乗馬セラピーから発展したスポーツで、人と馬が一体となって演技の正確性と芸術性を競い合う。
パラリンピック唯一の採点競技で、動物(馬)とともに競技を行うのも大きな特徴。
肢体不自由と視覚障害の選手が対象で、障がいの種類や程度により5つのクラス(グレードⅠ~Ⅴ)に分かれて競技を行う(男女の区別はない)。
砂やフェルト等を混ぜて作られた馬場は「アリーナ」と呼ばれ、グレードⅠ~Ⅲは20m×40mの広さ、グレードⅣとⅤはオリンピックの馬場馬術種目と同じ20m×60mの長方形のエリアが演技の舞台となる。
演技はグレードごとに、個人課目(パラグランプリテストA)、団体課目(パラグランプリテストB)、自由演技課目(フリースタイルテスト)の3種目が行われる。
規定演技で競う個人課目と団体課目では、決められた経路に沿って、図形を描く運動やステップなど20~30の運動項目を実施する。パラ馬術における馬の歩法は、常歩(なみあし)・速歩(はやあし)・駈歩(かけあし)の3種類。動作の正確性に加え、馬の頭の位置や体勢、馬がイキイキと演技をしているか…等も評価の対象となる。
採点は馬場の外周にいる3~5人の審判(パラリンピックでは5人)によって行われ、選手ではなく馬のパフォーマンスのみを各運動項目0~10点で評価する。各審判がつけた合計点を得点率として算出し、その得点率の合計を審判の人数で割った「最終得点率」で順位が決まる。
個人課目の成績上位者のみが出場できる自由演技課目では、フィギュアスケートのように、選手それぞれが選んだ音楽に合わせて、決められた運動を取り入れながら自由演技を行う。
パラ馬術では、選手の障がいを考慮し特殊な馬具を使用することができる(事前の申請と許可が必要)。また、脳性まひなどの障がいにより規定演技の順番を記憶することが難しい選手は、「コマンダー」と呼ばれる人が演技の順番を教えることが認められている。視覚障害の選手には、「コーラー」と呼ばれるアシスタントがアリーナの外から声を出して位置を知らせることが許されており、最大13人までつけることができる。
そして、馬には他の馬がいると落ち着くという特性があることから、グレードⅠ~Ⅲでは「フレンドリーホース」と呼ばれる馬が競技馬と一緒にアリーナに行き、演技中はフェンスの外側で見守ることもできる。演技が終わると、選手がパートナーの馬を撫でて感謝を伝えるシーンもあり、人と馬の絆が名演技を生み出している。
パラリンピックにおける馬術は、1996年のアトランタ大会から正式競技として行われており、日本はシドニー2020大会から出場。
パリ・パラリンピックでは、オリンピック同様にベルサイユ宮殿が会場になるのも見どころのひとつ。
表彰式では、選手にメダル、馬にはロゼット(リボン)が贈られる。
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文/張 理恵