夏季パラリンピックの人気競技・車いすラグビーの国際大会「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」が10月16日から20日まで、渋谷区の東京体育館で開催される。世界の強豪8カ国が参戦する、東京2020パラリンピックの前哨戦ともいえる大会。昨年の世界選手権を初制覇し、パラリンピックでも金メダル獲得が待望される日本代表の活躍に期待が高まる。
「もうひとつのラグビー」国際大会が東京体育館で開幕!
いま、日本中が盛り上がる「ラグビーワールドカップ2019」と同時期開催で、“ダブルワールドラグビー”として気運を高めあっている。出場8カ国をふたつのプールに分け、大会3日目まで毎日予選リーグの4試合が、19日に順位決定戦と準決勝が、最終日の20日に3位決定戦と決勝戦が行われる。
会場の東京体育館は、JR総武線「千駄ヶ谷駅」または都営地下鉄大江戸線「国立競技場駅」から徒歩1分とアクセス抜群。予選リーグは平日開催だが、最後の試合は19時15分開始となっており、仕事帰りにも立ち寄れそうだ。観戦は終日無料。準決勝以降は有料のアリーナシートも設置されるので、車いすラグビーの魅力をより間近で味わいたい方はぜひチケットを購入して楽しもう(金額等の詳細は公式HP<https://wwrc2019.jp/>でご確認ください)。
激戦必至! メダルマッチに進出するのはどのチームだ!?
世界ランク2位の日本がいる予選リーグのプールAは、同4位のイギリス、同6位のフランス、同10位のブラジルが入った。日本代表は2016年のリオパラリンピックで銅メダルを獲得。17年に就任した名将、ケビン・オアー監督指揮のもと、昨年の世界選手権で初めて頂点に立つなど勢いに乗る。攻撃陣の池透暢(ゆきのぶ)と池崎大輔の「“イケイケ”コンビ」の活躍は、要チェックだ。大会3日目に当たるイギリス代表は、対戦のたび接戦となるライバル。日本代表はここでしっかり勝ち切って、メダル獲得への足がかりとしたいところだ。
プールBは、パラリンピック2連覇中で世界ランク1位のオーストラリアと、リオ銀メダルで世界3位のアメリカが同組に。アメリカは車いすラグビーの本場で選手層が厚く、今大会も大学生から元兵士まで幅広い。宿敵相手にどんな戦いを挑むかが見どころだ。世界5位のカナダは、車いすラグビー発祥の国であり、パラリンピック4大会でメダルを獲得している強豪国。同9位のニュージーランド代表の愛称は「ウィールブラックス」。オールブラックスでおなじみの試合前の舞踊儀式「ハカ」の車いす版も迫力満点!
知ればもっと面白い! 車いすラグビーのルール
車いすラグビーは、四肢麻痺者など比較的障がいが重い選手のためのチームスポーツ。選手一人ひとりに障がいの程度によって「持ち点」が設定され、コート上の4名の合計点が「8点以内」で編成する。パラリンピック競技のなかで唯一、車いす同士のタックルが認められており、その激しさは「殺人球技=マーダーボール」と呼ばれるほど。
ぶつかり合いが前提の競技専用車いす、通称「ラグ車」の傷は激闘の証だ。ラグ車には、主に障がいが軽い選手が使用し、コンパクトで丸みを帯びた形状をしている「攻撃型」と、主に障がいが重い選手が使用し、相手の動きをブロックするためにバンパーが飛び出している「守備型」のふたつに分かれる。
一般のラグビーと異なり、ボールは丸い専用球で、前方へのパスが認められている。ボールを保持した状態でゴールラインを通過すれば、1得点となる。イカつい男たちのスポーツと思われがちだが、実は男女混合の競技。コート上の4名の中に女子選手が入る場合は、一人当たり0.5点加点され、チームの持ち点の合計は8点を超えることができる。日本代表は、この4人のライン(ラインナップ=組み合わせ)のバリエーションが豊富で、大きな強みとなっている。
会場に響き渡る「音」や、チームワークも楽しもう!
初めて車いすラグビーを観戦する人は、ラグ車同士が全速力でぶつかり合う「ドゴン!」「ガシャン!」という衝突音に驚くだろう。タックルの瞬間は金属の塊であるラグ車が浮き上がるほどの迫力だ。ただし、後輪車軸の後方への転倒につながるような危険なタックルは反則となる。
試合中は、その激しい動きでラグ車がパンクし、試合が中断する場面もよく目にする。そこで颯爽とベンチから現れるのが、タイヤ交換などを行うメカニックなどのスタッフ陣。選手が転倒して床に倒れた場合も、スタッフがコートに入り、速やかに選手を起こす。このチームワークも見どころのひとつだ。
今大会は、車いすラグビーを知る絶好の機会となるはず。そのうえで、東京2020パラリンピックを観戦すれば、より楽しむことができるだろう。ぜひ、会場に足を運んで熱いエールを送ろう!
車いすラグビーワールドチャレンジ2019
開催期間:2019年10月16日(水)〜10月20日(日)
会場:東京体育館(東京都渋谷区千駄ヶ谷1-17-1)
入場無料(土日は一部有料席あり)
公式ウェブサイト:https://wwrc2019.jp/
荒木美晴●文 text by Miharu Araki 植原義晴●写真 photo by Yoshiharu Uehara