若きパラアスリートと団体を応援する、新たな支援プロジェクトがスタートした。サントリーホールディングスは1月18日、都内で発表会見を開き、昨年9月に立ち上げ募集していた「サントリー チャレンジド・スポーツ アスリート奨励金」の採択先を決定し、発表した。
同奨励金は全国のパラスポーツの普及・発展を目指し、47都道府県と10の政令指定都市にある障がい者スポーツ協会から推薦された、若手アスリートや競技団体などを助成するプロジェクトで、今年が初年度となる。
会見では計52の都道府県や政令指定都市から、個人部門に66名、団体部門に障がい者スポーツ協会や競技団体など34団体が選出され、総額2600万円を支給すること、年内に追加の採択も予定され、総額は2850万円を見込んでいることが発表された。
主催者である同社の福本ともみCSRアンバサダーはプロジェクトの目的について説明した。
「奨励金を一助としながら、一人でも多くの人がアスリートとしてのチャレンジに一歩踏み出し、チャレンジをつづけて活躍してほしいと願っていますし、それによってチャレンジド・スポーツがさらに発展、振興し、ひいてはすべての人が輝くダイバーシティ社会の実現に貢献していければと思っています」
同社ではこれまで、2011年の東日本大震災の復興支援活動として同年に、被災した三県(岩手・宮城・福島)を対象とした「サントリー東北サンさんプロジェクト」を立ち上げ、活動を続けている。その一環として2014年にはパラスポーツやパラアスリートを支援する、「チャレンジド・スポーツ支援」も発足させ、2015年から2020年までの6年間で、個人部門194名、団体部門129団体への助成実績を持つほか、学校での体験教室などを実施してきた。
今回、新たにスタートした「サントリー チャレンジド・スポーツ アスリート奨励金」プロジェクトでは対象地域を東北三県の枠を超えて全国へと拡大するとともに各地の障がい者スポーツ協会と連携していくこと、さらに個人部門は未来を担う若手アスリートを対象としていることなどが特徴だ。対象となる若きアスリートは25歳未満で競技歴10年未満(活動中断期間は除く)を目安とする。
福本CSRアンバサダーは、「若い人たちにスポーツにチャレンジしてほしいし、夢をもってもらいたいと思った」と意図を語った。
つづいて、「チャレンジド・スポーツ支援」から継続して同プロジェクトを共催する団体、日本フィランソロピー協会の髙橋陽子理事長は同プロジェクトを通して、「全国で世界に羽ばたくアスリートが育つことを期待しています。それが地域の皆さんの誇りや愛情、または夢や人生への勇気づけになると確信していますし、元気で温かい化学変化も期待しています」と話した。
プロジェクトの後援団体である日本パラスポーツ協会(JPSA)の髙橋秀文副会長はまず、同協会が東京パラリンピックの成果を踏まえ、「競技力の向上」と「パラスポーツの普及・振興」の両面をさらに伸ばしていくことで活力ある共生社会の実現を目指すために2年前から「2030年ビジョン」掲げていると話し、「その達成のためのキーワードが『若手選手の発掘・育成』と『パラスポーツ普及の全国展開』の2つであり、このプロジェクトはこの両面を具体的に展開するもの」と感謝した。さらに、今回の採択者に対し、「将来的に、パラリンピックやデフリンピックなど国際的な競技会で大活躍するとともに、全国各地域のスター選手や団体として、地域の活性化や地域創生の一役を担ってくれることを大いに期待しています」とエールを送った。
このあと、同社の小林章浩CSR 推進部長が奨励金採択先である、全66名の若手アスリートと、34の団体名を発表。採択されたアスリートを代表して、東京都のシッティングバレーボール選手、波田みかのコメントを、東京都シッティングバレーボール協会山田佐智子総務委員長が代読した。
「成し遂げたい夢、目標であるパリパラリンピックの切符を獲得するためにも奨励金を活用し、積極的に練習や合宿に参加したいと思っています。練習や合宿を重ねて技術を向上させ、チームを勝利に導ける選手になりたいです」
また、団体として採択された東京都シッティングバレーボール協会の別府遥副会長は、「パラアスリートを育成するためには、東京パラリンピックの開催によって関心が高まっている東京都を拠点として、各地域にチームがあることが理想です。競技の裾野を広げるために主催している『SVFカップ』は個人で参加できるという特色ある大会で、今後全国各地で実施予定です。今回の奨励金は4月に開催予定の『SVFカップ』の運営費として活用し、競技者同士の交流や競技向上とともに、競技を周知させる場として大会を成功させたいです」と決意を語った。
最後に、同社所属で、陸上競技とトライアスロンでパラリンピックに4大会連続で出場した谷真海は、自身の20年にわたる競技生活を踏まえ、採択者に応援メッセージを送った。
「アスリートとして上を目指していこうとする最初の段階での練習環境の大切さや強化のための資金が欠かせないことを痛感してきました。今回の奨励金はアスリートだけでなく、支える団体も対象であることも特徴的です。私のふるさとである東北三県の支援から全国に広がること、そして、アスリートがいろいろな要因であきらめることがなく夢を目指し続けることのお手伝いができることを嬉しく思っています。この中から多くのパラリンピアンが生まれることを願いますし、競技を通して自信をつけ、それぞれのアスリートが各地域でダイバーシティ実現の存在となって活躍してくれることを期待しています」
来年にはパリパラリンピックが、2025年には東京でデフリンピックの開催も決まっている。東京パラリンピック閉幕から1年以上経ったタイミングで、さらなるパラスポーツの普及・発展を後押しする新たなプロジェクトの始動は心強く、その動向と成果に注目していきたい。
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文/星野恭子