と「ホワイト」の2チームに分かれ対戦した。月1回の合宿などを通し、互いによく知る相手同志のため、試合前半は一進一退の攻防が展開された。前半は終了間際に古澤拓也(パラ神奈川SC)が得点し、「ホワイト」が2点をリードし、21-19で折り返した。
ゲームは第3クオーターから大きく動いた。「ブラック」がベテラン、藤本怜央(宮城MAX)による4本の3ポイントシュートなどで逆転し、41-34とリードを広げた。第4クオーターは一転、「ホワイト」が古澤の3ポイントや、鳥海連志(パラ神奈川SC)らがスピード感あふれるオフェンスで猛チャージを見せたが、「ブラック」が54-53で逃げ切った。
京谷和幸HCは、紅白戦のため戦力を半分に分けたことで、目指すプレーは「やりにくかった」としたうえで、「予め出した指示を踏まえ、選手たちがコート上で考えてやってくれたので、100点中80点くらい」と評価し、特に、「オフェンスの創造力は各段に上がっている。若手のスピードが上がり、速い動きからシュートまで持っていけた」と収穫を挙げた。課題には「フリースローの決定率」を挙げ、「本番までに高めていきたい」とした。
「ブラック」勝利の起点となり、両チーム合わせ最多となる17得点の藤本は、「初めて使う(会場な)のでリングやフロアの硬さを確認しながらのプレーだった。硬くてなかなか入らず、フィーリングの合う位置が3ポイントのところだった」と振り返り、「トランジションの速いバスケの中で、(自分が若手と)同じトーンで戦えているのはトレーニングの成果」と手ごたえも口にした。
「ホワイト」チームでは、鳥海が最多となる16得点など攻守にわたって強い印象を残した。特に後半は地元クラブのチームメートでもある古澤との連係がより強くかみ合うようになり、ゴールを量産。「(古澤が)一番やりやすい方法でゲームコントロールできるよう、普段から密にコミュニケーションをとることを意識している」と振り返った。
「ホワイト」チーム最多16得点を記録した鳥海連志選手
この日は「ブラック」に入った日本代表キャプテンの豊島英(宮城MAX)は、「(代表)チームとして、やるべきことやスタイルはずいぶん前から確立されている。今はどう遂行するかという時期。守備は相手にプレッシャーを掛けられたが、プレッシャーがある中での得点力が課題として明確になった」とチーム全体を振り返りながら、東京パラに向けてさらなる成長を誓っていた。
男女とも、コロナ禍によって国際大会から遠のいており、試合勘やプレッシャーの中でのシュート、それぞれ特徴を持ったさまざまな選手への対応力などに影響が感じられた。
不特定多数の人との接触も控えなければならない今は、国内での対外試合も難しく、合宿以外はそれぞれの地元で個人トレーニング主体となる選手も少なくない。そうした環境の中で、選手個々の意識を高め、創意工夫でどう練習の強度を上げ、実戦感覚を磨いていくかが、これからの強化の大きなポイントとなるだろう。
【日本車いすバスケットボール連盟公式YouTubeチャンネル】
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星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto