ともに福島県在住のボッチャ選手である遠藤裕美選手(左)と加藤紗織選手(右)。ボッチャは重度の障がいを持つ人たちのためにヨーロッパで考案されたスポーツでありながら、障がいの有無や程度に関わらず、同じルールのもと「白い的球に赤と青それぞれ6つのボールをいかに近づけるか」を競えるのが魅力だ。そんな「チャレンジド・スポーツ」を象徴する競技に彼女たちがどんな思いで取り組んでいるのかを聞くために、「福島県ボッチャ協会」が月に一度、日本代表選手も招きながら行なっている練習会を訪問。ボッチャとの出会いが彼女たちの人生にもたらしたものとは!?
── まずは遠藤選手からお聞きしていきます。遠藤選手は現在、日本代表の強化指定選手にも選ばれていますが、日々どのようなペースでボッチャの練習に取り組まれているのですか?
遠藤 普段の練習は主にここ郡山と福島でやっていまして、そのほかに月に一度のペースで東京や大阪などで行われる代表合宿に参加しています。代表合宿には、一昨年の日本ボッチャ選手権で3位になったことで呼ばれるようになりました。そのような練習環境は私の体を考えるともちろんハードですけれど、そこでさらに技術を磨くことができていますのでとてもやりがいを感じています。
── 昨年の10月28日から11月3日までポルトガルで開催された国際大会にも出場されたそうですね。
遠藤 はい。その大会では自分よりも上のレベルの選手たちと試合ができましたし、また個人戦ではなく団体戦で自分の役割を果たすことができたという点でも手応えを感じています。もちろんフライトなどは大変でしたが、本当にポルトガルに行くことができて良かったと思っています。
── 遠藤選手がいちばん得意とするプレーは何ですか?
遠藤 私の強みは遠投ですね。遠い位置に置かれた的球にボールを寄せるのが得意です。これからもその精度をさらに上げて、いろいろな国際大会で存在感を発揮したいです。
── これまでのボッチャ選手としてのキャリアを振り返ってみて、長く続けられている秘訣はどこにあると思いますか?
遠藤 ボッチャとの出会いは高校の体育の授業で、本格的に競技として始めたのは24歳の頃なので今年でちょうど10年になります。手足が不自由な自分の障がいと向き合いながらスポーツを続けることはやはり大変なことですし、今でも心が折れそうになることはしょっちゅうですが(笑)、やっぱりめざすものがあるのでどんなに体がきつくてもやめられません。それに日々支えてくれている家族やコーチ、応援してくださっている皆さんのためにも自分の役割を果たしたいという気持ちもかなり強いです。その思いがあったから今まで続けてこられたと思います。
── 今年の大舞台も含め、今後の目標をお聞かせください。
遠藤 東京が最終目標ではないので、その先のパリやロサンゼルス大会もしっかり視野に入れながら自分のパフォーマンスを磨いていきたいと思っています。年齢や障がいの度合いに関係なく誰でもプレーできるのがボッチャの魅力でもありますので、なるべく長く続けたいですし、やるからには時間がかかってもてっぺんをめざしたいですね。そして、ボッチャを通して地元・福島の皆さんや今までお世話になったたくさんの人たちに勇気や元気を届けたいと思っています。
── 続いて、加藤選手にうかがっていきます。加藤さんは福島ボッチャ協会が主催しているこの練習会に毎回参加されているそうですね。
加藤 はい、そうですね。福島のクラブチームでの活動をメインに、月に一回、さらに自分の技術を磨きたくてこの練習会に参加しています。がんばって練習を重ねて、いつかは世界の大舞台に出場することが私の目標です。
── 加藤選手のプレーの特徴はどのようなところですか?
加藤 ボッチャは下から投げる選手が多いのですが、もともと私は上投げしかできないのでずっとそのスタイルでやっています。フォーム自体はまだまだ安定しているとは言えませんけれど、学校を卒業した後にボッチャを本格的に始めてから7年間練習を積んできて、近いエリアでボールを寄せていく技術は上がってきていると実感しています。
── ちなみにボッチャ以外に、楽しんでいる趣味などはあるのですか?
加藤 好きなアーティストのライブに行くことです。とくに福山雅治さんの大ファンなので年末の年越しイベントには家族やヘルパーさんと毎年行っています。
── ボッチャ選手として、この先どんなチャレンジをしていきたいですか?
加藤 私はまだまだ世界大会に出るところまでは力が及んでいないので、まずは国内の大会でコンスタントに成績を残していきたいです。いつか日本代表として世界の大舞台で活躍することを夢見ながら、こつこつと経験を積み重ねていきたいと思っています。また、障がいがあってもなくても、大人も子どもたちも誰でも笑顔で楽しめるボッチャの魅力をもっと広く知っていただきたいと思っていますので、そのために自分ができることをしっかりやっていきたいです。
PROFILE
えんどう ひろみ●サントリー チャレンジド・アスリート奨励金 第1期〜第6期対象
1986年生まれ、福島県福島市出身。先天性の脳性まひによって幼少から車いす生活に。郡山市の擁護学校高等部在学中に体育の授業でボッチャと出会い、卒業後24歳の頃に郡山のボッチャチームで本格的に競技を始める。現在はBC1クラス屈指の実力者として日本代表の強化指定選手に名を連ね、一昨年の日本ボッチャ選手権では3位に輝く。
かとう さおり●サントリー チャレンジド・アスリート奨励金 第4期〜第5期対象
1986年生まれ、福島県福島市出身。未熟児で出生したことによって脳性まひを患う。7年前にボッチャを始め、現在は地元・福島のクラブチームで練習を重ねながら福島ボッチャ協会主催の練習会やイベントなどにも積極的に参加。まだ国際舞台での経験はないが、これまで福島県総体で優勝1回、準優勝2回の実績を持つ。
SUNTORY CHALLENGED SPORTS PROJECT
サントリー チャレンジド・スポーツ プロジェクト
www.suntory.co.jp/culture-sports/challengedsports/
Photos:Teppei Hoshida Composition&Text:Kai Tokuhara