東京パラリンピックに向けて様々な競技やアスリートの魅力に迫るメンズノンノの連載。今回は2016年のリオパラリンピックでも活躍したパラ陸上界きっての美女スプリンターが登場! その秘めたる思いとは!?
「2019年は世界選手権もありますし、いよいよ2020年に向けて落とせない試合が続きます。 1戦1戦しっかり結果を残すためにも、この冬季練習はこれまで以上に厳しいトレーニングを乗り越えていかなければ」
そう今の思いを語ってくれたのはリオパラリンピック女子400m銅メダリストの重本沙絵。なんと彼女、陸上を始めたのはその半年前の2015年。 当初、慣れ親しんだハンドボールからの転向は本意ではなかったとか。
「それまでパラリンピックは私の人生設計には入っていませんでした。 生まれつき腕に障がいはありましたけれど、ずっと健常者と同じフィールドでハンドボールをプレーしてきましたし、十分にやれている自負もあったので、むしろ最初にパラ陸上を勧められたときはショックでした」
そこから約4年で日本のパラ陸上界を代表するスプリンターに飛躍。 今の自分があるのは、リオで大きく価値観を変えられたからという。
「陸上を始めて間もなかったこともあり、リオは勢いだけで出場した大会でした。ただそこで、ほかの選手たちが 4年間に自分のすべてをかけてきた情熱をじかに感じて、本当の意味でのスイッチが入ったんです」
リオではみごと銅メダルに輝いたものの優勝選手とのタイム差は歴然だった。しかし、世界トップとの差は着実に縮まっていると確信する。
「パラ陸上で勝負する決心ができたのも、表彰台のいちばん高いところで自国の国歌を聴く選手を見て『私もああいうふうになりたい』と思えたから。東京では私がそのすてきな空間に立ち、皆さんと喜びをシェアしたい。でもそれだけが目標ではなくて、大会を通して世界に日本のよさも発信したいですし、パラリンピック後も、いちパラアスリートとしてもっと人それぞれの違いを認め合いながら暮らせる社会づくりの力になりたいです。今や走ることは私にとって『終わらない挑戦』になりました」
【プロフィール】
重本沙絵さん
しげもと・さえ●1994年10月28日生まれ、北海道出身。生まれながらの先天性前腕欠損ながら、ハンドボールで高校時代にインターハイべスト8入りや国体出場などの実績を残す。その後日本体育大学2年時にパラリンピックを視野に入れ陸上に転向。翌年の2016リオデジャネイロパラリンピックに出場し、陸上女子400m(切断などのT47クラス)で銅メダルを獲得。旧姓は辻。 2018年1月に結婚し、現在は重本姓で競技を続ける。
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Photos, Composition & Text:Kai Tokuhara