ゴールボール男女日本代表「オリオンJAPAN」が大舞台に挑む。12月7日から16日の10日間にわたってポルトガル・マトジーニョスで開かれる「2022 IBSAゴールボール世界選手権だ。4年に1度の世界一決定戦であるとともに、開幕まで2年を切ったパリ2024パラリンピックの出場枠もかかる重要な大会だ。
出場できるのは東京パラのメダリストや大陸別選手権上位国など男女各16チーム。それぞれ2グループに分かれて総当たり戦を行い、上位4チームずつが決勝トーナメントに進出し、最終順位を競う。男女各10カ国が出場した東京パラよりも長丁場の戦いとなる。
また、パリ大会出場枠は東京パラから2つ減の8枠となり、この世界選手権でパリへの切符をつかめるのは男女それぞれ上位2カ国のみ。コンディション調整も含め、厳しい戦いになること必至だが、この大会に向けてオリオンJAPANは男女とも、個人トレーニングや長期合宿でのチーム練習で強化を重ねてきた。その成果を糧に、貴重な切符をつかみ取るつもりだ。
大会開幕を前に11月28日にはリモート記者会見が開かれ、男女オリオンJAPANが大会への意気込みなどを語った。市川喬一総監督は、「男女とも東京パラで見えた課題克服に取り組んだ1年間の結果がどう出るか、私自身も楽しみ。よい報告ができるよう、頑張りたい」と力を込めた。
日本女子は東京パラの銅メダル獲得により、大陸選手権への参加免除での世界選手権出場となった。世界選手権には2014年、18年と過去2回出場しているが、最高成績は4位。初優勝とともにパリへの出場権獲得を狙う。
現在、世界ランキング4位の日本は予選グループBに入り、アメリカ(1)、ポルトガル(53)、ブラジル(6)、イスラエル(7)、オーストラリア(8)、イギリス(11)、エジプト(27)の順に対戦する(カッコ内は世界ランキング)。
市川総監督は「初戦のアメリカ戦がカギ」と話す。東京パラ銀メダリストで、世界ランキングも1位と「格上」だが、過去の戦績から相性は悪くない。「ここで勝利できれば、予選グループの1位通過も見えてくる」
日本代表に選ばれたのは国際大会の経験も豊富な6人だ。リオパラから頼れるリーダーの天摩由貴キャプテンは「守備が落ち着かないとき、自分が入って安定させたい」と話し、パラ3大会出場で回転投げが武器のエース欠端瑛子は「移動攻撃などで相手の不意を衝き、チームに貢献したい」。守備の要で攻撃の起点でもある高橋利恵子は「チームのつながりを強化してきた」と自信を口にし、得意のグラウンダーで東京パラ得点ランキング2位(25得点)と活躍した若きエースの萩原紀佳は「1点でも多く得点をとって勝ちに貢献したい」と意気込む。
この東京パラ代表4人に新たに2名が加わった。パラ4大会出場の大ベテラン、小宮正江は「コート外でもよく話し、チーム力で出場権を獲得したい」と一丸を強調。リオパラ代表だった安室早姫は3ポジションをこなすマルチプレーヤーとして、「その時々で与えられた役割をしっかり果たしたい」と闘志を燃やす。
市川総監督はこの1年、「東京パラ以上」を目指し、「各選手がやるべきことを再確認するとともに、選手やスタッフ間の横のつながり(連係)を強化してきた」と話す。視覚を完全に閉じて行うゴールボールではコート上の選手同士のコミュニケーションはもちろん、ベンチスタッフからの指示や事前の対戦相手分析といった情報共有が重要だからだ。「チーム一丸の総合力強化」でさらなる高みを見据えている。
チームは今年に入って欧州遠征などで実戦力を磨き、5月の国際大会では金メダルに輝くなど自信もつけてきた。天摩キャプテンは、「東京パラ銅メダルの悔しさから、どうしたらもっと強くなれるか考えながら1年間過ごした。一人ひとりが自分の役割を果たし、今ある力をすべて出せれば、(パリ)出場権獲得という目標に到達できると思う」と力強く語った。
昨夏、開催国枠で東京パラに初出場し、5位入賞と躍進した日本男子はさらに、今年7月のアジア・パシフィック選手権で初優勝の快挙を達成。アジア王者として世界選手権に出場する。最高成績は初出場だった2018年大会での9位だが、今回は2位以内に食い込んでパリパラ自力出場に狙いを定めている。
市川総監督は、「東京パラは成長の途中段階だった」と言い、この1年は個々の基礎体力や技術力の向上を図るとともに、「考えてゴールボールを行う知略的な部分も強化してきた」と、チームの進化に自信を見せる。
代表6人中5人は東京パラ代表でもあった。不動のセンター、川島悠太キャプテンは「最大10試合を一人で戦い抜く」覚悟で、瞬発力や体幹部を強化した。先発起用の多いサウスポー、金子和也は「短時間で得点し、無失点で抑えてバトンを渡したい」と話し、そのバトンを受けることの多い宮食行次は高低差のあるバウンドボールを武器に「勝負どころでしっかりと自分のプレーをし、苦しい戦いも勝ち切りたい」と意気込む。佐野優人は「得意とする守備」で、山口凌河は「持ち味の攻撃力」で、「チームに流れをつけたい」と活躍を誓う。
この個性豊かな若き5人を、どっしりと支えるのが競技歴20年以上の伊藤雅敏だ。もともと攻撃力に定評ある大ベテランだが、代表に復帰したこの1年、「攻撃の引き出しを増やしてきた」と自信を見せる。「東京パラは攻撃力が足りなかった」と振り返る市川総監督も期待を寄せる。
世界ランキング8位の日本は予選グループCに入り、開幕試合(現地7日)でホスト国ポルトガル(39)と対戦後、東京パラ金のブラジル(1)、アルジェリア(12)、ベルギー(7)、トルコ(6)、ドイツ(5)、カナダ(14)の順に戦う。
市川総監督は、予選中盤(11日~13日)にある世界ランキング上位国、ベルギー(7)、トルコ(6)、ドイツ(5)との3連戦を「実力拮抗なので、最終順位に影響大」と警戒する。川嶋キャプテンは初戦のポルトガル戦も、「マストで勝たなければいけない試合。勝ち方にもこだわりたい」と重視。勢いに乗れるようなプレーを目指す。
準々決勝で敗れた東京パラの反省を踏まえ、川嶋キャプテンは、「予選を通過し、準々決勝から本当の戦いが始まる。決勝まで最大10試合と大会期間も長いので、チームでどれだけ助け合えるかがカギ。皆で話して戦略を立て、決勝まで行ってパリへの切符をつかみたい」と力強く語った。
パリ大会出場の道は他に、来年以降に開催予定の大陸別選手権(日本はアジア・パシフィック選手権)での優勝なども残されている。だが、この世界選手権で獲得できれば、パリ本番に向けて約2年間の強化期間が得られる。目標達成に向け、市川総監督は男女とも、「予選をどの順位で決勝トーナメントに上がれるかが重要」と見すえ、一戦ずつ勝利を積み重ねるつもりだ。
なお、世界選手権の模様はYoutubeでライブ配信される。男女ともに、12月8日(日本時間)に第1戦に臨む。進化しつづけるオリオンJAPANのパリへの挑戦に注目だ。
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2022 IBSAゴールボール世界選手権大会公式サイト
https://www.goalball2022.pt/
ライブ配信チャンネル
https://www.youtube.com/@KuriakosTV/streams
<オリオンJAPAN試合予定> (時刻表示は日本時間)
女子予選グループB
12月8日(木) 23:50: vsアメリカ
12月9日(金) 18:00: vsポルトガル
12月10日(土) 23:50: vsブラジル
12月11日(日) 21:30: vsイスラエル
12月13日(火) 2:10: vsオーストラリア
12月13日(火) 21:30: vsイギリス
12月14日(水) 22:40: vsエジプト
男子予選グループC
12月8日(木) 4:00: vsポルトガル ※大会開幕戦
12月10日(土) 1:00: vsブラジル
12月10日(土) 20:20: vsアルジェリア
12月11日(日) 23:50: vsベルギー
12月12日(月) 18:00: vsトルコ
12月14日(水) 1:00: vsドイツ
12月14日(水) 19:10: vsカナダ
男女決勝トーナメント *各予選グループで4位以内に入った場合
12月15日(木): 準々決勝/準決勝
12月16日(金): 3位決定戦/決勝
写真・ 文/星野恭子