「アスリートに直撃! 20問20答」では、2020年の東京パラリンピックに掛けて、20個の質問をしていく。普通の質問から少し突っ込んだ質問までしていくことで、競技者としての面ではなく、それ以外の素顔を探っていく。
記念すべき第1回に登場するのは、今シーズン、ジャパンパラで優勝を飾るなど、結果を残し始めている男子短距離の井谷俊介選手。明るく、活発なイメージ通り、ポンポンと質問に答えてくれた。
Q1. 好きな食べ物、スイーツは?
名古屋名物の味噌カツですね。生まれは三重県ですが、愛知県の大学に入学してから食べるようになってファンになりました。近所に美味しい定食屋があり、4日連続で通ったことも。大学4年間の食事の半分は味噌カツだったかも。東京では気軽に食べられず、寂しいです。
スイーツなら、ベイクドチーズケーキが好きですね。苦手なものは貝類です。
Q2. 好きな音楽やアーティストは?
あまりこだわりがなく、その時に流行っている音楽を聴きます。しいて言えば、ヒップホップやレゲエかな。BANTY FOOTやThe Chainsmokersも好きですね。「誰?」と聞かれたりします(笑)。レース前に気持ちを盛り上げるのに聴いています。
Q3. 好きなマンガは?
『NARUTO -ナルト-』です。子どもの頃から、兄と夢中になって見ていたし、最近、映画版も観ました。とにかく面白い。『ONE PIECE』も好きですね。
Q4. 好きな本は?
最近読んで感動したのは、『義足でダンス~両足切断から始まった人生の旅~』。アメリカの義足のスノーボーダー、エイミー・パーディ選手の自伝です。彼女は19歳で突然、病気のために両脚を失ったのですが、その当時の辛い思いや葛藤が僕自身の経験や思いと重なって、本の前半は読んでいて苦しかった。でも、スノーボードと出会い、前向きになっていくところも、僕と似ているなって感情移入できました。彼女はその後、パラリンピックのメダリストになるんです。そんなところまで、似ていたらいいなと思います。
実は所属先の社長から勧められて読んだのですが、いい本に出会えて感謝しています。
Q5. 好きな雑誌は?
車が好きだから、『オートスポーツ』『ベストカー』などです。
Q6. 好きな映画は?
最近は映画館でなく、ネットで観ることが多いですね。
好きな映画は、カーアクションがカッコいい『ワイルド・スピード』シリーズですね。小学生の時から好きです。高校生の頃に観た、『グラン・トリノ』も印象に残っています(※引退した自動車工と少年との交流を描いた感動作)。
感動したのは、『ソウル・サーファー』です。僕が義足になった2016年夏に観たのですが、サーフィン中にサメに襲われ、左腕を失った女の子が、サーファーに復帰する映画です。障害を負っても前向きな姿に、すごく勇気づけられました。リハビリ担当の先生がサーファーで、「ぜひ見てほしい」と紹介されました。
Q7. 好きな言葉は?
“Keep Pushing”です。「自らを駆り立て続ける」とか、「進み続ける」といった意味があるそうです。入院中にあるレーサーの方にサインをいただいたのですが、一緒に書かれていた言葉です。
言葉といえば、こんな話が…。小学生の時にソフトボールを始めたのですが、選手がみんな、帽子にモットーを書いていました。僕は、「前進あるのみ」と書いたつもりだったのに、実は「全身あるのみ」と書いていたんです。叔父に指摘されて恥ずかしかった。小学校5年生のことです(笑)。
Q8. あこがれのアスリートや尊敬している人は?
現役は引退していますが、国内最高峰のスーパーGTで3度のシリーズチャンピオンになった脇阪寿一さんですね。アスリートとしても、人としてもあこがれであり、尊敬しています。
僕が小学生でカーレースを見始めた頃、脇坂さんは全盛期。縁あって、今は「東京の父」と思うほどお世話になっていますが、初対面のときは「本物だ~」ってすごく緊張したことを覚えています。
「アスリートである前に、人としてどうあるべきか」を、時に厳しく、愛情ある教えのもと成長させてもらっています。
Q9. 好きなお笑い芸人は?
サンドイッチマンやバナナマン
Q10. 休みの日の過ごし方は?
休日は朝9時頃に起きて、そのままゴロゴロして、昼ご飯を食べに外出し、新宿や渋谷をプラプラしたり、自宅近所に銭湯がたくさんあるので、いろいろ巡って、楽しみながらリラックスしています。
最近、ロードバイクを買いました。まだ、近所を走るくらいですが、有酸素運動にもなるし、遠出もしたいです。
たまにですが、昼過ぎまで寝てしまうことがあって、「貴重な休日を無駄にしてしまった」と、自己嫌悪に陥ります。疲れているんですかね。
Q11. 好きな女性のタイプは?
ロングヘアで、すらっとした長身の女性がタイプです。
Q12. どんなデートをしたい?
ドライブがてら、江の島に行って、有名なしらす丼を食べたいです。夜景も楽しめる、夜のドライブもいいですね。
Q13. 今までで一番落ち込んだことは?
う~ん、やっぱり、事故に遭ったときですね。「あの時、こうしていたら…」など、いろいろ考えてしまって。事故から10日後に右脚を切断したときには、「これから、どうしたらいいのだろう」と、さらに落ち込みました。でも、家族や友人など周囲の励ましや支えのおかげで、数日で前向きな気持ちが戻ってきました。
事故をきっかけに人間の温かさにも気づけたし、あの時の辛さや寂しさと、周囲への感謝の思いが、今、アスリートとして努力する原動力になっています。
Q14. 今までで一番うれしかったことは?
事故に遭い、いろいろあった中、陸上と出会えたことです。そして、今年でいえば、7月の国内大会で初優勝したこと。本当にびっくりしたと同時に、努力してきてよかったと思いました。
Q15. 自分の長所・短所を自己分析すると?
負けず嫌いで、強い気持ちは誰にも負けないと思っています。
それから、前向きなところ。陸上を始めてから、追い詰められても気楽に構え、「何とかなるさ」という思いで乗り切れるようになってきました。
短所は一つミスをすると、頭の中が真っ白になって焦ってしまうこと。あと、頑張りすぎて、無理や無茶をしてしまうので、気をつけたいです。
Q16. 自分のチャームポイントといえば?
目が小さいのが悩みだし、特にないです…。職場の上司からは、「笑顔と素直なところ」と言われたことがあります(笑)。
Q17. いつも欠かさず持ち歩いてるモノは?
大会のときに必ずスーツケースに入れて、お守りにしているのは、ネックレスです。事故後に知人からのプレゼントで、ニュージーランドのマオリ族のデザインで、「自分を信じろ」という意味があるらしいです。
事故から数カ月、やっぱりどこか無理していたようで、そんなときに、「井谷らしく、自分を信じてやればいい」という思いを込めてプレゼントしてくれました。首がこるので、身につけることはありませんが、スーツケースに忍ばせています。
Q18. 「こんなプレゼントもらうとうれしい!」ものは?
「Gショック」という時計のファンで、今のは4年くらい使っているので、新しいモデルがほしいです。23歳の自分には高級時計よりも似合うかなと。
Q19. 将来、目指していることは?
まずは、同じように障害で悩む方や、殻に閉じこもってしまっている人に、一歩踏み出す勇気や希望を与えられるようなアスリートになりたいです。
僕は周りの人たちに恵まれて、障害を負ってもすぐに前向きになれましたが、そんな支えがなかったら、引きこもっていたかもしれません。障害者に対する概念が変わり、心のバリアフリーが社会に広まれば、嫌な思いをする障害者も減って、もっと生活しやすくなると思います。僕が走って頑張る姿を見てもらって、「自分も頑張ろう」って思ってもらえたらうれしいです。
モータースポーツの世界でも活躍できるような義足のレーシングドライバー、義足のスプリンターになりたいです。
Q20. Tokyo2020への思いを一言で!
アジアの義足スプリンターとして初の100m10秒台を目指します。そして、世界で戦えるアスリートになりたいです。
【プロフィール】
井谷俊介さん
いたに・しゅんすけ●1995年4月2日生まれ。三重県尾鷲市、大紀町出身。身長179cm、69kg。ネッツトヨタ東京所属。三重・津田学園高時代は野球部の投手として活躍。愛知・東海学園大学入学後はプロのカーレーサーを目指し、カートレースなどに参戦。2016年2月、大学3年時に、交通事故により右ひざ下を切断、義足での生活が始まる。2017年11月から本格的に陸上競技を始める。18年5月、北京での国際大会でレースデビュー。
◆「始めて半年で国際大会優勝。パラ陸上に現れた超新星、井谷俊介はまだまだ伸びる」はこちら>>>
星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko 五十嵐和博●写真 photo by Igarashi Kazuhiro