中国・杭州で開催されたアジアパラ競技大会。10月24日、車いすバスケットボール女子日本代表は予選リーグの大一番、地元の中国と対戦した。2、3Qで大きく引き離され、4Qは互角に渡り合ったものの、33−59で今大会初黒星を喫した。今回は敗因を分析するとともに、一方で日本が強敵相手にも貫き通していたある姿に着目した。
4カ月前のリベンジとはならなかったーー。6月の世界選手権では準々決勝で対戦し、52−60で敗れはしたものの一時は逆転に成功するなど互角に渡り合った相手、中国。その雪辱を果たし、2013年以来となる中国戦勝利を飾ろうと意気込んで臨んだ一戦だった。
1Qの前半は珍しく中国のシュートがリングに嫌われる時間が続き、相手にとっても苦しい時間帯だったことは中盤に早くも中国が最初のタイムアウトを取ったことでも窺い知れた。流れを引き寄せるチャンスだったが、日本もまた思うように得点が伸びなかった。
その要因は中国のディフェンスにあった。世界選手権ではどのチームに対しても引いて守り、日本に対してもしてこなかったマンツーマンディフェンスをスタートからしてきたのだ。日本にとっては想定外だったと言い、キャプテンの北田千尋(4.5)はこう明かす。
「世界選手権の時のイメージを持ちすぎていて、もちろん中国がその時よりも上げてくるだろうということは予測していたものの、それ以上に当たりが強くて受け身になってしまったところがあった」
世界選手権の時よりもコンタクトが強く、走力も一段と上げてきた中国のディフェンスをブレイクするのに苦戦を強いられた日本。攻撃の時間が削られ、フロントコートにまでボールを運んだ時にはショットクロックが残り少なくなり、タフショットを余儀なくされることもしばしばだった。それが最も顕著に表れたのが、2Qだ。シュートチャンスを作り出すことができず、萩野真世(1.5)が放ったドライブからのレイアップ1本にとどまった。
前半を終えて、10−25。フィールドゴール(FG)成功率は、日本が16%だったのに対して、中国は33%。アテンプトも日本が25に対して中国は36と、いかに中国のディフェンスが日本のチャンスを潰していたかがわかる。そして、本来は日本がやりたかったことでもあった。
後半、その中国のマンツーマンディフェンスに対して対策を講じた。インバウンズをローポインターに託し、スピードがあり俊敏な動きを得意とする選手をコート上に多く配置することで、ブレイクしやすい陣形を整えたのだ。それでもブレイク後のクロスピックの精度が少しでも低いと相手の動きを止めることができず、その結果、走るスペースが生まれないという事態となった。
「クロスで捕まえきれずに(相手を)リリースしてしまい、ノーマークの状態を作ることができず(中国が得意とする)ハーフコートのセットプレーまで押し込まれてしまったことで、攻撃のリズムが作れなかった」と岩野博HC。中国のディフェンスが日本の強みをかき消してしまっていた。
ようやく反撃に転じたのは、4Qだった。中国が2週間前までタイ・バンコクで開催された女子U25世界選手権で銅メダル獲得に貢献した若手2人を起用し、やや戦力ダウンした隙をつくようにして中国のディフェンスをブレイク。シュートチャンスに繋げることに成功し、この試合最多の15得点をマーク。4Qに限れば、FG成功率54%と高確率でシュートを決めた。
結果的に33−59で敗れ、中国との差は決して小さくないことを感じさせる一戦となった。ただ失点は目標としていた60点以内をクリアし、ターンオーバーの数も日本が14に対し、中国も13とほとんど変わらなかったことを考えれば、ディフェンスにおいてはスコアほどの差はないと言っていいだろう。
一方、オフェンスにおいてはシュートの精度はもちろん、それ以前にフィニッシュにいくまでの部分にも課題は少なかった。それでも世界2位の強敵相手にも決してブレなかったのが、3ポイントシュートへのこだわりだ。「攻撃の軸にしたいと考えている3ポイントを打つ積極性を失わなかったのは良かった」と岩野HC。中国のマンツーマンに苦戦し、いつもよりは少なかったものの、それでもFGのアテンプト49のうち、3ポイントは13と約3割にのぼった。なかでも柳本あまね(2.5)はこの試合でも67%の成功率を誇った。ちなみに中国は一度も3ポイントシュートを打たなかった。それだけ高さがあり、より確率の高い2ポイントシュートで十分に勝てる強さがあるという証拠でもあるが、日本が中国にはない3ポイントを武器とすれば、世界2位に十分に付け入る隙はあるということでもある。
この試合の2日後、日本は決勝で再び中国と対戦した。果たして2戦目は、どんなゲーム展開となったのか。そこには小さいながらも、しっかりと一歩前進した女子日本代表の姿があった。
写真/越智貴雄・ 文/斎藤寿子