男子100m背泳ぎ(S8=運動機能障がい)で東京パラリンピック代表に内定した窪田幸太
5月21~23日の3日間にわたって横浜国際プールでは東京パラリンピックの代表選考会を兼ねて「2021ジャパンパラ水泳競技大会」が開催された。高いレベルに設定された「TOKYO 2020派遣基準」のタイムを突破したのは8人。そのうち2019年世界選手権で金メダルを獲得し、すでに内定していた3人を除く5人が自ら東京パラリンピックへの切符を引き寄せた。大会後には選考委員会による合同会議が行われ、審議の結果、男子14人、女子13人の計27人を日本代表推薦選手とすることが決定した。
窪田は自身が持つ日本記録を更新し派遣基準を突破!
大会初日は2年前の世界選手権で金メダルこそ逃したものの複数の種目で表彰台に上がるなど、世界トップレベルの実力を持つ富田宇宙(S11=視覚障がい)と鈴木孝幸(S4=運動機能障がい)が派遣基準を突破した。最もメインとする400m自由形に出場した富田は、午前に行われた予選で大会新記録となる4分33秒26の好記録をマーク。自身初となるパラリンピックへの扉を開けた富田は「今すごくスピードが出ているので、この後もいい記録が狙えるんじゃないかと思っている」という言葉通り、2日目の100m自由形決勝では日本記録まで0.7秒差の好タイムをマーク。3日目の100mバタフライでも今大会2種目めとなる派遣基準を突破した。
一方、初日に200m自由形に出場した鈴木は午後の決勝で予選を約8秒上回る2分57秒35の大会新記録をマークして派遣基準を切り、5大会連続のパラリンピック出場を決めた。鈴木は2日目には150m個人メドレー、3日目には50m自由形でも大会新記録を樹立して派遣基準を突破した。同じタイミングで開催されていたヨーロッパ選手権ではライバルたちが好記録をマークしており、「道は険しくなるばかり」としながらも、東京パラリンピックでは08年北京大会以来の金メダル獲得を目指すとした。
大会2日目は新たに派遣基準を突破する選手は出なかったが、最終日の23日には3人が初のパラリンピックの切符を手繰り寄せた。午前に行われた予選で派遣基準を突破したのは窪田幸太(S8=運動機能障がい)と石浦智美(S11=視覚障がい)だ。日本体育大学4年生の窪田は100m背泳ぎで日本新記録となる1分9秒97を予選でマークし、派遣基準を突破。直後のインタビューでは「まだ実感がわかない」と照れ笑いを浮かべた窪田。3月の日本パラ水泳競技大会では日本新を樹立するも、1分11秒14と今回の派遣記録(1分10秒64)には届かないタイムだった。そこからMQSランキング(参加標準記録順位)5位に相当する好タイムを叩き出した。日体大の競泳部に所属し、オリンピックを目指す健常の選手たちとともに切磋琢磨してきたことがレベルアップにつながった、と語る。
先天性の左上肢機能全廃という障がいがある窪田は「片腕が使えない分、キックが強み」とし、普段の練習で多い時には一日6000mを泳ぎこむなどして鍛えている。パラリンピックには「出るだけでなく、結果をしっかりと出したい」と語り、残り3カ月でさらにレベルアップを図り、メダル獲得を目指す。
写真/越智貴雄[カンパラプレス] 取材・文/斎藤寿子