新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、東京パラリンピックで最も金メダルを期待されている陸上・車いすの佐藤友祈が、”プロ転向”というひとつの大きな決断をした。400mと1500m(車いすT52クラス)2種目で「世界記録と金メダル獲得」という目標に向かって不退転の覚悟で挑む。
2016年のリオパラリンピックは2種目で銀メダル。その後の4年間は金メダルだけを目指してきた。2018年には400mと1500m、2019年にはパラリンピック未採用の800mと5000mで世界記録を更新。2017年と2019年の世界選手権では、持ち前の中盤からの加速力でリオパラリンピックの金メダリストをまくり差し、圧巻の優勝を飾っている。
「コロナ禍でも、(東京パラリンピックで)世界記録を更新して2冠を獲るという気持ちに変わりはありません。2020年は国際大会こそ中止が相次ぎ、出場できませんでしたが、2021年に延期された東京パラリンピックを見据えて9月の日本パラ陸上競技選手権にピークを持っていく調整もでき、モチベーションを保つことができています」
そんな中、1年延期された東京パラリンピック開催を待たず、佐藤は1月、5年半務めた企業を退社。同時に実業団チームを離れた。
競技への理解を得られる職場があり、パラリンピアンの指導者もいて、トレーニングジムもある。パラスポーツでは先進的ともいえる充実した練習環境から飛び出したのだ。
「所属していたチームで、パラリンピックに初めて出場し、東京パラリンピックの内定も得たので、ここで金メダルを獲り、それから次のステップに進もうと考えていました。しかし、コロナで大会は延期になってしまったけど、独立の時期は延期せず、前に進むことにしました」
瀬長あすか●取材・文 text by Senaga Asuka 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo