思い返せば、テレビでロンドンパラリンピックを見て競技をはじめた佐藤は、実家のある静岡から競技環境を求めて現在の拠点である岡山に移住。世界一になるためと、変化を恐れずに行動してきた。そして、思いのままに突き進んだ道の先にはいつも光が待っていた。
「いつだって、後悔はしたくないと思って道を選んでいます」
そして1月末、文字フォントの「モリサワ」とプロ契約を締結。2月1日からプロ選手としてのキャリアをスタートさせ、パラリンピックの金メダルを目指すことになった。
「世界一にチャレンジする僕を応援する、と言ってもらえたときは純粋にうれしかったですね。もちろん、これからの不安がないとは言い切れないし、プロになったからには厳しい現実にぶち当たることもあるかもしれない。でも、コロナの感染が拡大して以降、周りのみんなの笑顔が減ってきたなって感じる今だからこそ、プロ選手として活躍してみんなを笑顔にできたらうれしいなと思うんです」
佐藤はこう続ける。
「僕のような中途障がいでも、生まれつきの障がいであっても、子どもたちに“パラリンピックの競技でプロになれる”という選択肢を示せたらいいなと思います。パラスポーツも、車いすテニスや義足の陸上競技はプロ選手の存在が知られてきたかなと思うので、僕がパラリンピックの金メダルを獲ることで、車いすの陸上でもプロを目指せるんだということを知ってもらえたら、またそれがやりがいになる。スポーツじゃなくても全然いいんです。もっと上に行きたいとか、もっと稼ぎたいとか、子どもたちが何かにチャレンジしたいと思ったときに、背中を押すきっかけを与えられるような存在になりたいです」
瀬長あすか●取材・文 text by Senaga Asuka 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo