8月24日に開幕する東京パラリンピック。9月5日までの12日間、22競技で熱戦が繰り広げられる。日本代表選手団は史上最多で、前回の2016年リオ大会ではゼロに終わった金メダル獲得に期待が寄せられる。そこで、5回にわたって金メダル最有力候補を紹介する。第1回目は、パラ水泳の2人だ。
【#1 山口尚秀(知的障がいクラス)】
世界王者が挑む世界新での金メダル
18歳で初出場した2019年世界選手権では、100m平泳ぎ(SB14)で1分04秒95の世界新をマークして優勝し、一躍東京パラリンピックでの金メダル候補に浮上した。昨年に続いて、今年も世界記録を更新するなど、その実力は本物だ。今年5月に開催されたジャパンパラ競技大会では、1分04秒00と3度目の世界新をマークし、2年前の記録を1秒近く縮めている。
その後、6月の日本知的障害者選手権では、50m平泳ぎで29秒49の日本新、7月の長野県選手権では、男子50mバタフライ(S14)で26秒16の日本新をマークするなど、本番に向けて好調をキープしている。
身長185cm、足のサイズは30cmと恵まれた体格の持ち主である山口の強さは、ひれのように大きな足を生かした力強いキックで生まれる推進力。前半先行型の泳ぎが特徴で、後半のスタミナが勝負となる。
いよいよ1分03秒台を射程圏内に入れた山口。初出場となる東京パラリンピックでの目標は、得意の100m平泳ぎで「世界新での金メダル獲得」だ。
「世界一になるためには、世界一の努力をしなければならない」と語る山口は、食生活にも気を配り、好きな炭酸飲料や揚げ物は摂取しないようにしている。そんな努力家でもある20歳のスイマーは、東京パラでも有言実行の姿を見せてくれるに違いない。
<やまぐち・なおひで>
2000年10月28日、愛媛県生まれ。四国ガス所属。3歳の時に自閉症と診断された。小学生の時に水泳を始め、高校1年からパラ水泳の大会に出場するようになる。19年には世界選手権をはじめ、数々の国際大会でメダルを獲得し、世界トップスイマーへと躍進した。
写真/越智貴雄[カンパラプレス] 文/斎藤寿子