女子50m自由形(S11=視覚障がい)で東京パラリンピック代表に内定した石浦智美
石浦は“4度目の正直”で初のパラリンピックへ
また、石浦は50m自由形の予選で派遣基準を0.13秒上回り、パラリンピックへの切符を獲得した。高校生だった08年北京大会からパラリンピック出場を目指してきた石浦にとっては、4度目の挑戦でついに訪れた瞬間だった。前回の16年リオ大会の選考では0.3秒足りずに派遣基準を切ることができなかった。その後は練習環境を求めてアスリート雇用の企業へと転職し、トレーニングを積み重ねてきた。「こうして結果につながったことはうれしいし、諦めずにやってきて良かったなと思います」と喜びを口にした石浦。ロンドンパラリンピックで金メダルに輝いた同級生で同じクラスだった秋山里奈と同じく、東京パラリンピックでは表彰台の最も高いところを目指す。
そして決勝で午前の予選から一気にタイムを縮めて派遣基準を突破したのが、18歳の荻原虎太郎(S8=運動機能障がい)だ。100mバタフライに出場した荻原は予選では1分8秒06と派遣基準には2秒以上届いていなかった。ところがその約6時間半後の決勝では予選のタイムを3秒近く縮め、日本記録まで約0.4秒差に迫る大会新記録の1分5秒25をマーク。見事に東京パラリンピックの内定を決めた。「東京では今の記録ではメダルに届かないが、今大会の結果は自信になったので精進をしてほかの選手にも負けない記録を残したい」と意気込みを語った。
また、自身が持つ世界記録を更新し、東京パラリンピックに向けて調子の良さを見せたのが、山口尚秀(S14=知的障がい)だ。19年世界選手権では100m平泳ぎで世界新で金メダルを獲得し、東京パラリンピックが内定していた山口は、昨年11月に再び世界新を樹立。今大会はそれを0.13秒更新し、東京パラりピックへの弾みとした。山口と同じく19年世界選手権で金メダルを獲得し、すでに内定していた木村敬一(S11=視覚障がい)、東海林大(S14=知的障がい)も、今大会でしっかりと派遣基準を突破した。
今大会は新型コロナウイルス感染拡大の影響で緊急事態宣言が発出されていることから、棄権した選手もいたが、そのうち山田美幸、辻内彩野はコロナ禍特例基準により、3月の日本パラ水泳競技大会の記録が採用されて推薦が決定。そのほか、MQSランキング(参加標準記録順位)に基づき、男子4人、女子9人の計13人が推薦選手に決定。今後、国際クラス分けの受検が必要とされ、保留扱いとなった4人を含め、あわせて27人の選手が東京パラリンピックの日本代表候補となった。3カ月後、金メダルなしに終わった前回のリオパラリンピックの雪辱を果たす。
写真/越智貴雄[カンパラプレス] 取材・文/斎藤寿子