東京パラリンピックで銀メダルを獲得した車いすバスケットボール男子日本代表。主力として活躍した香西宏昭と藤本怜央は、9月25日に開幕したドイツ・ブンデスリーガで早くも次のスタートを切った。香西と藤本が所属するランディルは、10月24日には2人の古巣でもあるBGハンブルクに77-59で勝利し、開幕4連勝を飾った。
攻防にわたってチームに勢いをもたらした香西
まるで東京パラリンピックでの日本代表を思わせるような試合展開だったーー。試合の出だしは、ホームのハンブルクが主導権を握った。1Qの前半、23歳の若きエースでイラン代表として東京パラリンピックにも出場したモジタバ・カマリがシュートを高確率に決め、チームに勢いをつけたことが最大の要因だった。
2試合ぶりにスターティング5に抜擢された藤本は、こう語る。
「カマリがチームを引っ張っていることはスカウト済みで、練習でも彼をどう止めるかをやってきた。ただ、序盤は自分のサイドでミスマッチでのショットを気持ちよく決めさせたことで彼を乗せてしまいました」
試合開始5分過ぎには、13-6とハンブルクのリードはダブルスコアにまで広がった。
これ以上の差はリスクが大きいと踏んだのだろう。ランディルは早くもメンバーを3人入れ替え、ハーフコートのディフェンスからプレスディフェンスに切り換えた。このプレス要因の一人となったのが、香西だ。
「日本代表の時と同じく、まずは試合のテンポを変えようと思ってコートに入りました。すぐには逆転できなくても、40分間の試合の中で徐々に相手を疲弊させていこうと思っていた」と香西。その言葉通り、まるで日本代表のような切り替えの速いバスケットが展開された。
さらに香西はオフェンスでも大きく貢献した。交代した直後、この日最初のシュートとなった3Pシュートを決めると、約4分間でチーム最多の9得点をたたき出し、チームの勢いを加速させた。
献身的なプレーから生まれた藤本の得点シーン
1Qの後半で流れを引き寄せたランディルは、香西のレイアップシュートから始まった2Qの中盤に逆転に成功。プレスディフェンスが機能し、1Qではフィールドゴール成功率62%で11得点を挙げたカマリを無得点と完璧に封じたことが大きかった。また、終盤には相手に得点を許すことなく立て続けにシュートを決め、41-35とリードして試合を折り返した。
3Qの序盤も香西擁するプレスのラインナップで主導権を握ったランディルは、その後もベンチメンバーを全員出場させながらも、最大15点にまで差を広げた。
そして4Q、最初の得点は3Qまで無得点だった藤本のシュートだった。それはチームメイトが外したシュートを藤本がリバウンドボールを取り、セカンドチャンスで入れた得点。チームで最も長身の彼がインサイドにアタックすることで、チームメイトのアウトサイドからのシュートチャンスを作り出すという献身的なプレーを続けていたからこそ生まれたものだった。
結局、ランディルは1Qの後半にハーフコートのディフェンスからプレスディフェンスに切り換えたことによってつかんだ流れを、その後一度も相手に引き渡すことはなかった。最終的には18点差にまでリードを広げて快勝。開幕4連勝を飾った。
写真・ 文/斎藤寿子
東京2020パラリンピック速報
車いすバスケ男子を初の4強に導いた、香西宏昭の真骨頂。