有料開催やエンターテインメント性を高めた演出など大会運営にさまざまなチャレンジをしてきた日本ブラインドサッカー協会(JBFA)が、また新たな試みを行う。「オンライン観戦に特化した大会」を実施し、オンラインだからこそできるブラインドサッカー観戦のさらなる楽しみ方の提供などに挑む。
チャレンジの場となる大会は9月24日に開催する「LIGA.i(リーガアイ)ブラインドサッカートップリーグ2023」第2節。会場での現地観戦は実施されず、YouTubeライブ配信だけでしか観戦できない。トップリーグの2試合を無料で、全国どこからでも自由なスタイルで観戦できることはもちろん、実況解説などもじっくり楽しむことができる。
トップリーグLIGA.iは昨年創設されたJBFAの新リーグで、従来からある日本リーグとは一線を画し、競技力や競技普及活動への貢献度など一定の参加条件をクリアしたチームのみが出場できる。昨年は4チームが参加して3節にわたる総当たり戦の結果、埼玉T.Wingsが初代王者に輝き、2位にfree bird mejirodai、3位はパペレシアル品川、4位にbuen cambio yokohamaで初年度を終えた。
2季目の今年も、同じ4チームが参加して7月22日に開幕し、品川区立総合体育館(東京都品川区)で行われた第1節では第1試合で連覇を狙う埼玉T.Wingsがbuen cambioを2-0で下し、第2試合ではfree birdがパペレシアルに1-0で勝利したが、4チームの得失点差からT.Wingsが暫定首位に立った。
オンラインで配信される第2節は、第1試合ではともに第1節で黒星を喫したbuen cambioとパペレシアルが、第2試合ではともに白星発進のfree birdとT.Wingsが顔を合わせる。どのチームにとっても「負けられない試合」だけに、1点を争う白熱の試合が期待される。
▼9月24日: LIGA.i2023 第2節 YouTubeライブ配信ページ
・第1試合(15:30キックオフ)
buen cambio yokohama vs パペレシアル品川
オンライン観戦はこちらから
https://www.youtube.com/live/eLXPZ5sZeV4?si=jixkDxn2g02vTFUx
・第2試合(18:00同)
free bird mejirodai vs 埼玉T.Wings
オンライン観戦はこちらから
https://www.youtube.com/live/zeRX89FSV4s?si=wK7HKUJpYz80pNP8
第1節は約850人の観客を集めた。第1試合はT.Wingsが後半4分、相手オウンゴールによる先制から2分後にエース、菊島宙が決勝弾をたたき込み、2-0と突き放した。菊島はシュートシーンを「ボールが後ろからすごい速さできた。これはいけるかなと思って脚を出してみた。仲間のボールをかっさらってシュートを打って、決められてよかった」と笑顔で振り返り、「きつい試合だったが、(チームで)思った通りのプレイができて勝てた」と、連覇を狙う2季目の白星発進を喜んだ。
菊島は女子日本代表でもチームを牽引するエースで、8月に女子カテゴリーとしては初開催された世界選手権でも大会通算6ゴールで日本の準優勝に大きく貢献した。男女混合の国内大会でもゴールへの鋭い臭覚で得点を量産しているストライカーで、昨年のLIGA.iでも得点王(通算5得点)とMVPを受賞している。今季もどれだけのゴールで魅せてくれるか楽しみだ。
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第2試合は前半4分、ルーズボールの競り合いからボールを奪ったfree birdの丹羽海斗がドリブルで抜け出し、相手守備陣を振り切って先制。その後、両チームとも相手ゴール前に再三迫ったがネットを揺らすことはできず、1-0でfree birdが逃げ切った。
決勝点を挙げた丹羽は、「(ボールを)最後に回収したときに空いているところが見えた。相手が来る前に早く打ち切ろうと思ったら、入った」と振り返った。さらに、「(今季は)新しい仲間が増え、新しいfree birdを作っていくという1年。このチームで大事な1戦を獲れたことが一番嬉しかった」と手応えを口にした。
free birdは実際、女子代表でも活躍する若杉遥が前後半とも先発出場する、昨年とは異なるスタイルを見せた。丹羽は、「新しい形の一つがそれ。やってきたことを楽しんでやれれば、自ずと結果がついてくると思う」と話し、若杉については「ガッツが違う。真正面から当たることを恐れないし、ぶつかったあとも強い。尊敬している」。昨年2位から初優勝を目指すfree birdの多彩な戦術も見どころだ。
なお、菊島や若杉以外にも、LIGA.i出場の4チームにはそれぞれ日本代表で活躍する選手たちが所属しており、LIGA.iは彼らのプレイを見るチャンスでもある。
男子日本代表は先の世界選手権で過去最高の5位に入賞し、目標だった来年のパリパラリンピック出場枠獲得をグッと引き寄せた。パペレシアル品川は、その5位決定戦で貴重な決勝弾を放った川村怜キャプテンや守備の要、佐々木ロベルト泉が牽引し、今季は虎視眈々とトップををうかがう。
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また、昨季4位から巻き返しを狙うbuen cambioでプレイする38歳の後藤将起も世界選手権メンバーだ。実はA-pfeile広島BFC所属だが、「国内トップのLIGA.iに出たい」とbuen cambioに今季7月から9月まで期間限定で移籍した。攻守にわたって体を張るアグレッシブなプレイが持ち味で、今年2月に男子日本代表入りしたばかりだが、世界選手権でも先発に定着した。
後藤は第1節の内容について、「ボール保持率はbuenが長かった。ただ、最後、シュートの決定率では埼玉が高かった。僕もシュートを打てるところはあったが、(ボールを)持ちすぎてシュートに行けなかったのが、差が出たと思う」と反省を口にしたが、ピッチを縦横に走り回る姿は目を引いた。
サッカーは小2から高校時代までフォワードで活躍した。社会人となり31歳で特発性の視神経炎に襲われて視力を失ったのち、33歳でブラインドサッカーと出会った。最初は運動不足解消を目的にブラインドマラソンやブラインドテニスなど多様な競技を試すなかで、「一番しっくりきた」のが長いサッカー経験を生かせるブラサカだったという。「走り回って、汗をかくタイプ」という後藤の豪快な得点シーンにも期待したい。
なお、LIGA.i2023の最終決戦となる第3節は12月17日、東京のフクシ・エンタープライズ墨田フィールド(東京都墨田区)で有観客開催(有料)が予定されている。T.Wingsが連覇に向かって突っ走るのか、あるいは新たな王者が歴史を刻むのか。最後まで見逃せない。
LIGA.i ブラインドサッカートップリーグ2023大会特設HP
https://liga-i.b-soccer.jp/
写真・ 文/星野恭子