サントリーが応援している車いすバスケットボール日本代表の強化指定選手である、20歳の鳥海連志選手、19歳の赤石竜我選手、そして23歳の古澤拓也選手(写真左から)。近い将来、車いすバスケットボール日本代表を背負って立つ存在として期待されている若きホープ3人にフォーカス。U23世代の国際大会である「北九州チャンピンオンズカップ」と、直後にタイのパタヤで開催される「2019 アジアオセアニアチャンピオンシップ」にともに出場する同世代の彼らに、車いすバスケットボールにかける思い思いのチャレンジスピリットを語ってもらった。
── いよいよ来年の大舞台まで1年を切りましたが、まずは皆さんが現段階で抱いている意気込みをお聞かせください。
鳥海 2016年のリオ大会に17歳で出場させてもらったときは、周りの先輩たちにコート内外で多くの部分を支えられながらプレーしていましたけれど、そこから強化指定選手として新チームで活動していく中で、自分が軸になっていくんだという意識を強く持ちながらメンタル、フィジカル両面を磨いてきました。その過程で昨年の世界選手権やアジパラ選手権で自分たちが描いたビジョンに届かず、もどかしさや悔しさを味わいましたが、来年の大舞台で金メダルを獲るという目標に変わりはありません。
古澤 強化指定に選ばれた当初は、主力を務めるU23と若手のカテゴリーに入るシニアで同時にプレーする中でギャップを感じる部分はありましたが、ここ1年くらいは両方でコート内での自分の仕事をより明確化できている実感があります。自分のパフォーマンスとチームとしての結果の両方を考えてプレーしながら、ひとつひとつ着実に階段を登ることができている実感はあります。だから本大会のメンバーになんとしても選ばれるように、短い期間ではありますがここからもう数段階成長したいですね。
赤石 僕は正直、こうして19歳で自分が出場できる可能性のある位置にいられるとは思っていなかったので、大会まで1年を切っている実感がまだ湧いていない部分はあるのですが、世界の大舞台で活躍することは幼い頃からの目標でしたので可能性がある限りは全力で出場をめざしたいです。でも、ただ選ばれるだけでは意味がないので。出るからにはメダルに貢献できるプレーをしたいと強く思っています。
── 皆さんは車いすバスケットボール日本代表の将来を担う存在として期待され、シニアとU23両方で強化指定選手として活動されています。11月22日からU23で「北九州チャンピオンズカップ」、同29日からはシニアで「2019 アジアオセアニアチャンピオンシップ」と重要な国際大会が続きます。来年の本大会に向けて、それらをどのようなチャレンジの場にしたいですか?
鳥海 まず北九州チャンピオンズカップは、僕よりも若い世代の選手たちがどんどん良いプレーをしてアピールをしている中で、自分がチームを引っ張るというよりも、2021年のU23世界選手権も見据えながら彼らが主体となってプレーできるようにしっかりとサポートする存在でありたいと考えています。また、シニアの代表として出場するアジアオセアニアチャンピオンシップでは、来年に向けてよりチームを洗練させていくために何よりも優勝することを第一優先としながら、どんな環境であってもしっかりと勝ち切ることができるチームを理想に描きながらプレーできればと思います。
古澤 僕としてはこの北九州チャンピオンズカップがU23世代として最後の国際大会でもあり、また以前に世界選手権のメダルをかけた試合で敗れたオーストラリアにもう1度チャレンジできるチャンスでもあるので、優勝で有終の美を飾って「U23では全部やりきったぞ!」と思いたいです。結果にこだわっているのはアジアオセニアニアチャンピオンシップも同じ。来年の本大会の前に行われる最も大きな大会ということで、チームとしても個人としても良い弾みがつくような試合をしなければいけないと思っています。自分のストロングポイントである3ポイントシュートだけではなく、ディフェンス、ゲームメイクとあらゆる部分でチームに貢献して優勝という結果を出したいですね。
赤石 北九州では、去年の3位というのが自分としてはかなり不甲斐ない結果でしたので、そこはやっぱりリベンジの思いが強いというか、今年は必ず優勝して周囲の期待に応えたいです。その後のアジアオセアニアチャンピオンシップに関しては、古澤さんも言うようにまさにここが来年を想定して戦えるラストチャンスの大会だと思うので、本大会の最終リハーサルというか、「ここで負けたら自分は出られない」というくらいの気持ちで臨みたいです。「良い試合だった」で終わらせるのではなく、優勝することで自分たちの自信に繋げつつ、他国にも日本代表の強さを印象付けたいなと思っています。とにかく、自分の持ち味であるディフェンス力を存分に発揮できるように頑張ります。
── 近年の日本代表は、藤本怜央選手や香西宏昭選手ら世界的な実力を持つベテラン選手と有望な若手選手たちがバランスよく噛み合っている印象です。そんな中で、世代の近い皆さんはお互いどのような刺激を受けながらプレーしていますか?
鳥海 以前はU23世代からシニアの強化合宿に呼ばれても「先輩たちのプレーを見て学びなさい」というような雰囲気がありましたが、今ではそういう世代感のギャップが少なく、僕ら若手もベテラン選手たちも1人1人が12人の枠を狙いながらやっていますし、それがチーム内のライバル意識や競争力アップに繋がっています。そういう意味では若手とベテランが融合した理想的なチームに近づいている感覚はありますが、一方で日本の車いすバスケシーンをより底上げするためにも「若手VSベテラン」という構図も僕は描きたくて、古澤選手や赤石選手とはそういう意識をしっかり共有できていると思っています。
古澤 まずクラブチームでも一緒にプレーしている鳥海選手は、僕自身が強化指定選手になる上で最も必要だったメンタルの強さを植えつけてくれた存在です。ただ、年齢も距離も近いチームメイトだからこそ「負けたくない」という気持ちは強いです。そして赤石選手からはすごく勢いを感じます。彼の熱い姿勢からも学ぶべきことは多いですね。3人とも個性はそれぞれですが、U23だけではなくシニアの世代でも日本代表の中心選手として活躍したいという思いは共通しているので、それぞれが良い刺激を与え合いながら成長していきたいです。
赤石 2選手とも年齢が近く、また鳥海選手が同じ持ち点(2.5)、古澤選手も近い持ち点(3.0)ということもあって、以前は「絶対に負けないぞ」という気持ちばかりが強かった時期もあったのですが、今はU23でもシニアでも一緒に試合に出ることも多いので、お互いの“らしさ”を引き出せるようなプレーを心がけています。もちろんライバルであることに変わりはありませんが、来年の大舞台をめざして仲間としてチームを強くしていきたいと思っています。
PROFILE
ちょうかい れんし●車いすバスケットボール日本代表候補
1999年2月2日生まれ、長崎県出身。両脚の脛骨欠損、両手指の欠損で生まれ、3歳の頃に両下肢を切断。中学1年時に車いすバスケと出会い、地元の佐世保WBCで本格的にスタート。そして15歳で初めて強化合宿に招集されると、2016年のリオ大会に車いすバスケ最年少で出場。以降もU23とシニアの両方で中心選手として活躍。クラブチームはパラ神奈川SCに所属。
ふるさわ たくや●車いすバスケットボール日本代表候補
1996年5月8日生まれ、神奈川県出身。二分脊椎症という先天性疾患の影響で小学6年の頃から車いすに。中学1年時に車いすバスケを始める。高校2年でU23日本代表に選出され、2017年6月に開催されたU23世界選手権で主将としてベスト4進出に貢献。現在は、同じくパラ神奈川SCに所属する鳥海選手とともにシニアでも強化指定選手の常連になっている。
あかいし りゅうが●車いすバスケットボール日本代表候補
2000年9月11日生まれ、埼玉県出身。5歳の頃にホプキンス症候群という難病を患い、脊髄損傷により車いす生活になる。中学1年時に現在所属している埼玉ライオンズに加入して本格的に車いすバスケをスタート。2017年にU23世界選手権で国際大会デビューを果たすと、2018年のアジアパラ選手権でシニアの代表にも初招集。以来、両世代で稀有な存在感を発揮。
SUNTORY CHALLENGED SPORTS PROJECT
サントリー チャレンジド・スポーツ プロジェクト
www.suntory.co.jp/culture-sports/challengedsports/
サントリーグループの東日本大震災復興支援活動「サントリー東北サンさんプロジェクト」の一環として、岩手県・宮城県・福島県でチャレンジド・スポーツ(障がい者スポーツ)アスリートたちを応援するために、2014年より、本プロジェクトの活動を開始。2015年より、車いすバスケットボール日本代表の活動のサポートも行っています。
Photos:Go Tanabe Composition&Text:Kai Tokuhara