オリンピックやパラリンピックはスポーツ界の“超人たち”が競い合う大会だ。その超人たちの中にも、世界記録を連発したり、1大会で複数のメダルを獲得する、卓抜した選手が存在する。果たして彼らは、私たちと何が違うのか? 彼らの身体はどうなっているのか? その秘密に迫る特別企画展「超人たちの人体」が2021年7月17日(土)から9月5日(日)まで、日本科学未来館で開催される。
今回の企画展は、アスリートたちの人体を解き明かすNHKスペシャルとの連動によるもの。フィーチャーするのは驚異的な身体能力を持つ、ウサイン・ボルト(ジャマイカ・陸上)、タチアナ・マクファーデン(アメリカ・パラ陸上)、ケレブ・ドレセル(アメリカ・競泳)といったトップアスリートたち。超人の体内をMRI(磁気共鳴画像装置)で撮影し、筋肉や脳をかつてない高精細映像で可視化する。
会場では、彼らのハイレベルなパフォーマンスと、それを実現するための人体の驚くべき仕組みや美しさに迫る。実際に体を動かして参加する体験コーナーでは、超人たちだけでなく私たちの体の中に秘められた計り知れない能力や可能性に触れる。自分も超人かもしれない…。視野が広がる展覧会になりそうだ。
展示や体験できる内容をご紹介しよう。
【コーナー1】
ウサイン・ボルト 〜史上最速を実現した奇跡の身体~
ⒸNHK
ライトニング・ボルトのポーズでもおなじみ、“世界最速の男”の称号を持つウサイン・ボルト。背骨が曲がる側わん症という持病を抱え、思うような走りができない時代もあったが、徹底して筋肉を鍛え抜き、100メートル9秒58という前人未踏の記録を打ち立てた。196cmの長身を生かした大きなストライド走法で、北京、ロンドン、リオデジャネイロとオリンピック3大会連続金メダルに輝いた。彼の活躍は誰しもが強烈に記憶しているだろう。
このコーナーではMRIで撮影したボルトの全身を、さまざまな高精細映像に加え、等身大のプロジェクションマッピングで再現する。詳細かつ立体的なアプローチで、人類史上最速の男の今まで知られていなかった姿を見ることが可能に。ボルトの “奇跡”ともいわれる人体の神秘に迫る。
【コーナー2】
タチアナ・マクファーデン 〜未知の能力を覚醒させる“超適応”〜
ⒸNHK
8歳でレースをはじめ15歳からパラリンピックに出場し、100メートルからマラソンまで車いす陸上のすべての競技でメダルを持つマクファーデン。2012年のロンドン大会で悲願の金メダルを400m、800m、1500mの3種目で獲得すると、2013年の世界選手権で出場した6種目(100m、200m、400m、800m、1500m、5000m)すべて金メダルという6冠を達成した。これは女子選手として「史上初」の快挙。さらに同年、4大マラソン(ボストン、ロンドン、シカゴ、ニューヨークシティ)を1年間で全制覇。この「年間グランドスラム」も車いすランナーとしては男女を通じて「史上初」となった。
マクファーデンは、二分脊椎症という先天性の病のため生まれつき腰から下が麻痺している。孤児院で幼児期を過ごすが、車いすを与えてもらえず、逆立ちなど手を使って移動していた。これによって上半身が自然と鍛えられていたため、スポーツを始めるとすぐにその才能が開花。その後もトレーニングによって上半身が強靭に発達し、筋肉を動かす脳にも驚くべき変化があらわれた。
「Ya sama(ヤ・サマ)」、ロシア語で「私はできる」がマクファーデンの信条。会場では、脳がストッパーをぎりぎりまでかけず、鍛え抜かれた上半身のパワーによって生み出される最高時速40km/hというマクファーデンの車いすのスピードを体感できる。
【コーナー3】
ケレブ・ドレセル 〜究極の美が生むスピード〜
ⒸNHK
23個のオリンピック金メダル記録を持つマイケル・フェルプスを超えるとしたら、ケレブ・ドレセルかもしれないと、大きな期待が寄せられている。フェルプスが打ち立てた競泳バタフライ100メートルの世界記録を、10年ぶりに塗り替えたのがドレセルだ。2017年の世界水泳選手権では7つの金メダルを獲得。その後も多くのメダルを手にし、記録の更新をして進化し続けている。
ドレセルは圧倒的なスピードだけでなく、世界一美しいといわれるフォームでもファンを魅了する。その泳ぎは、筋肉だけでなく、ラストを無呼吸で泳ぎ切る、特徴的な呼吸機能の働きによって実現されている。まるで芸術作品をつくるかのように優雅に泳ぐドレセルの姿を水中カメラでとらえた。超大型スクリーンで、ダイナミックな映像を堪能できる。
【コーナー4】
シアター映像「Moment of SuperHuman」 〜人類が超人になる瞬間〜
最後は、今回フォーカスした3人の世界的アスリートが、競技中に超人になる瞬間を美しい映像と音で体感するコーナー。わずか数秒の間に、彼らの体内ではダイナミックな変化が起こっている。彼らがその体や能力をどうやって作り上げたのかを展示で知った後に見ることで、よりリアルに感じることができるだろう。
「超人たちの人体」は東京オリンピック・パラリンピックの公認プログラムでもある。この展覧会を見る前後では、競技の見方も大きく変わりそうだ。またNHKでは、本展と連動した「NHKスペシャル」の放送を予定している。人体そのものに興味を持ったなら、アーカイブの「人体」や「ミラクルボディ」シリーズで、深堀りするのもまた楽しい。いろいろなきっかけをつくってくれそうな特別企画を、お見逃しなく。
特別企画「超人たちの人体」
会場:日本科学未来館(東京都江東区青海2-3-6)
1階 企画展示ゾーン、7階 イノベーションホール他
会期:2021年7月17日(土)~9月5日(日) ※会期中、休館日はなし
開館時間:10:00~17:00 ※入場は閉館の30分前まで
入場料:無料・公式サイトでの事前予約制
https://www.nhk.or.jp/special/jintai/chojin/
問い合わせ:日本科学未来館 TEL:03-3570-9151(代表)
主催:NHK、日本科学未来館(JST)
【特別企画「超人たちの人体」公式サイト】
https://www.nhk.or.jp/special/jintai/chojin/
Composition&Text:Hisami Kotakemori