「国籍や性別、障がいの有無に関わらず、誰もが夢を抱き、挑戦できるきっかけになる機会を創りたい」――そんな思いに共感した、世界で活躍するトップアスリート4人とNECは8月18日、「NEC +CHALLENGE PROJECT(プラスチャレンジ プロジェクト)」を発足させた。
タッグを組むアスリートは車いすテニスのレジェンド、国枝慎吾とパラ陸上走り幅跳びの世界女王、中西麻耶、そして、ともに東京オリンピックメダリストで、スケートボードの堀米雄斗、スポーツクライミングの野中生萌だ。同日に都内で開かれた発表会見に出席し、プロジェクトにかける思いや抱負を語った。
プロジェクト発足の背景について、NECシニアディレクター コーポレートコミュニケーション統括の岡部一志氏は「NECは30年以上にわたる車いすテニスへのサポートをはじめ、さまざまなスポーツへの協賛活動などを行ってきた。そして、NECグループが掲げる『安全、安心、公平、効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指す』というパーパス(存在意義)に、選手の皆さんにも共感いただき、一緒に取り組もうとプロジェクトを展開することになった」と説明。
国枝は「僕も日ごろから『挑戦』を掲げて活動している。そこにマッチするプロジェクトなので、楽しみ」と笑顔を見せ、中西は「日ごろから、『地方から世界へ』という目標で活動しているが、地方では情報量や環境設備の少なさなど壁にあたってきた。NECさんに力を必要とする人たちの背中を押してもらえるのは弾みになるし、私も、この力を待っていました。一緒に活動できることをうれしく思う」とコメントした。
堀米も「スケートボードは少しずつ認知度が上がってきているが、このプロジェクトを通じて競技の良さをもっと広めていきたい」と歓迎し、野中は「私が挑戦することで、世界で見てきたものを共有し、それぞれのエネルギーにつながれば」と意気込みを語った。
つづいて行われたトークショーでは、プロジェクト名にちなみ、「チャレンジするときに、自分を奮い立たせる言葉」がテーマになった。国枝は長年、大切にしてきた「オレは最強だ!」という言葉を挙げた。「今日でたぶん1万1回目くらい書いた」と場を和ませながら、「それぐらい常に自分に言い聞かせている言葉。(金メダルを獲った)東京パラリンピックの決勝戦でも、鏡の前で何度も自分に言った」と、自信をもつことが競技活動の支えだと説明。一方で、「コート以外では謙虚でいることも大事」と、常に自身に足りないものを追求し練習することの大切さも付け加えた。
その言葉に共感を示したのは堀米だ。「『オレは最強だ』はその通りだなと思う。僕も自分に自信をもって、がんばりたい」と感化された様子。自身が挙げたのは、「まだこれから」といった意味の「Not done yet」で、「満足したら終わり。その先を求め、常に自分を進化させたい」と、国枝の考えにも通じる姿勢を示した。
中西が掲げたのは「人生楽笑」。その意味は、「嫌な思い出でなく、楽しい思い出ばかりを残していこうという思い。私の経験上、楽しんだら勝利がついてきたので、常に楽しもうと思っている」と説明。すると、野中が「そんな思考はなかった。刺激をもらった」と話した。自身はスランプのときに心に刺さった言葉として、「今に見てろと笑ってやれ」を選び、「この先もいろいろな壁があると思うが、笑っていられる余裕をもちたい」と話した。
プロジェクトの今後の予定としてはまず、11月に2つのイベントを開催し、選手が講師となって競技体験会やトークショーを行って、「トップアスリートと一緒に挑戦を楽しむことで、誰もが夢や仲間ができる機会を創出」する。第1弾は「国枝・中西コラボ スポーツチャレンジ」として11月12日(土)に、第2弾は「堀米・野中コラボ スポーツチャレンジ」で同19日(土)に行われる。
参加者は年齢や性別、障がいの有無などにかかわらず幅広く募る予定で、詳細は後日、同プロジェクトの公式サイトで発表される。
イベントに向けて、「ちょうどジュニア選手たちと触れ合うような(普及)イベントにも取り組む時期かなと思っていたので、すごく楽しみ」と国枝が話せば、中西も「自分の経験を生かして、皆さんのお悩みをいくつ解決できるか、私自身も一緒に挑戦しつつ、皆さんの背中も押したい」と意気込んだ。
堀米も「スケボーには競技だけでない楽しみ方もあると、まずは子供たちに伝えたい」と言い、野中も「クライミングは年齢や性別を問わず誰でも楽しめる。まずは経験してもらい、次のチャレンジの一歩につづく機会を提供したい」と抱負を語った。
会見の終わりには、7月のウインブルドンで初優勝し、車いすテニスでは男子初となる4大大会制覇とパラリンピック金メダルを合わせた「生涯ゴールデンスラム」を27年のキャリアをかけて成し遂げた国枝に、サプライズで他の3選手から花束が贈呈された。
国枝は「東京パラリンピック後に辞めなくてよかったと、(ウィンブルドンで)勝った瞬間にまず、そう思った。こうしたキャリアを歩めることを幸せに、誇りに思う。育ってくる若手の勢いに負けないように、車いすテニス界をNECさんと一緒に盛り上げていきたい」と力を込めた。
NECと4選手の熱い思いが重なって生まれ、展開される共同プロジェクト。多くの人の挑戦を後押しし、スポーツを通してそれぞれの毎日に「プラス」が増えていくきっかけの機会となることを願う。
https://jpn.nec.com/ad/plus-challenge/index.html
文/星野恭子