2019年10月7日、福島県南相馬市の八沢小学校で、ブラインドサッカーの体験授業(社会応援ネットワーク主催)が開催された。Avanzare(アヴァンツァーレ)つくば所属の増田周平さん(25)の指導のもと、同校の5、6年生24名が90分間にわたりブラインドサッカーを初体験した。
「ブラインドサッカーがどんなスポーツか知ってる人?」
問いかけるも、児童の手は挙がらない。「じゃあ、どんな人がやってるか知ってる?」と続けると、「目が見えない人」と複数の声が聞こえてくる。すると、増田さんは「僕もブラインドサッカーの選手だけど、実は視力がそんなに悪くありません。でも見える範囲が極端に狭いんです。95%視野欠損といって、5円玉の穴からのぞく程度しか見えません」と、自身の障がいについて説明を始めた。一見すると障がいがあるとは気づかれないながらも、小さな段差につまずいたり、駅ですれ違う人にぶつかりそうになったりしたエピソードを交えながら、「日々恐怖を感じながら歩いています」と語った。
続いて、増田さんによるデモンストレーションが行われた。実際の大会でも使用されるボールを手に取ると、「中には鈴が入っていて、その音を頼りに、ボールのある方向や距離を予測します」と説明。実際にアイマスクをかけた状態で、左右に投げ分けられたボールを素早く足元におさめ、正確に相手にパスを送ると、児童からは自然と拍手が巻き起こった。
「次は実際にアイマスクをかけて体を動かしてみましょう。まずは準備運動から始めます」。増田さんの言葉を受けて、アイマスクをかける人とかけない人が二人一組となって広がった。「今から僕がする体操を真似してください。アイマスクをかけていない人は、どんな伝え方でも構わないので、相手にどんな動きなのか教えてあげましょう」
「屈伸!」、「アキレス腱!」。普段から体育などで行う一般的な体操の動きの際は、具体的な名称で指示する声が聞こえる。しかし、名称のわからない動きになると、「右足が前!」、「座って足を組む!」というように、動作を声に出したり、手を取って動きをサポートしたりする児童の様子が見られた。
体操が終わると、今度は5、6名のチームに分かれ、ボールを使ったプログラムに移った。アイマスクをした状態で、数メートル先のボールに触れたり、カラーコーンにボールを当てたりする取り組みだ。慣れてきたら、どのチームが早く終わるか、最も多い回数をこなせるか、チームごとに競い合った。
「どうやったら上手くいくか、チームで話し合ってください」と増田さんが呼びかけると、「右、左、そこ、と声をかけたらどうかな!?」というように、互いの意見を述べ合う児童たち。どうやったらうまく足元にボールをおさめられるか、真っすぐにボールを蹴れるか、仲間と相談し、終了の笛が吹かれるまで全力で取り組んでいた。
授業の最後、増田さんは自身の体験を交えて語った。「ブラインドサッカーは、視覚に障がいのある人とない人が協力してやる競技です。お互いに協力し、どうやったらうまくいくかを考えることは、生活に置き換えても同じこと。僕が高校生の時、どんどん視野が狭くなって不安な中、友人や両親、先生たちが様々な場面で支えてくれました。みんなも、友だちが大変な時は、進んで助けてあげられる人になってください」。
これを受けて児童からは、「障がいがあっても、スポーツなどで頑張っているのはすごいと思いました。自分の身の回りに障がいのある人がいたら、優しく声をかけたいです」との感想が述べられた。
この事業は、競輪の振興団体公益財団法人JKAの補助を受け、社会応援ネットワーク主催で実施されており、今後も複数の学校で実施される予定だ。