田中 リオパラリンピックはテレビで観ましたよ。すごくバスケとしてのレベルが高いし、かなりのスピードでぶつかったり車イスごと倒れこんだり、プレイがとにかく激しい。思わず「危ない!」って声が出ました。
藤澤 パラリンピックは特別に当たりが厳しいですからね。
田中 外国にはすごく大きい選手もいましたよね。やっぱりサイズのアドバンテージが出やすいんですか?
藤澤 トルコには2mを超える選手もいました。車イスはジャンプもスライドもできないので、そのサイズの選手にインサイドを取られたらキツイですね。
田中 同じように車イスに乗ってても、いろんな障害の選手が出場していたように思ったんですけど。
藤澤 車イスバスケって、障害の程度や種類によって選手一人ひとりに1・0点から4・5まで持ち点が設定されるんですよ。それにコート上の5人の合計が14点以内というルールがあるので、障害の異なる選手が出ることになるんです。僕は障害が重い方で2・0です。
田中 高さじゃなくて、障害で決めるんですね。
藤澤 そうです。僕は腹筋もすごく弱いので、(お腹を見せながら…)ほら、だるんだるん(笑)。車イスを漕ぐのは問題ないんですけど、身体を前に倒したり横にひねったりすると簡単にバランス崩しちゃうんです。
田中 さっき車イスを借りて少し一緒にやらせてもらいましたけど、すごいスピードでまったくついていけなかったですよ!
藤澤 僕、代表では遅い方なんですよ。足の踏ん張りも腹筋も利かないから、前傾して漕げないですし。
田中 ほとんど腕だけでプレイしているってことですね。腕は乳酸が溜まりまくって、かなり疲れますよね?
藤澤 はい。思いっきりプレスで走ってフルブレーキして、パスもらってシュートを打つってことをゲームの間ずっとやらなきゃいけないですからね。
田中 疲れるとシュートにめちゃくちゃ影響出そう…。
藤澤 影響します、します。終盤はいつも苦しいです。
田中 手のひらとかは?
藤澤 皮が厚くなったのか今は大丈夫ですけど、始めた頃は車イス操作の練習で皮がむけてボロボロになりました。
田中 車イスからのシュートも難しかったです。
藤澤 いやいや、普通に届いてましたよ。しかもスリーが(笑)。下半身が使えないから、バスケ経験者でも初めての人は届かないんですよ。腕だけで投げようとしてフォームがバラバラになるんです。フォームも自然で乱れていなかったですね。
田中 いや~シュート打つだけでも怖かったですよ。反動で後ろに倒れるんじゃないかと(笑)。
(「語ろう、バスケのこと④」に続く)
【プロフィール】
藤澤潔さん
ふじさわ・きよし●1986年7月26日、長野県出身。埼玉ライオンズ所属。ポジション:シューティングガード。2005年世界ジュニア準優勝の黄金世代のひとり。安定したシュートとディフェンス、そしてヘアスタイルは何があっても乱れない。
田中大貴さん
たなか・だいき●1991年9月3日、長崎県出身。アルバルク東京所属。ポジション:シューティングガード。東海大時代はMVPを始めとする数々のタイトルを獲得。Bリーグ初代王者を目指すアルバルクの顔。オールラウンダーが魅力。
『リアル×リオオリンピック~井上雄彦、熱狂のリオへ~』(集英社)より転載
【詳細はこちら】
http://books.shueisha.co.jp/CGI/search/syousai_put.cgi?isbn_cd=978-4-08-780806-3&mode=1
撮影/細野晋司