2019年9月30日、東京都大田区の東蒲小学校で、4年生27名を対象にしたブラインドサッカー選手による講演と体験授業(社会応援ネットワーク主催)が開催された。講師を務めたのは、茨城県つくば市に本拠地を置くブラインドサッカーチーム、Avanzare(アヴァンツァーレ)つくば所属の増田周平さん(25)。講演では、競技を始めたきっかけや自身の障がいなどについて語った。
高校までは普通学校に通い、テニス部に所属していたという増田さん。しかし3年生になると、徐々にボールが見えにくくなり、途中でやめざるを得なくなった。
「視覚障がいのある自分に務まる職業があるのか」
落ち込み、進学も諦めかけていた時、両親から「鍼灸師なら視覚に障がいがあっても務まるよ」と勧められた。その後、資格取得をめざして進学した大学在学中に、「視覚に障がいがあってもできるスポーツがある。一度やってみないか」と先輩に誘われ、ブラインドサッカーと出会ったのだという。
増田さんの視力は、両目とも0.6ほどある。しかし、視野が極端に狭く、医師からは「95%視野欠損」と診断された。
「僕の障がいが何だかわかりますか?」
増田さんが問いかけると、列の左右両端に並んでいた児童が、「右側が見えない!」、「左側が見えない!」と大きな声で答える。
「どっちも正解! なんでわかったの?」と質問されると、「さっきから手を挙げているのになかなか指してもらえなかったから」と理由を述べた。
「95%視野欠損といって、中心部分しか見えません。目から少し離した、五円玉の穴から見える範囲が僕の視野。『視覚障がい』と一括りにされるけれど、みんなそれぞれ見え方は違います。まずは色んな障がいがあることを知ってもらえるだけでも嬉しい」と語り講演を締めた。
続いて行われた体験授業では、アイマスクをかけた人と、かけないガイド役に分かれ、声でコミュニケーションをとることから始まった。真っすぐ目的の場所まで辿り着けるようにガイドする場面では、「右、右!」、「左、左!」と児童の大きな声が体育館中に響き渡った。向かい合う相手に方向を指示する際、自分と相手の見え方は逆になる。始めは間違って誘導してしまっていた児童も、徐々に「そうか!」と相手の立場に合わせたガイドができるようになっていった。
また、チームに分かれ、アイマスクをかけた状態で、数メートル先のカラーコーンにボールを当てる回数を競い合った場面では、「置くよ!」と声をかけて足元にボールを設置したり、「ここだよ!」とカラーコーンを手で叩いて場所を知らせたりするなど、協力し合いながら真剣に取り組む児童の様子が見られた。
ブラインドサッカーでは、「フィールドプレイヤー」は視覚障がいのある選手が務め、「ゴールキーパー」やゴール裏で様々な指示を送る「ガイド」は晴眼者が務める。
「アイマスクをした瞬間は見えなくなって、不安で怖かった。でもみんなの『こっちだよ!』の声で安心することができた」
体験授業終了後、こう語った児童の感想から、視覚障がいのある人と晴眼者が協力して初めて成立する競技である、ブラインドサッカーの魅力が伝わったのを実感した。
この事業は、競輪の振興団体公益財団法人JKAの補助と、株式会社技秀堂の支援を受け、社会応援ネットワーク主催で実施されており、今後も複数の学校で実施される予定だ。