幼少期の悪性腫瘍による上肢障がいを抱えながらも、日本屈指のトップ・パラアスリートとしてさらなる高みをめざす芦田創選手。『メンズノンノ』11月号ではメイン種目である走幅跳や東京パラリンピックへの思いを熱く語ってくれているが、ここでは競技以外の彼の知られざる一面にもフォーカス。ファッションやライフスタイルについて、メンズノンノモデルの三宅亮輔がインタビューしてきた。
三宅 芦田選手は、日々の走幅跳のトレーニングの他に何か趣味のようなものはあったりするのでしょうか? オフの時間の楽しみとか。
芦田 趣味と呼べる趣味はないんですけど、しいてあげるならマンガですね。空いた時間は結構読んでますし、遠征に持って行くこともあります。
三宅 そこはやっぱりスポーツもの?
芦田 いえ、スポーツマンガはほとんど読まないんです。むしろ恋愛モノが好き(笑) 『いちご100%』(集英社/全19巻)が一番のお気に入りです。あとは『涼風』(講談社/全18巻)とか『君のいる町』(講談社/全27巻)なども好きでよく読んでいましたね。
三宅 意外すぎる!(笑) なぜ恋愛ものなんですか?
芦田 オフの時間はきっちり陸上から頭を切り離したいので、あまり深く考えず、ストレスなく読めるところがいいのかもしれません。それと、青春をもう一度、じゃないですけど、ちょっと自分を投影する楽しみもありますね(笑)
三宅 『いちご100%』、今度読んでみます(笑)。ちなみにファッションはどうですか? スポーツウェアを着ることがほとんどだとは思いますが、私服のこだわりなどがあれば教えてください。
芦田 実は僕、ミニマリストなんです。なるべく普段やらなければいけない選択肢を減らしたい方なので、服も最低限のものしか持たないようにしています。白いTシャツ2枚にパンツ2本、あとは仕事で着るスーツ。クローゼットの中は本当にそれだけです。スーツは私服でもセットアップとして着られるように光沢ないものを選んでいますね。
三宅 ミニマル度合いがすごいですね……
芦田 だからこそ自分が納得のいく、いいものを選びたいという気持ちはあります。とくに革靴は好きですね。以前にロンドンで買ったポール・スミスとジョン・ロブのコラボのシューズは手入れしながらすごく大切に履いています。
三宅 ミニマリスト、ということは部屋の中もかなりシンプル?
芦田 はい。布団と空気清浄機とプロジェクターのみ。常温の水しか飲まないので冷蔵庫もないです。漫画もレンタルか漫画喫茶なので部屋には置いていません。物が多かったり部屋がごちゃごちゃすると心の余裕がなくなるので。
三宅 そこまで徹底されているとは驚きです。その部屋の中で大切にしているルーティンはあるのでしょうか?
芦田 一番気持ちいいのが、朝起きて窓を開けて、サッと掃除をすること。物がないので30秒くらいで終わるんです(笑)。ちなみに、部屋にはリオのメダルと世界選手権のメダルがかかっているのですが、何もないのですごく映えるんですよ。
三宅 そんな究極にシンプルなライフスタイルも、もちろん全ては競技のため、ということですよね。
芦田 もちろん。普段から自分が表彰台の一番上に立つイメージしか想像しないようにしています。それを叶えるためには、自分が圧倒的な実力を備えなければ。世界記録まであと40cm。難しいですけれど無理な数字ではないと思っていますし、まだまだ自分には伸びしろしかないと思っています。だから普段の生活から競技に集中できる環境を作っておきたいというのはありますね。
三宅 芦田選手の考える、理想のアスリート像とは?
芦田 常に結果を追い求め続ける人、ですね。
三宅 そうなれる自信はありますか?
芦田 ありますね。だって、めっちゃナルシストなんですよ、僕(笑)。自分の存在、実力を証明していきたいですし、これからも自分にしかできないことを突き詰めていきたい。常日頃からスポーツに障がいは関係ないと思っていますが、そういうメッセージを世の中に発信するためにはそれ相応のパフォーマンスをしなければいけないと思っています。
【プロフィール】
芦田 創さん
あしだ・はじむ●1993年12月8日、大阪府出身。5歳で右腕に悪性腫瘍が見つかる。中学3年時に病状の悪化をきっかけに開き直って陸上を始め、高校時代は400m走でインターハイを目指すほどの実力者に。その後パラ陸上の世界に入り、メイン種目を走幅跳に変更。2016年のリオ・パラリンピックでは4×100mリレーで銅メダルを獲得。
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Photos:Tekemi Yabuki[W] Composiotion & Text:Kai Tokuhara