藤澤 今年の夏はアメリカに練習に行っていたそうですね。
田中 NBAのサマーリーグがラスベガスであるんですけど、自分のことを見てくださっているアメリカのコーチの方がそこにいるというので行ってきました。ちょうどサマーリーグを観に行くという、うちのHCとACと一緒に行ったんです。
藤澤 どんな練習をされてきたんですか?
田中 昨シーズンの自分のプレイをまとめた映像を前もって向こうへ送って、メニューを組んでもらって、毎日キッチリ、マンツーマンでやってもらいました。例えば「ドリブルのつき方が弱いから、もっと強くつけ!」とか、本当にシンプルなことから指摘を受けましたね。
藤澤 エエッ!? 田中選手のドリブルが弱いなんて、観戦してて感じたことないですよ!
田中 自分も言われたのは初めてです(笑)。そのコーチはNBAのチームに所属していて、日頃NBA選手をワークアウトしているんで、その基準で比較するとドリブルが弱いと。
藤澤 僕もドリブルの強さに関しては誰かに何かを言われたことないですね。強くつくことの利点はなんでしょうか。
田中 強くつくとそれだけ速くボールが返ってくる。だから次の行動へのスピードが上がる、ということだと思います。
藤澤 強くつくように僕もトライしてみます、今日から。
田中 やっぱり上のレベルに行けば行くほどプレイの質が高くなって、チャンスも少なくなる。「今だ!」っていう一瞬にいかないとダメだということを痛感しました。
藤澤 あらためてドリブルやパスのようなバスケの基礎を見直すことも大切なんですね。シュートについてはどうでしたか?
田中 最先端の練習方法やシュートのパターンなんかを教わりましたが、技術的にはとくに言われなかったですね。でも「もっとリングにアタックした方がいい」と。
藤澤 リングにアタック?
田中 例えばピック&ロールを使ったときに、センターが相手になるとしますよね。センターは自分のスピードを警戒して、スペースを取って下がってディフェンスをしてきます。そのタイミングで自分はどちらかというと、ジャンプシュートを選択していることが多かったんです。そうじゃなくて、スピードのミスマッチを活かして、もっとアタックしたほうがいいと、そう言われました。
藤澤 スピードで勝っているんだからそれで勝負に行けと。
田中 自分はプレイスタイル的にピック&ロールを使うことが多いので、その基本的な攻め方についてのアドバイスですね。
(「語ろう、バスケのこと⑤」に続く)
【プロフィール】
藤澤潔さん
ふじさわ・きよし●1986年7月26日、長野県出身。埼玉ライオンズ所属。ポジション:シューティングガード。2005年世界ジュニア準優勝の黄金世代のひとり。安定したシュートとディフェンス、そしてヘアスタイルは何があっても乱れない。
田中大貴さん
たなか・だいき●1991年9月3日、長崎県出身。アルバルク東京所属。ポジション:シューティングガード。東海大時代はMVPを始めとする数々のタイトルを獲得。Bリーグ初代王者を目指すアルバルクの顔。オールラウンダーが魅力。
『リアル×リオオリンピック~井上雄彦、熱狂のリオへ~』(集英社)より転載
【詳細はこちら】
http://books.shueisha.co.jp/CGI/search/syousai_put.cgi?isbn_cd=978-4-08-780806-3&mode=1
撮影/細野晋司